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お年寄りが遺したお金をめぐる「ちょっと切ない話」~ 銀行員が見た人間模様

LIMO / 2020年3月7日 19時45分

お年寄りが遺したお金をめぐる「ちょっと切ない話」~ 銀行員が見た人間模様

お年寄りが遺したお金をめぐる「ちょっと切ない話」~ 銀行員が見た人間模様

銀行の仕事は、昔とは大きく様変わりしつつありますが、やはり切っても切れないのが「お金」です。そして、人はお金が絡むと変わってくるもの。

今回はお話しするのは、お年寄りのお金に関するお話で、そこにあるのは自分の大切なお金を、大切に思う相手に「遺したい」という気持ち。そして、その「遺された」相手がそれをどう受け取ったか、そんなやりきれない実話を紹介します。

切ないというくらいなので、マネーライフ、投資運用など前向きな話題ではなく、また教訓になる話でもないかもしれません。

ただ、読者の皆さんが「遺す」ということを考えるときに、何かヒントになることが一つでも見つかれば、という思いからお話ししていきます。

身寄りのないおばあちゃんを世話した女性

結構な資産家で、亡き旦那さんの預金を引き継いで年金暮らしをしているおばあちゃんがいました。入社間もない私は、その預金を定期預金にしてほしくて足繁く通っていたお宅でした。

何度か訪問するうちに、打ち解けてもらえたのか、

亡くなった夫とのあいだに子供はなく、長いあいだ2人で生きてきた

今は1人になり寂しいと思うときもあるが、近所に住む女性が面倒を見てくれるので安心

その女性と血のつながりはないが、本当の娘のように思っている

こういった身の上話を聞かせてくれました。

この近所に住む女性は、一度は結婚して町を離れたようですが、いろいろあって実家に帰ってきたのだそうです。

この女性も子供がなく、おばあちゃんと似たような境遇だったこと、また自分が子供の頃から実の娘のように可愛がってもらっていたので、時間が許す限りおばあちゃんの面倒を見ているということでした。

血のつながりはなくても、気心の知れた同士、2人は信頼し合っているのが感じられました。おばあちゃんは資産家で、預金もかなりの額を持っていましたが、生活は質素で慎ましく暮らしていました。

あるとき、おばあちゃんがお使いを頼んだ女性にお金を払おうとして、「いらない」と断られているところに出くわしたことがあります。この女性からは、本当に好意でおばあちゃんの世話をしているということが伝わってきました。

おばあちゃんが亡くなったあとに起きたこと

ここからは、私が見聞きしたことと、他のお客様経由で聞いたことです。

おばあちゃんは、身寄りがなくお金を遺す身内もいないので、遺産半分を娘のようなこの女性に遺し、残りは寄付しようと考えていたそうです。しかし正式な遺言などの準備もないまま、ある日突然亡くなられました。


お通夜や葬式も行なわず、近所の人が焼香に来るくらいでしたが、女性はたった1人で対応し、家の片付けも1人で済ませたそうです。

亡くなったあとに起きたことその1:亡くなったら身寄りがあらわれた!

身寄りがないと思われていたおばあちゃんですが、実は自分の兄妹が存命でした。

兄と妹と名乗る人は、銀行にも来て「すぐに口座を解約しろ!」と迫りましたが、相続の手続きには書類や時間もかかるという説明を聞き、その日は諦めて帰って行きました。

細かい経緯はわかりませんが、最終的には裁判になりました。人づてに聞いた話なので血縁関係まではわかりませんが、裁判の内容によると、実際にこの兄妹には相続権があったようです(注:当時の法律です)。

しかし、あとからわかったことですが、おばあちゃんは手書きの遺言的なものを遺しており、そこには「世話になったあの女性に財産の半分を遺す、残りの半分は寄付して欲しい」という内容が記されていました。

裁判は「自分たち兄妹2人しか血縁者がいないのだから、遺産は全部もらえるはず」と訴える兄妹と、「自分の取り分よりも、おばあちゃんの寄付したいという遺志を実現させたい」女性、という構図になったようでした。

亡くなったあとに起きたことその2:女性は最後にそっと身を引いた

結末としては、おばあちゃんの遺産の半分は兄妹がもらい、残りの半分は寄付されたそうです。

兄妹は、おばあちゃんが亡くなるまでの世話代として、女性にいくらかのお金を渡そうとしましたが、受け取らなかったそうです。女性は、寄付したいというおばあちゃんの遺志が遂げられたのを見届けたあと、静かに町を去って行きました。

まとめ~お金が絡むと人は変わる

身寄りがないと思っていたのに、その人が亡くなった途端にあらわれた親族。「今まで何も世話してこなかったくせに」「金の亡者」....何度も訪問しておばあちゃんと親密だった若かりし頃の私は、兄妹に対しこんな感情を持ちました。

しかし同時に「自分の実績のため、仕事として何度も訪問し、定期預金を勧めていた私もこの兄妹と同じでは?」と気がつき、はっとしました。

この話にはお金が貯まるノウハウ、投資運用のコツ、あるいは教訓になることはないと思います。

ただ、この経験から、

人はお金が絡むと変わる

自分だけのときはそうでもないが、自分に家族ができると事情も変わってくる

お金が絡むと人は変わるが、どこまでも清廉な人もいる

こういったことを学びました。

また、銀行員としてお金に絡む人間関係を目の当たりにし「切ない」と感じさせられたのでした。

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