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新型コロナで自動運転化加速か?JR九州路線での試験走行から見る鉄道の未来

LIMO / 2020年3月14日 19時45分

新型コロナで自動運転化加速か?JR九州路線での試験走行から見る鉄道の未来

新型コロナで自動運転化加速か?JR九州路線での試験走行から見る鉄道の未来

子供の頃に、列車の運転手になりたいと思っていた人に対しては少し夢のない話になるかもしれません。

2019年12月、JR九州の在来線で、自動運転による試験走行が行われたというニュースが大々的に報じられました。

その試験走行の行い方が特殊でした。特殊と言っても、何も列車の操縦を行う高性能なロボットがいるということではありません。

既存の設備を少し高性能化したというだけの低コスト設備で自動運転に挑んだというものです。

地方路線の人手不足と財源不足にとってはそれを解決する明るいニュースとなるのですが、列車の運転手という職業がなくなってしまうかもしれないという意味では、複雑な受け止め方をする人も多いのかもしれません。

また、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大により、他国では駅員への感染も確認されています。COVID-19の終息の目処は立っておらず、日本でも同じような状況が起こる可能性は十分にあります。そうなってしまった場合、電車の間引き運転などの対応も考えられる今、自動運転はこういった緊急事態にも対応の選択肢を増やしてくれるかもしれません。

JR九州が挑んだ自動運転の低コスト化

自動運転を行っている路線は既に存在します。新橋から豊洲まで運航している「新交通ゆりかもめ」や、金沢八景から新杉田まで運航している「横浜シーサイドライン」などが代表的です。

これらの路線は自動運転専用に整備された路線や設備を使用して、自動運転によって運航されています。

路線も単純な直線路線の往復であり、自動運転へのハードルも最初からそこまで高くない形で設計されています。

自動運転を行う代わりに、設備投資は多くなり、路線当たりの運賃も割高となります。

JR九州の挑んだ自動運転は、既存の信号システムを高性能化することで、自動運転を行うというものです。その制御にはある程度の誤差がありますが、そこを気にしなければ安全に自動運転ができるというものです。

分岐や複数路線の乗り入れなど、自動運転を前提に設計された路線と比べると複雑となるJRの在来線に低コストの自動運転の導入を検討するということは、非常時にはどのように対応するのか心配になります。

完全自動化を想定していない

JR九州の自動運転では、完全自動化を最初から想定していません。

非常時には係員が非常停止を行うことを前提とし、既存の信号システムを使用して自動での発車、減速、停止を行える自動運転を行うというものです。

これが実現できた背景にはJR九州ならではの理由があります。

もともと、JR九州で導入しているATS(自動列車停止装置)は、高度な制御に対応ができるような仕様となっています。通常であれば、赤信号で侵入した際に誤操作防止のために停止操作をするようなATSですが、JR九州ではATSの高機能化を行い、完全自動まではいかなくとも、人の操作を行わずに、発車や停止といった列車の自動操作ができるような制御を可能としました。

人の運転操作と比べると少し違和感がある乗り心地ですが、自動で運転していると言われなければ分からないレベルだということです。

自動運転の際に乗車する係員は、国家資格を持つ列車の運転士ではなく、通常時は監視をしていて、非常時に安全に停止することができる人のことを言います。

通常の列車であれば、国家資格を持つ運転士が最初から最後まで運転しなければならないのに対して、非常時に停止を行うだけの「係員」であれば、人材の条件が大幅に緩和されます。

人材の確保が難しい地方の課題

現在の法律では、列車の運転には国家資格を持った運転士が行わなければなりません。しかし、地方ではそういった人材の確保が将来的に難しくなるということを考えた開発とも言えます。

しかし、列車の運転士がいつの日か、自動運転を見ていて異常が起きた時に止めるだけの係員となっていることが当たり前の世の中になっているかもしれません。

これは航空機などでも、自動運転によるパイロットの省力化もありますので、大きな時代の流れでもあると言えます。

きちんとした技術を持った人に列車を運転してもらうということは、そういった人材を育成する期間も費用もかかり、現在の人手不足が叫ばれている中ではなかなか難しいということも言えます。

列車の自動運転+人が補助という未来の鉄道

JRの在来線では、踏切人立ち入りや人身事故など様々な想定外の事態が発生します。
それらすべてに対応ができるようになるには、人と同等の判断力を持った自動運転機能を持った列車が必要になります。

しかし、こうした列車を開発するのには、期間がかかり、費用面でも地方の鉄道会社が負担できるようなものではなくなってきます。

それよりも既存の設備に機能増強を行い、おおまかな自動運転を行い、人が緊急時に対応するということが、未来の鉄道像となるのかもしれません。

なんにでも対応できる人が様々な業務に当たるというのが理想ですが、人手不足の時代であればそういった人材を確保することも困難になりつつあります。

日常運航のようなルーチンワークのような部分を機械化して、緊急時には人が対応するということが、今後の鉄道の在り方になっていくのではないでしょうか?

列車の自動運転に関する設備投資が活発になる?

人口減少による人材不足の問題は、JRも例外ではありません。今後、運転士の資格を持った人材が不足するような事態になれば、鉄道運営にも影響を及ぼします。

そして今回のCOVID-19の感染拡大です。他人との接触が避けられない公共機関は、感染を拡大させている一因かもしれませんが、すべて止まってしまっては経済活動への大きな影響が懸念されます。

そうならないためにも、何らかの列車の自動運転に関する設備投資は始まるのではないかと感じています。

その場合に鉄道の車両を製造している会社や、鉄道用の信号制御システムなどを開発している会社、鉄道関連の建設会社などに注目が集まることになります。

JRのような大きな企業が、大規模な設備投資を行う場合には、大々的な発表がありますので、こうした発表も注視する必要があります。

【参考】
新交通ゆりかもめ 公式サイト(路線図確認)(https://www.yurikamome.co.jp/)
横浜シーサイドライン公式サイト(路線図確認)(https://www.seasideline.co.jp/)
「列車自動運転普通に? JR九州が開発 既存線に低コスト導入可の自動運転システムとは(https://trafficnews.jp/post/92609)」乗りものニュース
「乗務するのは誰だ? JRが挑む「自動運転」の成否(https://toyokeizai.net/articles/-/323973)」東洋経済オンライン

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