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家事・育児のお値段は月20万円?「収入が低い方が家事・育児をする」に対するモヤモヤの理由

LIMO / 2020年2月28日 19時15分

家事・育児のお値段は月20万円?「収入が低い方が家事・育児をする」に対するモヤモヤの理由

家事・育児のお値段は月20万円?「収入が低い方が家事・育児をする」に対するモヤモヤの理由

「家事・育児の分担」――これは共働き家庭が増える今、多くの人が避けて通れない問題の1つですよね。

夫婦の就業スタイルや家族構成、さらに得意・不得意などによって分担状況はさまざま。…と分かっていても、「ヨソのお宅はどうなの?」と、つい気になってしまう人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、夫婦の家事・育児の分担に関するデータをのぞいてみましょう。そして、どちらか一方のパートナーだけに負担をかけずに済む工夫や、大忙しの毎日を気持ちよく乗り切る方法などについて考えてみたいと思います。

“見える家事”と”見えない家事”って?

国立社会保障・人口問題研究所の「第6回家庭動向調査(http://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ6/Kohyo/NSFJ6_gaiyo.pdf)」では、妻の1日の平均家事時間は263分(平日)、284分(休日)となっています過去2回の調査と比べ、妻は平日・休日ともに15分減り、夫は平日は31分から37分、休日は59分から66分、とわずかながら増えている、という結果が出ています

また、ゴミ出し、日常の買い物、部屋の掃除、風呂洗い、洗濯、炊事、食後の片づけを週1、2回行った夫の割合は増加傾向にあるとのこと。

しかし同調査では、下のようなタスクを「普段語られることの少ない“見えない家事”」と定義し、妻の分担率について以下のような数字が出ています。

「食材や日用品の在庫の把握」 ・・・88.6%
「食事の献立を考える」 ・・・91.6%
「ごみを分類し、まとめる」・・・76.2%
「家族の予定を調整する」・・・63.1%

このデータ、どう感じましたか?
「トイレットペーパーがない!」とか、「園や学校の行事が重なって当日大慌て」なんてことが頻繁に起き困っちゃいます。みんなが普段通りの生活ができるのは、この「見えない家事」をしてくれる誰かのおかげなのかもしれません。

では、肝心の「分担」をどうするか。これについても考え方は人それぞれですよね。

「年収が低いほうが家事・育児をするべきだ」と考えている人も少なくないと思いますが、この考え方に不公平だと感じている人もいるはず。

家族による家事・育児は、ボランティア活動と同様に「無償労働」に該当します。次では、その「お値段」はどのように求めればよいのか見ていきましょう。

家庭内の“タスク”あれこれをお金に換算してみると…

はじめに、内閣府経済社会総合研究所が2019年に公表した「無償労働の貨幣評価(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/190617_kajikatsudoutou.pdf)」をもとに、無償労働の時給を決めるための2通りの方法についてご紹介します。

1つ目は、家計が無償労働を行うことによる逸失利益(市場に労働を提供することを見合わせたことによって失う賃金)で評価する方法です。これを「機会費用法」(OC法/Opportunity Cost method)といいます。

2つ目は、家計が行う無償労働を、市場で類似サービスの生産に従事している専門職種の賃金で評価する「代替費用法スペシャリストアプローチ」(RC-S法/Replacement Cost method,Specialist approach)です。

家事をしたことで出る「損失」とは?

「機会費用法」による無償労働の賃金率(時間当たり賃金評価)は、すべての年代で女性よりも男性のほうが高いことがわかります。女性の賃金率は1,000~1,600円前後ですが、男性の賃金率は1,500円を超えている年代が多く、働き盛りの40歳代・50歳代では2,000円以上になっています

※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の産業計、男女別・年齢階層別の一人当たり時間給(月間所定内給与額÷月間所定内実労働時間)を使用して求めたものです。

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拡大する(/mwimgs/1/e/-/img_1e3008eed2b80aa99b0f378593dc197a12627.png)

「OC法」による賃金率(内閣府の資料をもとに編集部作成)

これは、男性が家事・育児を担当するほうが、より多く家計に損失が発生することを意味します。

「家事・育児」プロに頼むと時給おいくら?

