「年収と幸福度は比例する?」暮らしへの満足度が大きく上がる「年収ゾーン」とは
LIMO / 2020年3月4日 19時15分
「年収と幸福度は比例する?」暮らしへの満足度が大きく上がる「年収ゾーン」とは
しあわせの尺度を、お金と心の関係から考えてみませんか
突然ですが、みなさんに質問です。
「生きていく上であなたが一番大切だと思うものは何ですか?」
家族、友人、恋人、ペット・・・など、答えは十人十色ですよね。もちろん、迷わず「お金!」と答える人もいるでしょう。また、「お金!」と思っていても正直には言いづらい、と躊躇してしまう人もいるかもしれません。
たかがお金、されどお金。お金は日常生活を続けていくうえで欠かせないものの一つです。「年収を上げればハッピーになれる」「高年収の人と結婚したい」などと考える人も多いでしょう。
ところが、近年さかんに実施されている幸福感に関する調査では、必ずしも「高収入=幸せ」とはいえない、という結果が出ているのです。これはどういうことなのでしょうか。
今回はいくつかの調査結果をまじえながら、「お金と幸せ」の関係について、考えてみたいと思います。
みんなのマネー事情~収入と貯蓄の関係~
まず、みんなの年収はどのくらいなのかをご紹介します。国税庁の『平成30年分民間給与実態統計調査(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm)』によると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの年間平均給与は約440万円(男性545万円、女性293万円)でした。
また、厚生労働省の『平成30年 国民生活基礎調査の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/03.pdf)』によると、2017年の1世帯あたり平均所得金額は551万6,000円、中央値は423万円でした。
※中央値とは「所得を低いものから高いもの(もしくは高いものから低いもの)へと順番に並べたときの、真ん中の値」です。また所得とは、年収から必要経費や控除額を差し引いた金額です。
次は貯蓄についてみてみましょう。年収が多ければ貯蓄も多いと思われがちですが、実はそうとは限りません。下記のグラフは、総務省の『家計調査報告(貯蓄・負債編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)(https://www.stat.go.jp/data/sav/1.html)』をもとに、年間収入別の貯蓄現在高をまとめたものです。
年収350~400万円に達するまで、および年収が900万円を超えると、貯蓄現在高は一律に増加していくことがわかります。ところが、年収400~900万円未満の部分だけに注目すると、「年収が高いほど世帯の貯蓄現在高が増える」とはいえない状況です。
年収が上がると責任も重くなって仕事が忙しくなり、効率化のために支出が増えてしまうということもあるでしょう。またプライドが上がって、それに見合ったリッチなライフスタイルを求めた結果、支出が増える人もいるかもしれません。
一番満足度が高まる年収は?
「収入と貯蓄」の関係のつぎは、「お金と心」の関係について考えていきましょう。
内閣府が2019年に公表した『満足度・生活の質に関する調査 第1次報告書(https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf)』をもとに、世帯年収別の生活満足度をみていきましょう。幸せと生活満足度は同じ概念ではありませんが、参考にはなります。
※この調査では、生活満足度を「総合主観満足度」という数値で表しています。「現在の生活にどの程度満足しているか」について、0点から10点の11段階で回答してもらい、「全く満足していない」を0点、「非常に満足している」を10点として算出しました。
総合主観満足度を世帯年収別に示したのが下記のグラフです。
総合主観満足度のアップ率が高いのが、「年収100万円以上300万未満」と「300万円以上500万円未満」の境目で、5.20から5.68と0.48ポイントもアップしています。「人は平均的な年収に達するときに、満足度を大きく上げる」といえそうです。
平均レベルの年収があれば、周囲の人が持っているものが買えずに困ることはなくなりますし、「お金がない」という理由でコンプレックスやストレスを感じることも少なくなるでしょう。
一方、年収3,000万円を超えると総合主観満足度は次第に下がっています。年収が上がれば上がるほど幸せになれるとは限らないのです。その理由としては、「裕福さに慣れてしまうこと」や「周囲の年収も高いと特別感が得られないこと」などがあるでしょう。
年代や性別でも違う「幸せの感じ方」
先に見た内閣府の『満足度・生活の質に関する調査 第1次報告書』によると、総合主観満足度は年代や性別でも変わってくるようです。
女性の平均年収はすべての年代で男性よりも低いにもかかわらず、女性のほうが男性よりも総合主観満足度が高くなっています。
また、年代別にみると、働き盛りの45~59歳で総合主観満足度が最も低く、60歳以降で最も高くなりました。
総合主観満足度に大きな影響を与える項目としては、「健康状態」や「趣味や生きがいの有無」、「頼れる人がいるかどうか」といったものが挙げられます。お金では買えないものが、人の幸せを左右するともいえそうです。
お金ばかりに意識を向けていると、本当に大切なものを見失ってしまうかもしれません。「自分の幸せを決めるものは何なのか」について、一度じっくり考えてみたいものですね。
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧日本郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
【参考URL】
『平成30年分民間給与実態統計調査(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm)』国税庁
『平成30年 国民生活基礎調査の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa18/dl/03.pdf)』厚生労働省
『満足度・生活の質に関する調査 第1次報告(https://www5.cao.go.jp/keizai2/manzoku/pdf/report01.pdf)』内閣府
『家計調査報告(貯蓄・負債編)-2018年(平成30年)平均結果-(二人以上の世帯)(https://www.stat.go.jp/data/sav/1.html)』総務省統計局
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