2億円赤字のランサーズ。新型肺炎でテレワーク増が「黒字化に直結しない」理由
LIMO / 2020年3月9日 20時45分
2億円赤字のランサーズ。新型肺炎でテレワーク増が「黒字化に直結しない」理由
2019年12月16日、東証マザーズ市場に赤字上場したランサーズですが、2019年4~12月期の連結決算は2億400万円の赤字となりました。
赤字の大きな要因は広告費への先行投資で、さらに今後は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染防止策による企業のテレワーク導入が追い風となり、成長する可能性が高いです。
「ランサーズ」の純利益・売上高は?
クラウドソーシングのサービスである「Lancers」の運営をしている企業「ランサーズ(4484)」が2020年2月14日に発表した「2020年3月期 第3四半期決算短信」(2019年4~12月期)によると、2019年4月1日~2020年12月31日までの売上高は24億4,300万円、営業損益は1億7,0000万円の赤字、親会社株主に帰属する四半期純損益は2億400万円の赤字となりました。
また、3月31日に行われる本決算では5億6,500万円の赤字が見込まれており、おおまかな純損失の数字だけを見ると、ランサーズは窮地に立たされているように見えます。
赤字の原因、大部分が広告宣伝費による「先行投資」
しかし、決算書の内容や決算説明資料の詳細を読むと、今後のランサーズの見方が変わってきます。
2019年4~12月期の売上高24億4,300万円に対し、売上原価は11億4,600万円、販売費及び一般管理費が14億6,700万円でした。
つまり、純損失の大半が販売費及び一般管理費なのですが、この内4億3,000万円が広告宣伝費です。
売上高の約18%が広告宣伝費なのですが、これは通販・サービス業や化粧品業に匹敵する割合です。情報・通信業であるランサーズとしては割高だと言えます。
実は、ランサーズは2020年期3月期を「投資フェーズ」と位置付けており、特に上場直前期であった2019年4~6月期と7~9月期には広告宣伝費だけで3億7,300万円の投資をおこないました。
主な目的は「クライアント・ランサーへの認知を拡大するため」であり、実際にランサーズを利用するクライアント数・クライアント単価はともに上昇しています。
また、ランサーズとしては「弊社はすでに利益を創出できるポテンシャルがある」と発表しており、7~9月期単体では5,000万円の黒字、10 ~12月期単体では4,400万円の黒字となっています。
COVID-19によるテレワーク導入が追い風?
また、今後経済に大きな打撃を与えるであろう「COVID-19の感染拡大」やそれにともなう感染抑止対策ですが、ランサーズの将来的な利益を考えると非常に有利に働く可能性が高いです。
その要因として挙げられるのが、COVID-19の流行に伴い、各企業がテレワークを導入したことです。
テレワーク導入によりサラリーマンが得られる大きなメリットの1つとして「通勤時間の削減」があります。総務省統計局の「平成28年社会生活基本調査(https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html)」(2016年)によると、日本人の平均通勤時間は往復で1時間19分です。
出勤や退勤の準備などを考慮すると、1人当たり1時間30分を自宅と会社間の移動だけに取られているのですが、テレワークを導入することでこの1時間30分を自由に使えるようになります。
また、個人においての「副業・兼業をしたい」という意識は年々増しています。
フリーランス協会の「フリーランス白書2019(https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2019/03/freelancehakusho2019_suvey20190306.pdf)」によると、「現在副業をしている人」、「具体的に考えている人」、「いつかはしたいと考えている人」の合計は約50%を超えています。
ランサーズの逆転劇はCOVID-19の流行が収まるまでお預け?
「副業・兼業をしたい」と考えている人が多くいる中で、COVID-19の影響によるテレワーク導入により、平均で1時間30分かかる通勤時間を自由に使える会社員が増加しています。
これらを考慮すれば、これから副業をする人が増加する可能性は非常に高いといえるでしょうし、クラウドソーシングサービスを提供するランサーズにとって、副業をする人口が増えることが成長の追い風となることは言うまでもありません。
また、上場前から広告宣伝費に投資をしてきたランサーズの認知度は非常に高いです。実際に副業を検討している方なら「ランサーズ」の名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、COVID-19の影響で経済全体が冷え込んでしまうと、資金難等によりランサーズで仕事を依頼するクライアント数も減少してしまう可能性が高まります。COVID-19の流行がランサーズにプラスにだけ働くとは限りません。
ただ、テレワーク導入企業が増えた現状のまま、COVID-19の流行が収まり経済が正常化すればどうでしょうか。その時がランサーズにとって本当の利益創出フェーズとなるかもしれません。
2019年赤字上場を果たし、2020年3月期本決算も赤字が見込まれているランサーズですが、テレワーク導入を追い風に黒字化への逆転勝利を収めることができるのでしょうか。
来期の決算と、今後の株価の推移が気になるところです。
【参考】
「2020年3月期 第3四半期決算短信[日本基準](連結)(https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08891/0aa4470b/812e/4220/bc2e/21f0aa56b60e/140120200214465605.pdf)」ランサーズ
「ランサーズ、3Qも黒字で売上高・売上総利益共に堅調な成長 クライアント獲得に向け積極投資(https://limo.media/articles/-/16059)」LIMO
「平成28年社会生活基本調査(https://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.html)」総務省統計局
「フリーランス白書2019(https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2019/03/freelancehakusho2019_suvey20190306.pdf)」フリーランス協会
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
スキマバイト「タイミー」が上場、27歳社長の素顔 時価総額1000億円超「ユニコーン」に導いた手腕
東洋経済オンライン / 2024年7月26日 9時0分
-
サイゼリヤ「優待廃止ショック」も国内復活の兆し 株主優待廃止で一段の成長が求められる局面に
東洋経済オンライン / 2024年7月13日 9時0分
-
マネーフォワード、創業以来初の四半期売上高が100億円を突破 - 2Q決算
マイナビニュース / 2024年7月12日 18時42分
-
「スーツ離れ」はもう止まらない…紳士服大手を苦しめるビジネス服の「ユニクロ化」が行き着く先
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 16時15分
-
5060億円市場を3社が競う牛丼チェーン。“松屋外交”で各国大使も絶賛する松屋の強さの秘密
日刊SPA! / 2024年7月3日 8時52分
ランキング
-
1「身代金」「初動対応」、"KADOKAWA事件"の教訓 凄腕ホワイトハッカーが語る日本企業への警告
東洋経済オンライン / 2024年7月31日 8時0分
-
2海外の優秀なエンジニアが日本企業を選ばない訳 人気が落ちている要因は「企業の体質」にあった
東洋経済オンライン / 2024年7月30日 16時0分
-
3部屋に泥棒がいる!〈高級老人ホーム〉で優雅に暮らす86歳母からのSOS…急ぎ駆けつけた51歳長男の目に飛び込んできた「まさかの光景」【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月30日 11時15分
-
4なぜペットボトルのサイズが8種類もあるのか…伊藤園の「むぎ茶」が圧倒的に支持される納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年7月30日 16時15分
-
5しまむらグループの子ども服「バースデイ」が謝罪、物議のコラボ商品の販売中止【全文】
ORICON NEWS / 2024年7月30日 20時41分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください