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ヤフーとLINEとの間で期待されるシナジーとは

LIMO / 2020年4月1日 19時30分

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ヤフーとLINEとの間で期待されるシナジーとは

昨年12月に発表がされているように(https://data.swcms.net/file/sw4689/ja/ir/news/auto_20191223439786/pdfFile.pdf)、このまま話が進めば旧ヤフーである「Zホールディングス」と「LINE」が年内に経営統合となっていく。

幅広いサービスを展開することで世間でも知名度の高い2社について、今回は両社の各種サービスを比較し、統合後に期待されるシナジーなどもユーザー視点で見ていきたい。なお、文中ではZホールディングスではなく簡略的に「ヤフー」の呼び名を使用していきたい。

メディア・広告のシェア拡大加速なるか?!

ヤフーとLINEはともにメディア・広告領域でのサービスを展開している。ヤフーでは検索サービスが一般個人にもよく活用されていることだろう。ヤフーではそのほか、ニュースサービスおいて、総合的なサイトやスポーツ・防災などに特化したサイトなども運営している。

また、地図サービスや料理レシピの紹介サイト「kurashiru」などのほか、広告サービスにおいては総合サイト上でのバナー広告や検索結果上でのリスティング広告なども提供している。

一方、LINEも同様に「LINEニュース」「ライブドアニュース」といった複数のニュースサービスや、無料通信アプリ上での広告を提供している。独自性の高いサービスでいえば、小売業向けの販売促進サービスや、ユーザー側が独自に情報を編集して公開できるWebキュレーションサービス「NAVERまとめ」での広告なども手掛けている。

利用者基盤を見てみるとヤフーは月間利用者数が6700万人、LINEは8200万人と、両社とも多くの利用者を抱えている。

また、ニュースについては、長年の実績やウェブサイトでの提供という特性上、ヤフーの方が幅広くかつ多量のニュースを提供できているようだ。

一方のLINEについては、スマホ上という表示できるスペースの限界などもあって、利用者にとって注目度の高そうなニュースを厳選して提供するというスタイルをとっている。両社のニュースサービスには「ウェブサイト」と「スマホアプリ」という形式の違いからくる差がサービスの在り方に大きく表れている。

そのほか、ヤフーには料理レシピの紹介サイト、LINEにはWebキュレーションサービスといった、他方にはないような独自のサービスも展開しており、同じ「メディア・広告」の領域でも両社の戦略の違い・個性が伺える。

両社は経営統合において「ネット広告での市場シェア拡大」というシナジーが期待できると明らかにしている。

検索サービスやニュースサイトを中心に多くの利用者を持つヤフーと、圧倒的なシェアを誇るスマホ通信アプリを展開するLINEが統合することを考えると、シェアが大きく広がるのは当然といえば当然だ。ただ、シナジーというのだから、大きな足し算だけにとどまらない「+α」の効果も見込めると両社は考えているのだろう。

広告主(広告を依頼する側)から見れば、ターゲットとしたい層を網羅できるか、より多く効率的にターゲットにコンタクトできるか、良好なレスポンスが得られるかといった点が重要となる。

月間利用者数がそれぞれ6700万人、8200万人と大規模で、加えて日々の生活の上で頻繁に利用されるサービスという性質を踏まえれば、確かに両社の統合は広告主にとっても媒体としての魅力を高めるものであり、広告サービスのシェア拡大を加速させそうだ。

コンテンツで効率的に相互集客

コンテンツにおいても両社は幅広いサービスを展開している。ヤフーでは無料の動画サービス「GYAO!」や電子書籍「ebook japan」のほか、ゲームや占いなども提供。

一方でLINEでもゲームやマンガのほか、小説投稿サイトや定額制音楽聴き放題サービス、ライブ配信サービスなどを提供している。

こうしてみると、電子書籍やゲームなどの共通のサービスがある一方で、動画や音楽、ライブ配信といった互いに持ち合わせていないサービスもあり、その利用者を互いに送客できるかがシナジーの肝となりそうだ。

特にライブ配信などは近年市場規模が大きく拡大しており、ヤフーとしてはLINEのサービスを取り込むことでその成長性の恩恵を享受したり、何らかのサービスと組み合わせることで掛け算的に利用者を増やしたりすることも期待できるだろう。

eコマース統合で客層拡大

eコマースの分野でも両社の活動の幅は広い。ヤフーではネット通販サイト「Yahoo!ショッピング」やオークションサイト「ヤフオク!」のほか、電子決済サービス「PayPay」の活用をメインとした通販・フリーマーケットサイトも運営。

また、アスクルを買収したことで主に日用品を取り扱う「LOHACO」、ZOZOを買収したことでファッション専門通販サイト「ZOZOTOWN」も提供している。

一方、LINEでは同様に通販サイトのほか、レストランの出前・宅配・デリバリーやテイクアウトをネットを通じてできるサイトや、格安ホテルやツアーの検索ができる旅行比較サイトなども運営している。2020年3月26日に「出前館」の株式の追加取得と資本業務提携についてプレスリリースが出ている(https://scdn.line-apps.com/stf/linecorp/ja/ir/all/LINE_20200326_jp.pdf)。

