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東京五輪の開催中止や延期は本当にあり得るのか? IOC委員発言で物議

LIMO / 2020年2月29日 11時20分

東京五輪の開催中止や延期は本当にあり得るのか? IOC委員発言で物議

東京五輪の開催中止や延期は本当にあり得るのか? IOC委員発言で物議

COVID-19の影響拡大で現実味を帯び始めた東京五輪の開催中止や延期

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響の拡大が全世界で続いており、一向に収束の兆しが見えません。さらに、国内では2月26日に「今後2週間はイベントの中止や延期、規模縮小を政府として要請する」という政府指針が公表されたことを受け、スポーツ大会やコンサートのみならず、卒業式や入学式などにも中止・延期が及んでいます。

中でも、多くの観客動員が見込めるプロスポーツの試合は軒並み延期され、東京マラソンを始めとして一般参加者の中止に踏み切った大会も数多くあります。

そして現在、徐々に現実味を帯びてきたと言われているのが、2020夏季オリンピック・パラリンピック東京大会(以下、東京五輪)の開催延期や中止です。開幕まで既に半年を切っているこの時期に、本当に開催中止や延期があり得るのでしょうか?

過去に開催中止となった夏季五輪は3回、代替開催は冬季五輪で1回のみ

まず、過去の事例を振り返りましょう。夏季五輪が開催中止になったのは以下の3回です。

1916年ベルリン大会(ドイツ) 理由:第1次世界大戦

1940年ヘルシンキ大会(フィンランド) 理由:第2次世界大戦

1944年ロンドン大会(英国) 理由:第2次世界大戦

これを見て“あれ?1940年に中止になったのは東京五輪のはずだが…”と思った人が多いかもしれません。確かに、1940年は東京五輪の開催が決定していましたが、当時の日中戦争が激化したことを受け、1937年に(自ら)開催を返上しました。その後、ヘルシンキが代替開催地に決定したのです。

結果的にはヘルシンキ大会も中止になりましたが、正式な記録上は「ヘルシンキ大会の中止」となるのです。

そして、これを見ても分かる通り、120年を超える五輪の歴史上、世界大戦以外で開催が中止になったことは一度もありません。また、一度決定した開催地が何らかの理由で開催を返上し、代替地での開催に至ったこともないのです。

なお、冬季五輪に関しては1度だけ、1976年の開催地に決定したデンバー(米国)が開催を返上し、インスブルック(オーストリア)での代替開催となったことがあります。ただ、デンバーが開催を返上したのは1972年10月だったため、代替地開催には時間的余裕がありました(インスブルックに決定したのは1973年2月)。

東京五輪の主催者はIOC、開催に関する全ての権限を有する

ここで、最も重要なことを再確認します。それは、東京五輪の主催者はIOC(国際オリンピック委員会)であるということです。東京(日本)は、あくまでIOCから開催を委託されている形に過ぎません。

もっとハッキリ言うと、東京五輪の開催中止や延期に関する全ての権限はIOCにあるのです。これは、昨年秋にマラソン競技の開催地が有無を言わさず札幌に変更されたことで、既に多くの人に認識されていると考えられます。IOCが中止だと言えば中止、延期だと言えば延期になります。

東京がIOCの承認なしに行える権利は、83年前(1937年)のような開催権の返上のみです。しかし、この時期に開催権返上は到底あり得ない選択です。

こうした過去の事例と、IOCが全権限を有した主催者であるという現実を踏まえ、開催中止や延期の可能性を考えてみましょう。

今から代替地開催への変更は不可能に近い

まず、代替地での開催は可能でしょうか?

最近、ロンドン市長選の候補者が代替開催の実現を公言したというニュースが流れました。ただ、この候補者の本意は別として、開幕まで半年を切ったこの時期に代替開催を選択するのは不可能と言っていいでしょう。五輪の開催には途方もない準備期間が必要です。ロンドンのように開催経験があってインフラが整っているとしても、あまりに遅すぎます。

また、ロンドンに限らず、過去の開催地の競技施設の一部は、廃棄や使用目的変更等により既に使用できなくなっているはずです。いずれにせよ、代替地開催の可能性は極めて低いと断言できます。

簡単そうに見えて簡単でない一定期間の開催延期

では、一定期間の開催延期はどうでしょうか?

