「知らなかった」では済まない老後の大きな出費~見落としがないよう再チェックを!
LIMO / 2020年3月26日 20時20分
「知らなかった」では済まない老後の大きな出費~見落としがないよう再チェックを!
昨年は老後2000万円問題が話題になりましたが、老後資金はしっかり貯金できているでしょうか。「しっかり準備してきたから問題ない」という人もいるでしょう。
しかしながら老後の支出については、もう一度見直しておくことをおすすめします。というのも、長く会社に勤め、ようやく定年を迎えたという人たちに話を伺うと「ある出費」を見逃していたという人がとても多いのです。
定年後に想定していなかった大きな出費があると、その後の生活に影響が出る可能性があります。見逃しがちな出費について把握し、安心して老後を迎えられるよう準備しておきましょう。
老後の収入は現役時代の半分以下に!?
現在会社勤めをしている人の多くは、60歳で定年を迎えるでしょう。2013年に「改正高年齢者雇用安定法」が施行され、希望者に対しては65歳までの継続雇用が義務化されましたが、それでも65歳までには定年を迎える人がほとんどではないでしょうか。
2017年12月に厚生労働省が公表した「平成29年就労条件総合調査の概況」においても、一律定年制を定めている企業の内、79.3%の企業が定年年齢を60歳と定めているという結果が出ています。
それでは、60歳で定年を迎えて再雇用されたときや、再雇用期間が終了して年金生活が始まったときの収入はどうなるのでしょうか。
2015年に総務省統計局が掲載した「家計調査結果からセカンドライフを生活設計」という資料によると、定年後に再雇用となった場合、実収入は現役で働いていたときの7割程度になるとされています。
さらに、再雇用期間が終わり年金生活に突入してからの実収入は、再雇用期間の5割程度まで落ち込むとの結果が出ています。
そのため、老後にどれくらいの生活費が必要なのかを計算し、不足分を貯金しておく必要があるのですが、その際に会社勤めが長かった人が見逃しやすい出費があるのです。
会社勤めが長い人が見落としがちな出費とは
長く会社に勤め、定年を迎えた人たちに話を伺った際に多かった意見が、「定年後の健康保険料や住民税の存在を忘れていた」というものです。自営業の人や日頃から保険料・税金にしっかり意識を向けていた人だと、「それを忘れるの!?」とびっくりするかもしれませんね。
ですが、「健康保険料は会社と折半」「給与天引きで納付まで会社が済ませてくれる」という状態が長かった人の中には、給与の手取り額しか見ておらず、保険料や税金に意識が向いていなかったという人もいるのです。
定年を迎えると、それまでの健康保険を2年間任意継続するか、国民健康保険に切り替えるかを選ぶことになりますが、どちらにせよ保険料は全額自己負担しなければなりません。
健康保険の保険料や住民税は、前年の収入によって金額が決定する「所得割額」があるため、定年前に役職に就いていたなど給与額が高かった人は金額が高額になってきます。
給与天引きで健康保険料や住民税の存在をすっかり忘れていた、または甘く見積もっていたところに高額な請求が来ると、老後の資金計画が大幅に狂うこともあるでしょう。老後の生活費を計算するときには、定年直後の保険料や税金をどれだけ正確に把握できるかがポイントになってくるのです。
いくらかかる? 健康保険料や住民税のシミュレーション
「健康保険料や住民税が高額になる」といわれても、いくらくらいになるのかピンとこないという人もいるのではないでしょうか。
たとえば「東京都江戸川区に居住・60歳・前年の給与所得額600万円・国民健康保険加入者数1人」という条件の場合、「江戸川区国民健康保険料シミュレーション(https://www.city.edogawa.tokyo.jp/edg/simulation/keisan_kokuho.html)」で算出してみると、年間保険料の見込額は73万2957円になります。(※2019年2月末現在)
1カ月あたりの保険料は6万1079円。ただし、国民健康保険料は6月~翌3月の10カ月で納付するため、1回あたりの納付額は7万3295円です。もちろん、年金生活に入って収入が下がれば翌年の保険料も下がりますが、これだけ高額だとうっかり忘れていた場合にかなり生活に響いてくると思いませんか?
市区町村などがネット上で公開しているシミュレーターを使えば、簡単に健康保険料や住民税の金額が計算できるので、一度シミュレーションしてみましょう。居住する市区町村によって金額が異なるケースがあるので、自分の居住地域のシミュレーターを利用してくださいね。
確定申告も忘れずに!
会社勤めが長かった人がもう1つ忘れがちなのが、「年末調整前に退職した場合は確定申告が必要」ということです。
会社勤めの間は、副業をしたり、医療費控除や住宅ローン控除などを受けたりしない限り、自分で確定申告をする必要はなかったでしょうが、これからは自分で確定申告をしなくてはならないのです※。
※年金収入のみで、年間収入400万円以下の場合は、確定申告不要制度が利用できます。
きちんと確定申告をすれば還付金が戻ったり、健康保険料や住民税の金額が下がったりすることもあるので、確定申告も忘れずに行いましょう。
源泉徴収票や生命保険料控除証明書など、確定申告に必要な書類を捨ててしまわないように、大切に保管しておいてください。
おわりに
会社勤めが長かった人に話を伺うと、予想外に「定年後の健康保険料や住民税の存在を忘れていた」「確定申告が必要なことを知らなかった」という人が多くいました。
定年前の給与額によっては定年直後の健康保険料や住民税が非常に高額になるので、うっかり忘れていると、予定外の出費でその後の生活が苦しくなる可能性があります。「老後の準備は完璧!」と思っていても、今一度老後の資金計画を見直してみましょう。
【参考】
「高年齢者雇用安定法とは 65歳までの雇用を義務付け(https://www.nikkei.com/article/DGXKZO44829090V10C19A5EA2000/)」(日本経済新聞)
「平成29年就労条件総合調査の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/17/dl/gaikyou.pdf)」(厚生労働省)
「No.103 家計調査結果からセカンドライフを生活設計(https://www.stat.go.jp/info/today/103.html)」(総務省統計局)
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