コロナショックへの振る舞いで見える「人の本質」
LIMO / 2020年3月26日 18時45分
![コロナショックへの振る舞いで見える「人の本質」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_16600_0-small.jpg)
コロナショックへの振る舞いで見える「人の本質」
~試される「思考力」~
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で世界的なパニックに陥っています。日本は感染者・死亡者ともに抑えられており、日々感染が広がる国がある一方で健闘していると感じます。
日本は地理的に地震や津波の災害が多く、日本人は災害に強い国民性と考えます。過去、東日本大震災下でも、少ない物資を求めて行列を作るなどの秩序が見られ、その姿が海外メディアでも肯定的に捉えられるということがありました。
しかし、前回の震災と異なり、今回のCOVID-19は世界的流行(パンデミック)という状況です。こうした異常な状況下においては、その人の思考力が全面に出てしまうものと考えます。今こそ、個々人の思考力が試される時なのです。
東日本大震災との違い
今回のパンデミックは、東日本大震災と異なる点がいくつかあります。
東日本大震災は日本国内だけの被害に留まったことで、他国からの支援も受けることができました。道路が分断されるなど、ロジスティクスに影響は出たものの、長期的な極端な物資不足に陥ることはありませんでした。
しかし、今回の「コロナショック」は世界的規模で被害が出ている点で異なります。現代はグローバル社会で、世界での分業化が進んでいます。日本衛生材料工業連合会によると、日本で販売されているマスクの約8割は輸入品です(※)。
今回は世界的な流行ですから、被害を受けているのは日本だけではありません。結果として、日本でのマスク不足が発生する事態となりました。日本の体制を整えるだけでは物資不足が解消されず、マスクやアルコールなどの物品が長期的に不足する事態になったのです。これは東日本大震災では見られなかった状況です。
異常な状況下で頼るべきは過去の体験ではなく「歴史」
こうしたパニック下の状況では「デマ」が流布します。実際、「マスクと同様にトイレットペーパーも不足する」とSNSでデマが拡散されてしまい、それを信じた人たちが大量にトイレットペーパーを買い占めに走るという事態が起きました。
デマは出来心からのイタズラのように捉える人もいますが、ビジネスに混沌を招き、ダメージを与える「経済犯罪」に他なりません。
デマを流す人は論外として、問題は圧倒的多数の「デマを信じて行動する人たち」です。
1970年代のオイルショックにも同様の買い占め行動が起きました。情報を多面的に得られ、マスメディアだけでなく個人も発信できる時代になったにも関わらず、買い占め行動が今回も起きてしまったのです。「周囲が買っているからとりあえず自分も買う」というのでは歴史から学べておらず、人類の文化レベルとして進歩がないことになります。
「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」というビスマルクの言葉があります。こうした異常な状況下で、参照するべきは「自分の過去の経験」ではなく「歴史というデータ」ではないでしょうか。今回のトイレットペーパーも「歴史」に答えが出ていたわけですから、周囲の言葉や自分の過去の体験を参照するべきでないのは明白です。
人の本質は平時ではなく有事で明らかになる
その人の真の人間性や、知恵というのは平時ではなく、有事の際にこそ露呈するものではないでしょうか。落ち着いた平時の際にはすました顔をして冷静に振る舞う人でも、有事の際には慌てふためき、発せられる情報を分析することなく鵜呑みにしてしまうものなのです。
件のトイレットペーパー買い占め問題も、「トイレットペーパーが不足する」という情報がやってきても「本当だろうか?」とその反対意見を調べれば、デマかどうかはすぐに判断できます。「トイレットペーパー不足だと困る!」と保身に走ってしまう人ほど、ムダに行列に並ぶことになったり、余分なものまで大量に買い込んでしまうので、かえって損失を被る結果を招きます。
また、マスク転売についても同様です。マスクが不足したことで、一部の転売屋がマスクを大量に仕入れて、高値で売りさばくという問題が起きました。
一部の転売屋の言い分として「市場に流動性を与えるという価値を提供している」がありますが、これは正しい意見ではありません。なぜなら、高値転売を前提とした大量仕入れがなければ、そもそも流動性が損なわれることもなかったからです。
つまり、買い占めは迷惑でしかないということです。こうした自分本意な行為が怒りを呼び、オークションサイトなどでの転売を妨害することにもつながりました。これも「周囲が困っても自分さえよければいい」という自己中心的なモラルの低さが有事の際に露呈したことになるわけです。
試される思考力
こうした有事の際にこそ、自分の頭で考える「思考力」が試されるのではないでしょうか。流れてきたデマを鵜呑みにして、よく考えずに自分もデマの拡散に加担してしまう。また、物資不足と聞いて慌てて買い占めに参加し、ますます物資不足を招いてしまう元凶は「思考停止」です。
「本当に正しい情報が何か分からない」こうした事態こそ自分の頭で考えることが必要ではないでしょうか。この有事の事態からは、非常に多くの教訓を得ることができるでしょう。リアルタイムで自分の考えた仮説を検証し続けることが可能な、日々学びを得られる時期でもあるように思えます。
コロナショックへの振る舞いで、その人の思考力が見えるのです。
【参考】
(※)「マスクの生産・在庫数量推移(http://www.jhpia.or.jp/data/data7.html)」日本衛生材料工業連合会
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