「やっぱりママがいいんだよ」の重圧。本当に母親じゃなきゃダメなの?
LIMO / 2020年3月15日 10時15分
「やっぱりママがいいんだよ」の重圧。本当に母親じゃなきゃダメなの?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う一斉休校への対策として、内閣府は国が企業に補助する従業員のベビーシッター利用料の上限を、3月に限り引き上げることを決めています。
このようにシッター利用を推奨するような動きがある一方で、日本では他人に子供を預ける文化がまだ定着していないため、自分のこととなると抵抗のある方も多いのではないでしょうか。
また、いざ預けようとすると子どもに泣かれたり、夫からは「やっぱりママがいいんだよ」と責められたり…。子どものそばにいるのは母親でないとだめなの?と、苦しくなってしまいますよね。
この「やっぱりママがいいんだよ」という言葉に象徴される、”母親神話”は本当なのでしょうか。論文の結果を元に検証していきましょう。
1. 血のつながった母親でないとダメ?
赤ちゃん(生後0カ月から20カ月)の間に養子になった子どもが、養子になって3カ月以上たった頃に、新しい母親に対して安心感を感じているかどうか測定した実験があります。
その結果、52%の子どもが、血縁のない新しい母親に対して、健全な安心感を持つことができるようになったと報告されています。しかも、生後何カ月で養子になったかということは関係がありませんでした。
また、4〜7歳で養子になった場合でも、7、8カ月もすると新しい母親に対して心理的安全を持てるようになった、という報告もあります。
ここからは、子どもが安心できる対象は血のつながった母親に限らないということがわかります。産みの親より育ての親、ということわざにも見られる通りですね。
2. 愛着を感じる対象は母親だけ?
では、血のつながりのあるなしに関わらず、子どもが安心できるのは母親に対してだけなのでしょうか?
欧州で700人の子ども(平均年齢は29.6カ月、約2歳半)を対象に行われた実験では、保育士に対しては50%の子どもが、母親に対しては60%の子どもが安定した愛着を示していると報告されています。
ここでは、保育士になついている子どもは母親に対して愛着を示さない、あるいは、母親にべったりの子どもは保育士に愛着を示さないなど、どちらかにしか心理的安全を感じないという結果は出ていません。
むしろ、子どもは母親への愛着とは無関係に、保育士にも愛着を向けていることもわかっています。つまり子どもは母親だけではなく、保育士など他の大人に対しても、一緒にいて安心と感じられるということです。
そのため、シッターや保育士に預ける際に多少泣かれてしまっても、「やっぱりこの子は私が1人で面倒を見なければ...」という罪悪感から、預けることを断念してしまう必要はありません。
むしろ、子どもが慣れるまで、相性の良いシッターや環境の良い保育園を見つけることができるよう、根気強く探すことが重要だと言えるでしょう。
まとめにかえて
「子どもが一緒にいて安心できる対象は母親だけだ」という母親神話は科学的に見ると根拠は弱く、母親以外にも「一緒にいて安心できる大人」を作ることができるということを見てきました。
母親は「子どもがどんな時に機嫌が良くて体調がいいか」をよく観察し、その時々に適した環境を整える必要こそありますが、必ずしも自分が全部背負う必要はありません。これは父親にも同じことが言えます。
育児の負担は全てママが負わないといけないと思わなくて大丈夫。たまには夫やシッターさんに預けて、マッサージに行ったり、大人だけでランチしたり、適度な息抜きをするのもいでしょう。決して過度な無理はしないでくださいね!
【参考文献】
「Effects of a Foster Parent Training Program on Young Children’s Attachment Behaviors: Preliminary Evidence from a Randomized Clinical Trial(Dozier et al.2001)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3209265/)」(Dozier M.他、NCBI)
「Security of children's relationships with nonparental care providers: a meta-analysis(Ahnert et al.,2006)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16686794)」(Ahnert L.他、NCBI)
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