SARSやMERS流行時に株価はどうなった? 今、アタフタする必要はない理由
LIMO / 2020年3月4日 20時45分
SARSやMERS流行時に株価はどうなった? 今、アタフタする必要はない理由
世間は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)一色ですので、もう書かなくてもいいかと思いましたが、時節柄触れないわけにはいきません。
先週は世界中の株価はタガが外れたように暴落しました。ですが、今回のコラムでは、長期的な観点ではこのようなリスクイベントを過剰に心配する必要はないということを述べたいと思います。
いつ暴落が起きても不思議ではなかった!?
確かに金融市場は動揺しています。しかしながら、そもそもリーマンショックで底をつけてから約10年以上世界中の株価は上昇し、特に米国株は3倍以上になっていることを認識しておかなければなりません。
「山高ければ、谷深し」のごとく、そのリーマンショックの前までも、ITバブル崩壊以降7〜8年は株価が上昇していました(図表1参照)。加えて、昨年の米国株(NYダウ平均株価)は年間約25%程度上昇しています。
これは私見ですが、過去10年以上順調に上がり続けた株式を、投資家はいずれ売りたいと思っていたはずです。つまり、売り場を探していたところだったのです。そこに起きたのが、2020年年初の米国・イラン対立問題です。
それで相場がぐらついたものの、すぐに戻りました。本来はこの時点で売りが出てもよかったのですが、問題の終息が早く、大きな売りインパクトにつながらなかったのです。言い換えると、相場はいつもマグマを抱えながら走っており、いつ暴落が起きてもおかしくなかったということです。
そして新型コロナウイルスの感染拡大です。当初、欧米市場の反応は鈍かったですが、自国に罹患者が出ると急にネガティブになり売り一色になりました。このあたりの反応は、リーマンショックの時にニューヨークが崩れると連鎖的に世界中の株式が売られたのと同じです。
正直いいますと、どんなプロでもこればっかりは予想はできません。ですから、プロも売る、個人も売る。だから暴落するのです。売っていないのは、年金や塩漬けやむなしの一部個人(含む、筆者)くらいではないでしょうか。
暴落にどのように対応するか
こうしたネガティブなイベントが発生すると、投資家は疑心暗鬼に陥り、本来売らなくてもよいものを売ったり、本来買うべきタイミングで買えなかったりすることが往々にしてあります。
加えて、つみたて投資などでコツコツと資産形成する方は、下げのタイミングを見計らってショートポジション(売りポジション)を張るようなことはできません。
もちろん、株価が下がって手持ち資産の価格が下がるのは気分の良いものではありませんし、不安になるのも理解できます。少額のつみたて投資でさえやめてしまおうかと思われるのも分からないではありません。
でも、毎月自動的に投資を行う積立投資なら、株価(投資対象価格)が下がった時点でより多くの株数(口数)を購入できるわけですから、文字通り「下がったら買い」を実践できるわけです。
では、原因不明の疾病が拡大したり、経済イベントが発生して不安になったりする際、どのように対応したらよいのでしょうか。投資自体をやめてしまうべきでしょうか。
筆者の答えは、「全く気にせずにペースを変えず、タイミングを選ぶことなく投資を継続しましょう」です。その理由の一つに、投資家でも実業家でも、新型コロナウイルスが蔓延しようと、株価が下がろうと、投資する時には投資するという事実があります。
実際、米国の著名投資家であるウォーレン・バフェット氏は、2019年第4四半期にクローガー(小売)とバイオジェン(医薬品)の株式を合わせて約820億円で購入しています。
この時期は新型コロナウイルスも米・イラン問題も顕在化はしていませんでした。しかし、投資以降には何でも起こり得ることを考えれば、投資タイミングを選ぶことは難しいのです。
もう一つの事例では、グーグルが本年2月中旬にクラウド・コンピューティングのルッカー社の買収(約3,000億円)を完了したことが報じられています。これは今回の騒動の時期と重なります。ことほどさように、長期的な視点で資産形成や投資を考えるのであれば、タイミングはそれほど重要ではないことが分かります。
以前のウイルス禍で株価はどうなったか
前回のSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)が発生して、その後終息した時期と株価の動きを見てみましょう。SARSは02年11月から03年7月、MERSは韓国で発生・終息した15年4月から15年12月とします。
以下の図表1では、SARSでもMERSでも発生時期直後に株価は下がり、終息宣言前に株価が底を打ち反転しているのが分かります。もちろん、それよりも株価へのインパクトが大きいITバブル崩壊やリーマンショックのほうが、より大きな影響があったことは言うまでもありません。
おわりに
今回の新型コロナウイルス拡大のように、原因も対処方法も明らかではない新種の疾病に対して人々は不安になるものです。その気持よく分かります。
ただし先人の相場格言には、「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」というものがあります。今回の騒動は、次の強気相場が悲観の中に育つかどうかを証明するよい機会かもしれません。
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