日本社会の男女格差。給与、昇進、出産・育児における現実とは?
LIMO / 2020年3月19日 20時25分
日本社会の男女格差。給与、昇進、出産・育児における現実とは?
依然残るジェンダーギャップ
昨年12月に発表された、世界経済フォーラム(WEF)による「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数 2020」。男女格差を分析したこの指数で、日本は153か国中121位になりました。
121位という結果は前年の110位からさらにランクを落とし、G7の中では最低です。この指数は、政治、経済、教育、健康の4つの分野のデータから作成されますが、日本はそれぞれ144位、115位、91位、40位と、政治や経済の分野でスコアが低い、すなわち男女格差が大きいというのが特徴です。
働く女性はどんな壁や不満を感じているのか
一方、オーストラリアのコンサルティング企業、ザ・ドリーム・コレクティブが2020年1月に日本全国の働く男女800人を対象に行った「働き方の多様性に関する意識調査」では、全体の約37.4%が現在の職場環境に満足していないということが分かりました。
給与面の満足度
職場環境に満足していない1番の理由として62.9%の人が「給料が少ない」ことを挙げています。この「給料が少ない」という回答を男女で比較すると、男性57.2%に対して女性68.7%と11.5ポイントの差が生じています。
実際、国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査結果について」を見ると、1年を通じて勤務した給与所得者の1人当たりの平均給与は平均が441万円ですが、男性は545万円、女性は293万円。給与額の格差がかなりあるのも事実です。
キャリアアップのチャンス
「働き方の多様性に関する意識調査」に戻ると、「今の職場にキャリアアップのチャンスはありますか?」という問いに対して、半数以上の58.5%がキャリアアップのチャンスがないと感じているという結果でした。
中でも20代女性は60.0%がキャリアアップのチャンスがないと感じる一方で、20代男性は43.0%と平均より低く、キャリア初期の若い女性がステップアップの難しさを感じていることがわかります。
育児休暇の取得状況
育休取得については、女性の取得率が66.5%である一方、男性の取得率は23.9%。実に女性の3分の1という結果で、男性の育休取得実績のない企業がまだ大多数であることが示されています。
さらに、育休を取らない理由について、育休を望まない男性の23.3%は「男性は育児休暇を取得する必要がないと思うから」と回答しています。女性で育休を望まない場合は「昇進の可能性がなくなりそう・復帰後に今のポジションに戻れなくなることが怖い」と「育休の制度がない」がそれぞれ17.1%で同率1位となっています。
職場で突きつけられる「働きにくさ」
このように、女性が働く上で性別による格差を感じずにはいられない状況は少なくありません。給料に差が出ればモチベーションに影響するでしょうし、男性社会の中でキャリアアップが難しいという問題を目の当たりにして、せっかく希望に満ちて社会に出ても出端を挫かれてしまうこともあるでしょう。
また、出産・育児についてもまだまだ負担は女性に偏っている状況にあるなど、さまざまな要因の積み上げで不満が募るのも無理はありません。
こうした中、職場で働きにくいと感じる状況に直面する女性もいます。以下は、そんな経験をした人の事例です。
産休・育休が取得しづらい空気
「産休・育休を取得したことで、『これだから女は…』と上司から言われたという女性の先輩がいます。その女性は、かつては同じ立場だったはずなのに、私が産休・育休を取ることになると『あなたみたいに当然のように育休を取る人がいると、私たちが迷惑』と非難してきたのです。同じ女性同士理解してもらえるかと思ったのにショックでした。女性の働き方に理解がない職場では妊娠したことが悪いことかのようにギスギスした空気で、長く働くことは無理だ思いました」
女性だけに求められることがある
「女性社員に早く出社することを求めてくる上司がいて、『男性社員より気が利くと思って雇ったんだから』とびっくりするような発言を堂々としてくるのです。始業30分前には出社しているのにそんなことを言われては絶望感しかありませんし、なぜ女性だけが早く出社する必要があるのか理解に苦しみます」
評価や昇格に差が出る
「同じ成果を上げても、女性は男性のように評価されない風土です。同期の男性が昇格しても女性そのままだったり、育休を取った女性で管理職になった人も皆無。『どんなに頑張っても意味ないな』と、時代錯誤の古い体質の職場に憤りを感じてしまいます」
こうした旧態依然とした意識や環境には驚かざるをえませんが、さまざまな職場で女性が働きながら子育てすることに対する理解不足や、女性軽視の風土が残っているようです。
おわりに
1985年に制定された男女雇用機会均等法(1997年・2006年改正)では、募集・採用や配置・昇進・退職等における差別禁止や、間接差別の禁止、婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止を定めています。
しかし、そこには適用範囲の狭さや実効性の弱さといった問題もあるとも言われています。また、上述のエピソードのように、社会の中では男女ともに女性が働くことへの差別的意識が残っているという現実もあります。
女性の活躍では国際的な評価が低い日本。女性が働きやすい環境の整備にはまだまだ時間がかかりそうです。給料やキャリアアップの機会における格差、出産・育児における女性への負担の偏りなど、解決が急務な課題は数多くあると言えるでしょう。
【参考資料】
「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数 2020(Global Gender Gap Report 2020)(http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf)」World Economic Forum
「働き方の多様性に関する意識調査(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000054196.html)」(The Dream Collective Global Pty Ltd)
「平成30年分民間給与実態統計調査結果について(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2019/minkan/index.htm)」(国税庁)
「雇用差別禁止法に対する法的アプローチの変遷と課題(https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/13j027.pdf)」(福島大学・長谷川珠子、独立行政法人経済産業研究所)
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