株価が暴落して日銀が債務超過に陥っても問題ない
LIMO / 2020年3月29日 20時20分
株価が暴落して日銀が債務超過に陥っても問題ない
日銀は大量のETFを持っているので、株価が下落すると債務超過に陥るかもしれません。しかし、それでも問題はない、と筆者(塚崎公義)は考えています。
株価が暴落すると日銀が債務超過に陥る可能性あり
日銀は大量のETFを持っています。ETFというのは、株式投資信託の一種ですので、要するに日銀は巨額の日本株を持っている、ということになるわけです。ということは、仮に今後、新型コロナの大流行などによって株価が大幅に下落するようなことがあれば、日銀は巨額の損失を被ることになるわけです。
買った時の値段より下がれば含み損を抱えることになりますし、それが日銀の「純資産」より多ければ、日銀は事実上の債務超過である可能性も出てきます。
日銀が保有しているETFを時価評価するとすれば、バランスシートが債務超過になるかもしれませんし、買った時の値段でバランスシートに載せ続けるとすれば表面上は債務超過にならないかもしれませんが、実質的な債務超過に陥ることには違いありません。
民間企業は債務超過に陥ると倒産する
民間企業が債務超過になると、債権者からの返済要請が相次ぎ、倒産するのが普通です。債務超過というのは、資産をすべて売却しても負債が完済できない状態なわけですから、債権者は不安になります。「他の債権者が先に返済を受けてしまったら、自分が返済を受けられなくなるかもしれない」と。
そこで、すべての債権者が「他の債権者に返済する前に私に返済しろ」と請求してくることになります。そうなると、債務超過の定義からして返済不能に陥り、倒産するわけです。
日銀の場合は、債権者が金を返せと言ってきても、紙幣を印刷して渡せば良いだけなので、倒産することはないのかもしれませんが、日銀券を発行している会社が債務超過だということになると、日銀券のありがたみが著しく損なわれてしまう、ということはありそうですね。
それを心配している人もいるでしょうが、筆者は何も心配ないと考えています。
日銀の債務超過は問題ない
日銀が債務超過になったら、日銀に増資をさせて政府が引き受ければ良いのです。日銀が倒産したり日銀券のありがたみが薄れたりしたら大変ですから、政府は必ず日銀の増資を引き受けるでしょう。何の問題もありません。
そもそも日銀の資本金は1億円です。債務超過になったら困るということならば、もっと大きな資本金にすれば良いのに、そうしていないのは、いつでも増資ができると考えているからでしょう。
日銀が数兆円の債務超過になり、数兆円の増資を政府が引き受けたとします。政府は数兆円を使って「債務超過の会社の株券という紙くずのようなもの」を取得したことになりますが、問題ないのでしょうか。
政府の借金が数兆円増えることは、問題ないとは言いませんが、1100兆円の借金が数兆円増えたからと言って、それを大問題だというのも変な話でしょう。「海の水を一口飲んだら海の水が減る」というのと同様に、正しいけれども特段の意味はないですよね(笑)。
そもそも政府の借金が1100兆円もあることが問題だ、というのはその通りですが、それは別の機会に論じましょう。
余談ですが、日銀は黒字になるとそれを国庫に納めます。過去に納めた分を政府から返してもらえば、増資をする必要などないかもしれません。しかし、それを言うと、「倒産しそうな民間企業は過去に支払った法人税を政府から返してもらえば良い」という話になりますから、これも本稿では論じないことにしましょう。
日銀の損失を責めるべきではない
日銀が債務超過に陥ったとして、「ETFなど買うからいけないのだ。日銀総裁は反省しろ」と言うべきでしょうか。筆者はそうは思いません。日銀の仕事は儲けることではなく、日本経済がうまく回るようにすることですから。
日銀の金融政策の基本は、国債を購入して市場に資金を提供することです。したがって、大量の国債を購入した後で国債価格が下落すれば、当然に損が出ますし、債務超過に陥るかもしれません。しかし、それは仕方のないことなのです。それと同じことです。
猛烈な円高の時、政府は為替介入ということでドルを大量に購入します。これなど、ドルが売られている時に買い向かうわけですから、儲けを狙う行為としては大変危険です。むしろ損をする可能性が高いと言えるのかもしれません。それでも、日本経済のためにドルを買うわけで、その行為は決して非難されるべきものではありません。
さらに言えば、通常の財政支出は収入がなくて支出だけあるわけですが、それも日本国のために行われていれば非難されないわけです。そう考えれば、日銀のETF購入が赤字を出したからと言って、非難されるいわれはありませんよね。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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