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クックパッド、上場後初の最終赤字は9億円超。それでも「強気」の理由とは

LIMO / 2020年3月4日 19時45分

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クックパッド、上場後初の最終赤字は9億円超。それでも「強気」の理由とは

2月28日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染抑止対策のため、国内拠点の全従業員および通常在席の業務委託に対して、3月31日まで在宅勤務とすることを発表しました。また特別休暇5日間の付与と、子どもが在宅している状態での勤務を認めることを明らかにしています。

そして3月1日、在宅で過ごす人の増加にともない、プレミアムサービス会員向け機能のひとつ「人気順検索」を無料開放しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応に追われる企業が多い中、いち早く従業員の在宅勤務と有給の付与、顧客へのサービス開放をしたクックパッド。

2月に発表した2019年12月期決算では純損失が9億円以上に達しましたが、「赤字を回避しなければならない、という発想はない」とのこと。この強気ともとれる背景には、何があるのでしょうか。

2019年12月期決算の純損失は9億円超

2019年12月期決算では9億6,800万円の赤字となったクックパッド(2193)ですが、2020年2月10日に行われた決算説明会の質疑応答では「今後の損益の想定を教えてください」という質問に対して、「赤字を回避しなければならない、といった発想はない」「手元にどれだけキャッシュがあり、どれだけ投資ができるか、という点にのみ注目して経営をしています。」と回答をしました。

クックパッドが2020年2月7日に発表した「2019年12月期 決算短信(連結)」によると売上収益は117億5,300万円(前年同期比1.0%減)営業利益3億600万円(同81.4%減)当期損失が13億5,300万円親会社の所有者に帰属する四半期純損失は9億6,800万円となりました。

プレミアム会員数の増加により国内レシピサービスの会員売上収益は73億7,800万円(前年比2億2,200万円増)となったものの、全体のクックパッド訪問者数の減少により国内レシピサービスの広告売上が30億1,600万円(同1億6,000万円減)、さらに通信キャリアとのレベニューシェア型の収益悪化により「その他の売上」が13億5,800万円(同1億4,800万円減)と前年比で減額となりました。

また、人件費の増額により「販売費および一般管理費」が前年比で8億2,000万円増加、繰延税金資産の取り崩しによる法人所得税費用の計上に加え、海外事業ののれん減損損失を7億6,900万円計上したことにより、最終的に赤字決算となってしまったようです。

クックパッド、現在は「投資フェーズ」と位置づけ

クックパッドは2017年から2026年までの10年間を「さらなる大きな成長のための事業基盤創りに再度注力する『投資フェーズ』と位置づけ、「国内レシピサービスにおいてはNo.1のポジションをさらに強固なものにする」ことに加え「 海外レシピサービスについては、進出するそれぞれの国において圧倒的No.1のポジションを実現」「 新たな課題に関するサービスについても、市場を創造し、それぞれの市場においてNo.1の ポジションの獲得を目指す」という目標を掲げています。

特に海外事業においては、2014年より海外展開を本格化しましたが、2019年12月末時点で展開国数は74の国と地域、32言語(日本含む)まで増加しています。さらに海外レシピサイトの掲載レシピ数は352万品(前年比139万品増)と、国内投稿レシピ数を超えており、海外での躍進が顕著にあらわれています。

上場後初の最終赤字 主因は海外事業の不振にともなう損失

海外展開を積極的に進めるクックパッドですが、今回の決算ではロシア、ギリシャ、ハンガリー3カ国の連結子会社ののれん全額(7億6,000万円)の費用処理を行いました。クックパッドは「のれんの減損処理」を「事業計画を再度保守的に検討した結果」としており、収益性などを考慮した事による損失計上とみられます。

ここで述べられる「のれん」は、企業の買収・合併(M&A)の際に発生する、「買収された企業の時価評価純資産」と「買収価額」との差額のことを指します。

例えば時価評価純資産が80億円のA企業を、B企業が100億円で買収した場合、差額の20億円が「のれん」としてB企業の資産に計上されます。

「のれん」は各企業の会計基準により減価償却されるか否かが異なりますが、クックパッドの会計基準は「国際財務報告基準」であるため、のれんは減価償却されず、減損処理する場合は全額一括での損失計上となります。

また、「のれんの減損処理」は、「買収した企業が不振となったため、のれんを損失計上する」という意味です。

今回のクックパッドの場合で説明すると「投資のため海外企業を買収したが、収益性が悪化したため、買収時の差額である7億6,000万円全額を損失として計上した」ことになります。

つまり、今回の「のれんの減損処理」は「海外事業への投資の失敗」を意味すると捉えることができます。

なお、クックパッドは「2018年12月期決算」および「2017年12月期第3四半期決算」でも、国内事業または海外事業について「のれんの減損処理」を行っており、今期決算で3年連続となります。

「投資フェーズ」を経たクックパッドのゆくえ

クックパッドは、2016年12月期決算説明会にて、「これから10年間は投資フェーズに入る」ことを宣言し、「戦う市場全てでNo.1」「潜在市場兆円規模」を目標として掲げ、今日に至るまで積極的にアプリ等のプラットフォームの構築や海外への展開を進めてきました。

今2019年12月期決算は海外事業の「のれん減損処理」により大きな赤字となったクックパッドですが、一方で海外の利用者は増加しており、海外アプリの評価も高いです。

2019年4月には、クックパッド海外版アプリが「Google Play Awards 2019」の「Standout Build for Billions Experience部門」に選出されるなど、大きな功績を残しています。

また、「Cookpad(海外版)」は2017年、「Google Best of 2017」に7地域で同時入賞しており、世界的にも高い評価がされていることが分かります。

クックパッドは「10年間の投資フェーズ」を経て「戦う市場全てでNo.1の実現」というミッションを達成することができるのでしょうか。今後の企業としての成長が気になるところです。

【参考】
「質疑応答に関して2019年12月期 通期決算説明会 質疑応答の要約(https://pdf.irpocket.com/C2193/ly8K/Yhbe/wq3y.pdf)」
「2019年12月期 決算短信[IFRS](連結)(https://pdf.irpocket.com/C2193/ly8K/aMml/wYvJ.pdf)」
「2019年12月期 決算説明会資料(https://pdf.irpocket.com/C2193/ly8K/aMml/Wt9h.pdf)」
「世界各地域のクックパッド(https://info.cookpad.com/service_product/overseas)」
「2016年12月期 決算説明会資料(https://pdf.irpocket.com/C2193/jwgy/YIcB/dBrX.pdf)」
「「Cookpad(海外版)」が、Google Play Awards 2019のStandout Build for Billions Experience部門に選出(https://info.cookpad.com/pr/news/press_2019_0509)」

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