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日本経済は大丈夫なのか? 新型肺炎の影響で怖いのは…

LIMO / 2020年3月1日 20時20分

日本経済は大丈夫なのか? 新型肺炎の影響で怖いのは…

日本経済は大丈夫なのか? 新型肺炎の影響で怖いのは…

新型肺炎の流行が半年程度で収まるならば、日本経済への打撃は限定的だろう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は考えています。

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新型肺炎の流行がどこまで広がるかわからないので、現時点で影響を語るのはリスクが高いですが、本稿は「中国を含め、海外でも日本でも、今後の流行はそれほど広がらずに抑制され、半年程度で収束する」という前提で考えてみましょう。

目に見える事象に囚われない

中国からの観光客が激減し、「爆買い」が減っていることや観光地がすいていることなどが報道されています。こうした現象は、狭い範囲に集中的に出るために、目に見えやすいので、マスコミも取材しやすく、記事にもしやすいわけです。

しかし、日本経済全体に占めるウエイトはそれほど大きくないので、過度な懸念は不要です。仮に今後、日本が「汚染地域」として海外からの来訪者が一切来なくなったとしても、GDPの1%が失われるだけですから。

「観光立国」という掛け声は結構ですが、日本経済の規模を考えれば、外国人観光客の需要で全体が左右されるようなことにはならないのです。目に見える物の影響は大きく感じられますが、全体像をイメージして見ることが重要ですね。

目に見える現象という意味では、中国製の部品が入手できずに日本国内の工場が稼働中止に追い込まれた、といったニュースも目をひきます。しかし、これも影響は限定的です。

そもそも経済を動かしているのは需要であって、需要さえあれば、供給できなかった分は後日の大増産で供給されるでしょうから、大きな問題にはならないはずです。

怖いのは、中国の新型肺炎自体は数カ月で沈静化するとしても、部品メーカーがその間に倒産してしまって部品が永遠に入手できなくなってしまう可能性です。

それに関しては、メーカーもリスクを認識しているでしょうから、部品メーカーの資金繰りを支援したり、他国の部品メーカーで代替する手配を進めたりしているでしょう。何とかなるはずだ、と信じましょう。

日本人の需要が落ち込むのが怖い

日本人が新型肺炎を恐れて行楽に出かけなくなるとすれば、あるいはイベントの中止などで外出機会が減れば、人数が圧倒的に多いので、そちらの方が外国人観光客の減少よりずっと問題です。行楽需要は、消えるとそのままですから。新型肺炎が収束した後になっても、「先月は行楽に行かなかったから、今月は2回行こう」ということにはなりにくいのです。

したがって、半年間の行楽需要が失われたままとなり、景気は後退するでしょう。しかし、半年後には、行楽需要も戻り、景気も回復するはずです。

その間に行楽地の事業所が倒産したりしないように、政府やメインバンク等々がしっかり支えてくれれば、ということですが。

日本企業の設備投資の落ち込みも、景気を下押しするでしょう。「何が起きるかわからないから、工場の建設はとりあえず1年様子を見てからにしよう」と考える企業が増えると、設備機械等々の売り上げが落ち込み、景気に悪影響を及ぼすわけです。

もっとも、こちらは新型肺炎が収束すれば、様子見していた企業が設備投資を再開するでしょうから、景気への影響は一時的なものにとどまるでしょう。

中国向けの輸出の減少は痛手だが

中国の経済は、すでに相当痛んでいると思われます。人の移動が制限されているわけですから、生産活動も滞っているでしょうし、行楽需要などは壊滅的な減少を見せているはずですから。

したがって、中国向けの輸出は相当減るでしょう。もっとも、半年後に中国経済が正常化すれば、輸出も元に戻るでしょう。サービスの需要に比べて、物の需要は一度落ち込んでも戻りやすいでしょうから(買いたかった日本製品を、買えるようになったから買う等)、減った分の一部は取り戻せるかもしれません。

したがって、中国向けの輸出の減少が日本経済に与える影響も一時的と考えて良さそうです。

リーマン・ショックのような深刻なことにはならないだろう

問題は、中国経済が極めて深刻な打撃を受けた場合です。操業できない企業が次々と倒産し、貸出が回収できない銀行が次々と倒産し、といった場合ですね。その場合でも、リーマン・ショックのようなことにはならないと思います。

リーマン・ショックの時は、米ドルの調達が難しくなって世界中の取引に影響が出ましたが、中国の人民元は世界中で使われているわけではないので、仮に人民元の調達が難しくなっても、影響は中国国内にとどまるでしょう。

そもそも少子高齢化によって日本経済は、従来に比べて景気の変動が小さくなっている、という認識も重要です。高齢者の所得と消費は安定しているので、消費者に占める高齢者の比率が高まると、消費の変動が小さくなるのです。

少子高齢化が労働力不足をもたらし、失業者がすぐに次の仕事をみつけやすくなっているので、「失業者が所得がないので消費を減らす」ということが起きにくいこともあります。詳しくは拙稿『日本の景気があまり変動しない時代がやって来る(https://limo.media/articles/-/10044)』をご参照ください。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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