ヤフーは通販サイトに加えてオークションサービス、日用品やファッションで専門性の高いサービスも保有しており、幅の広さや規模の大きさでいえばLINEよりも広いといえる。

一方のLINEはというと、出前やデリバリー、テイクアウトといった中食に関するニーズにフォーカスしたサービスを展開。

各サービスで方向性が異なるために、各サービス間の親和性はそこまで強くはないかもしれないが、異なるニーズを持つ利用者層を一手にできるということで、こちらも相互送客の面では大きなシナジーが見込めそうだ。

また、ヤフーとしては利用者の身近なツールであるLINEを活用できるようになることで、リテンション率(既存顧客維持率)も改善すると想定できよう。

QRコード決済でデファクト・スタンダード確立なるか?

成長テーマとして、両社は金融の分野にも注力している。ヤフーではQRコード決済サービス「PayPay」、FXや投資信託のサービス、株価・企業ニュースなどの「Yahoo!ファイナンス」、そのほかクレジットカードやネット銀行なども運営している。

LINEでは、同じくQRコード決済サービス「LINE Pay」のほか、個人の信用評価サービスやそれをもとにした融資サービス、ネット証券、ネット保険、仮想通貨サービスなどと手広く提供している。

両社はこの分野でのシナジーについては特に期待していることだろう。電子決済の競争が熾烈を極める中、各社は多額の広告費をかけてシェアの拡大を図っている。

そうした中、モバイル専門の調査研究機関「MMD研究所」が2019年9月に行った調査によると(https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1825.html)、QRコード決済の利用者における各サービスの利用率は以下のようになった。

PayPay・・・・・44.2%

楽天ペイ・・・・17.1%

LINE Pay・・・・13.6%

d払い ・・・・・13.6%

メルペイ ・・・・4.4%

au PAY ・・・・・3.5%

FamiPay・・・・・1.5%

Origami Pay・・・0.7%

「PayPay」が圧倒的なシェアを誇っており、それに「楽天ペイ」「LINE Pay」が続いている。今回の統合で、「PayPay」と「LINE Pay」が今後どうなるのかというのを把握するにはまだ時間が必要だが、おそらくはそれぞれが連携することになるであろう。

先に見たデータを単純に合算すれば、シェアは過半数を超える見通しとなり、業界内でのプレゼンスはさらに大きくなるだろう。

QRコード決済のように社会のインフラ色の濃いツールは、「デファクト・スタンダードになる」、つまり「高いシェアを獲得する」こと自体がさらなるシェア拡大につながることが多い。今回の統合によって、シェア獲得競争における大きな強みを築くことができそうだ。

両社はQRコード決済の他にも多様な金融サービスを提供している。「LINE」という利用者にとって身近なアプリをベースとして両社の金融サービスが有機的に組み合わさることで、利便性はより高まる可能性が高い。こういったサービスの質的シナジーも期待できそうだ。

AI研究の加速にも期待

AIについても両社は積極的な姿勢を見せている。ヤフーでは、話しかけるとAIが意味を理解して、様々な情報を提供する「音声アシスト」のほか、企業向けには行動ビッグデータを分析・活用できる「DATA SOLUTION」を提供。

一方でLINEは、日常生活をサポートする音声AIアシスタントのスマートスピーカー「Clova」のほか、企業向けにはチャットボットやOCR、音声認識・音声合成、画像認識などを提供する「LINE BRAIN」を展開している。

サービスの違いとして、「音声AI」においてはアプリとハードという形式的な違いがあるほか、LINEの「Clova」にはカメラやラジオといったエンターテインメント機能や通信アプリの操作なども可能で、LINEの方がサービスの幅が広いとみている。

一方で企業向けのサービスでは、ヤフーの「DATA SOLUTION」は生活者の興味関心やエリアごとの特性、商品のトレンドなどを分析できる「マーケティング」の色が強く、LINEの「LINE BRAIN」は、チャットボットやOCR、音声認識といった「業務効率化」の色が強いサービスとなっている。

両社は統合後、AI基盤開発の強化・加速を見込んでいる。AIは成長ステージにある代表産業であり、技術やノウハウの活発なすり合わせが性能改善や新たな機能開発へとつながる。両社は統合によって開発人員を増やすほか、これまでのノウハウを共有することで、研究の加速や相互補完的なサービスの開発へとつなげていく計画だ。

BtoC・BtoB両方のシナジーに関する続報を待つ

これまで、両社のサービスの概要を説明したうえで比較し、そして統合後のシナジーのイメージを紹介してきた。有名企業同士とあって、一般個人はもちろん投資家や多くの企業にとっても注目の経営統合だが、BtoC・BtoBのサービス両方でどのようなシナジーが起こるのか、今後も大きな注目を集め続けそうだ。

両社のサービスがどう変化し、利用者にとってどう便利なものとなるのか、イメージを鮮明なものにするためにも随時情報を追っていきたい。

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