つぎに、「代替費用法スペシャリストアプローチ」によって求めた主な無償労働の代替費用をご紹介します。

※厚生労働省「賃金構造基本統計調査」の職種別一人当たりの活動ごとの時間給=月間所定内給与額/月間所定内実労働時間を用いています。

(/mwimgs/6/9/-/img_69b5c62df15080e22b51926292e8a4da12535.png)

拡大する(/mwimgs/6/9/-/img_69b5c62df15080e22b51926292e8a4da12535.png)

「RC-S法」による主な無償労働の代替費用(内閣府の資料をもとに編集部作成)

このうち、最も代替費用が高いのが、育児の1,277円で、最も低いのが掃除の1,062円です。6項目を平均すると1,180円となり、平日に無償労働に5時間従事すると1日当たり5,900円、休日に8時間従事すると1日当たり9,440円程度になる計算です。1カ月間平日21日、休日9日で換算すると、20万8,860円にも上ります

ズバリ!女性が考える「家事・育児の時給」

それでは、ソニー生命保険㈱の「女性の活躍に関する意識調査2019(https://www.sonylife.co.jp/company/news/2019/nr_190424.html)」をもとに、女性自身が考える「家事育児の時給」をご紹介します。本調査で時給が最も高くなったのは、「未就学児の育児・世話」の1,488円で、2位は「小学生以上の子どもの育児・世話」の1,230円でした3位は「PTA活動」の1,098円です

未就学児の育児・世話の時給が、内閣府公表の代替費用よりもかなり高いのは大きな特徴です。女性が実感している負担はかなり重いということなのかもしれません。

「すべてを自分でやらなくてはならない」と考え思いつめてしまう前に、家事・育児のアウトソーシングを検討してみるのも手です。

ベビーシッターや家事代行サービスを頼んだり、冷凍食品や出前サービスを使って少しラクしたりすることで、時間にも心にも余裕が生まれるかもしれません。

夫婦格差を生むのは、「収入額」ではなく「価値観」

家族を1つの会社だと考えれば、収入の多いほうが外でお金を稼ぐという考え方は確かに合理的といえます。しかし本来、「収入」と「人としての価値」は別の問題だといえるでしょう。

ところが、これを結びつけて考える人が珍しくありません。そのような、「年収の高いほうが格上だ」という価値観が、夫婦格差を生み出しているのではないでしょうか。

人の生き方は十人十色。夫婦のあり方もそれぞれです。

スキルがあって働きたいけれど、介護や育児のために理想の働き方ができない人もいれば、仕事をするより家事や育児のほうが得意なのにもかかわらず、外で働かざるを得ない人もいるでしょう。

どんな働き方、生き方を選んだとしても、当然ながら夫婦は平等なのです。しかし、社会的にも「家事・育児をメインに行うのは女性」という考えはなくなっていないのが現状です。

できる人が できるときに できることを

「年収に関係なく、手が空いている人が家事・育児をすればよい」と考えれば差別意識は生まれません。夫婦がどちらも忙しいのなら、家事育児のアウトソーシングを積極的に利用することも検討してみましょう。

円満な夫婦関係を長く維持するには、お互いを尊重することや思いやりが不可欠です。年収の多い少ないで担当を決めるのではなく、「適材適所」で動けばよいのではないでしょうか。

そのためにも、パートナーとは日頃から育児・家事の困りごとについてオープンに相談しあえる関係でありたいものですね。

「できる人が、できるときに、できることを」――お互いにいたわりの気持ちを忘れず、仕事や子育てを乗り切りたいものです。

【参考】
「第6回家庭動向調査(http://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ6/Kohyo/NSFJ6_gaiyo.pdf)」国立社会保障・人口問題研究所
「無償労働の貨幣評価(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/190617_kajikatsudoutou.pdf)」内閣府経済社会総合研究所 国民経済計算部地域・特定勘定課
「女性の活躍に関する意識調査2019(https://www.sonylife.co.jp/company/news/2019/nr_190424.html)」ソニー生命保険
「家事活動等の評価及び関連翻訳の公表について(2019年6月17日 訂正)(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/kajikatsudou_181213.html)」経済社会総合研究所国民経済計算部

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