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中小企業は新型コロナで非常事態〜資金繰り環境の変化でより深刻に

LIMO / 2020年3月3日 20時0分

中小企業は新型コロナで非常事態〜資金繰り環境の変化でより深刻に

中小企業は新型コロナで非常事態〜資金繰り環境の変化でより深刻に

東京商工リサーチによれば、2月25日、愛知県内の旅館「冨士見荘」が新型肺炎(COVID-19)拡大による顧客減を理由に破産申請することが明らかになりました。新型コロナウイルスの影響では初の経営破綻です。

中国人を中心とするインバウンド観光関連売上に依存する日本の中小・零細規模の旅館、飲食店、サービス業、あるいは中国のメーカー(含む現地日系)へ部品等を輸出している中小製造業者、中国に現地工場・委託工場を持つ中小製造業者などは、当面、厳しい状況に直面することが懸念されます。

今回は、中小・零細企業の資金調達の観点から、そうした危機をいかに乗り切るか、また、中長期的にはどのような戦略が必要かを考えてみたいと思います。

出血が止まらないようなら、とりあえず輸血を

一般に企業倒産の原因は複合的なものですが、多くの場合、最終的には資金ショートが直接的な原因になります。人間の体で例えるなら、いくつかの病状が最終的に心不全を引き起こして死に至る、といったようなことでしょうか。

そのため、倒産という最悪のシナリオを回避するためには、いかに資金手当しておくかが問題です。

現在、経済産業省ウェブサイトの新型コロナウイルス感染症関連(https://www.meti.go.jp/covid-19/index.html)ページに掲載されている通り、資金繰り支援(貸付・保証、予算5,000億円)、補助事業、相談窓口など各種支援策が講じられています。

この貸付とは、具体的には「新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付(国民生活事業)(https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/covid_19.html)」 です。

別枠1,000万円(旅館業を営む方は、別枠3,000万円)の運転資金で、融資期間は7年以内(うち据置期間2年以内)となっています。金利は「基準利率」が適用され、2月3日現在、無担保の場合は2.16〜2.45%、有担保の場合は1.21〜2.10%です。

対象層は以下の通りですので、該当する可能性がある中小・零細企業の方は公庫の窓口で相談されると良いかもしれません。

新型コロナウイルス感染症の発生により、一時的な業況悪化から資金繰りに支障を来しており、次のいずれにも該当する旅館業、飲食店営業及び喫茶店営業を営む方で、(1)最近1ヵ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して10%以上減少しており、かつ、今後も売上高の減少が見込まれること、(2)中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれること。


経営者が高齢化している多くの中小・零細企業にとっては現状以上に借金が増えることは怖いと思います。ただ、新型コロナウイルスの悪影響がいつまで続くか不透明なため、まずは特別融資・保証などを活用しつつ、資金繰り倒産を回避することが重要でしょう。

大きく変わった中小・零細企業の資金調達環境

日本では、2009年12月に「中小企業金融円滑化法」が施行され、国が中小・零細企業に対する資金繰り支援を促してきました。

「延命措置」ではないかと揶揄される面もありましたが、同法施行前、月の平均倒産件数が1,300件程度であった厳しい状況を脱しました。昨年の倒産件数は毎月600〜800件程度になっています(参考:東京商工リサーチ「全国企業倒産状況(https://www.tsr-net.co.jp/news/status/)」)。

この時限立法の法律は2013年に終了しましたが、市中金融機関は国の意向に応える形で、「引き続き、返済猶予に応じて中小・零細企業を倒産させない」という姿勢を維持してきたものと思います。

ところが、中小企業から返済猶予を求められた件数と、それに応じた件数を金融庁へ報告するという金融機関の義務は2019年3月末に消滅し、また、金融円滑化チェックリストを含む「金融検査マニュアル」(金融庁)は2019年12月に廃止されました。

結果として、2020年から、返済猶予に応じるかどうかは金融機関が独自に判断すればよいということになっています。

実は、手厚い日本の中小・零細企業向け金融支援については、その根拠となってきた「中小企業金融円滑化法」の枠組みがすでに消滅しているのです。

最近の低金利政策や地方経済の衰退に伴って地域金融機関の収益力が減退していることを考えると、先行き、中小・零細企業の資金調達環境の悪化が心配されます。

中長期的には、本気で中国依存から脱却を

人口減少、若年労働力の不足、賃金アップなどに加え、昨年来、日本全国で多発した台風などの自然災害、さらに、ここにきて新型コロナウイルスの影響による業績悪化ですから、今、日本の多くの中小・零細企業の事業基盤は揺らいでいます。

インバウンド観光関連の売上減少、中国生産拠点への部品供給の停止などが長引けば、経営基盤の弱い中小・零細企業は立ち行かなくなってしまいます。

今回の新型コロナウイルス感染のような非常事態が起これば、もちろん政府は緊急支援措置を講じてくれますが、それは未来永劫続くわけではありません。「新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付(国民生活事業)」の取扱期間は、2020年2月21日から2020年8月31日までです。

また、もう一度、「新型コロナウイルス感染症にかかる衛生環境激変特別貸付」の対象層を読んでいただくとわかりますが、「中長期的に業況が回復し、発展することが見込まれること」が要件です。

政府による緊急措置といえども、やはり「ローン」ですので、中長期的に乗り越えていく勝算がなければ融資はしてもらえないことになります。

決して容易なことではありませんが、今後、中長期的な観点からは、営業面や製造委託等で中国(あるいは中国人)に過度に依存してきた日本の中小・零細企業は、そうした依存体質からの脱却を本気で進めせざるを得ないでしょう。

昨年までとは異なる次元の深刻さ

なお、「働き方改革」や生産性向上、また政府による新型コロナウイルス感染症対策の基本方針にも唄われている「テレワーク」などは、生きるか死ぬかの土壇場にいる中小・零細企業にとっては、あまり現実的な選択肢ではないかもしれません。

また、中小IT企業などではバーチャルなワークスペースを活用して事務所家賃といった固定費を削減し、究極の固定費最小化を目指すことがあるかもしれません。しかし、多くの普通の中小・零細企業では、人員削減・リストラ、また、中長期的に勝算がなければ廃業、事業売却なども視野に入ってくるでしょう。

皮肉なことに、ちょうど今年から、日本の中小・零細企業向け金融支援の枠組みが変容しており、財政難に苦慮する日本政府からの金融支援も一時的なものになる心配もあります。

今回、突発的に新型コロナウイルスの悪影響に見舞われている中小・零細企業の経営者は、昨年までとは異なる次元の深刻さで危機管理や営業戦略を練り直さなくてはいけないのかもしれません。

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