夏季実施競技ということを勘案すれば、半年延期(例えば、2021年1~2月に実施など)は有り得ません。考え得るのは1年延期ですが、これは不可能とは言いませんが、非常に高いハードルとなります。

大きな理由の1つとして、2021年は既にいくつかの大きなスポーツイベントが予定されていることが挙げられます。具体的には、世界陸上、世界水泳、ハンドボール世界選手権などですが、各競技団体(世界陸連など)が五輪のために大会開催を見送ることは考え難いのが実情です。

また、1年延期となれば、参加各国の代表選手選考のやり直しなども含め、全ての関連スケジュールも見直す必要があります。気が遠くなるような作業になることは間違いありません。一定期間の開催延期は、簡単そうに見えて全く簡単ではないのです。

さらに、万が一、1年延期になった場合、次の開催(2024年パリ大会)を3年後に開催するのか、それとも、4年後にするのかという問題も残ります。

ただ、1カ月程度の開催先送りならば、調整する範囲も限定的となるため、ある程度は現実的だと思われます。

“商業的成功”が最大目標のIOCに開催中止の選択肢はない?

それでは、日本人が一番考えたくない開催中止の可能性はどうでしょうか?

2月26日にあるIOC委員が東京大会中止の可能性に言及したと報道され物議を醸しました。それに対し橋本聖子五輪相は、IOCから公式見解ではないとの答えを得ていると国会で説明しています。

ただ、開催中止も簡単ではないと言えましょう。というのは、東京側が開催したいことは言うに及ばずですが、IOC側にも予定通り開催したい事情があるからです。それは放映権を始めとするスポンサー収入です。

IOCは巨額のスポンサー収入に頼って五輪を運営していますが、仮に中止となれば、大幅な収入減は避けられません。少なくとも、莫大な放映権収入がなくなります。また、次回以降にも大きな影響を残すと考えられます。

“まさか”と思うかもしれませんが、IOCの最大の目的は五輪の“商業的”成功なのです。また、世界大戦以外のいかなる理由でも、開催中止となればIOCの面子丸潰れになります。世界を代表する官僚組織の1つであるIOCが、そう簡単に中止を決断するとは思えません。

最近の五輪は開催危機と背中合わせ、ジカ熱騒動でも開催したリオ五輪

思い返すと、最近の五輪は常に開催危機と背中合わせでした。2008年の北京五輪は中国政府の人権問題(チベット抑圧等)、2012年のロンドン五輪は欧州債務危機の直撃、2016年のリオ五輪は深刻なジカ熱問題で、各大会直前まで開催延期や中止が議論されています。

また、冬季五輪でも2014年のソチ五輪はロシアのクリミア併合問題、2018年のピョンチャン五輪では朝鮮半島情勢緊迫化などで、五輪参加を見合わせるとする国が出たことも記憶に新しいところです(注:結果的にほとんどの国が参加)。

もちろん、今回のCOVID-19問題と単純な比較はできませんが、あの2016年のジカ熱騒動でも開催したのですから、今から開催中止と決めつけるのは時期尚早ではないかと筆者は考えます。

このままだと“東京国体”に近い大会になる懸念

しかしながら、足元のCOVID-19の影響拡大を勘案すると、予定通りの開催に対して楽観的になれないことは確かです。

これから開催中止や延期を強く唱える人も大勢現れるでしょう。もし、このままCOVID-19の不安が払拭されないまま開催すると、参加ボイコットに踏み切る国も出てくるでしょうし、欧米を中心に自ら参加を辞退する有力アスリートが続出しても何ら不思議ではありません。

最悪の場合、東京五輪を開催しても参加国が少なく、日本人アスリートが大活躍する“東京国体”に近い大会となるかもしれないのです。“東京国体”にしないためにも、日本政府は正確で迅速な情報公開を行い、IOCと一体となったCOVID-19不安の撲滅に尽力するべきでしょう。残された時間は決して多くありません。

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