「新卒一括採用で入った会社で一生勤め上げる」モデルは崩壊。その中で生き抜くには?
LIMO / 2020年4月13日 20時20分
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「新卒一括採用で入った会社で一生勤め上げる」モデルは崩壊。その中で生き抜くには?
あえて、コロナショックだけが契機とは言いません。ただ筆者は、いずれ日本での“新卒一括採用制度”が消えると思っています。むしろ消えないと、低成長が続く日本と日本企業は復活しないのではないかとも考えています。学生や経団連に嫌われるのは重々承知ですが、まあご一読ください。
かつての一括採用の理由は今も通用するのか?
そもそも、なぜ日本企業は4月1日を入社日として、30〜40万人程度の新卒を自動的に採用する(学生にとっては就職させられる)ことになっているのでしょうか。
筆者も30数年前はチョー生意気な学生でしたが、新卒で某企業に採用されました。その後、転職を繰り返しながらサラリーマン生活をそれなりにエンジョイしましたから、偉そうなことは言えません。でも、やはり新卒を一括採用で雇う必要はないと考えています。
まず、これまでの日本で新卒が一括採用されてきた理由を考えてみましょう。順不同です。
幸運なことに日本経済が右肩上がりになっていた(古い話で恐縮ですが、1945年の終戦から高度経済成長時代を経て1980年代末期のバブルのピークまで)。
採用しないと各企業人手不足になっていた(1.と重なります)。
マスメディアがもっぱら注目する日本の大企業では、転職は好ましくないとされてきた(実際は転職してハッピーなケースも少なくない)
退職金制度は非転職者に有利だった(特に公務員)。
上場企業に入れば定年まで“安泰”とされてきた(いまや40歳代でリストラあり)。
思いつくのはこれくらいですが、令和の今でもその通り!と賛同できる項目があるでしょうか?
かろうじて2とか4は今でもそうかもしれません。ただし、2の人手不足は特定産業における提示給与と業務内容のミスマッチが原因です。4も厚生年金以外の企業年金を用意しているのはごく一部の企業です。
5もかつてはそうだったかもしれませんが、そもそも一つの会社でキャリアを全うすることが本当にハッピーなことでしょうか。筆者はそうは思いません。
新卒一括採用がない海外は「空き」狙いの就職
筆者は欧州・南米で働いた経験がありますが、新卒採用制度は一切と言っていいほどありませんし、新卒をありがたがることもありません。基本的に企業は何らかのポジションに「空き」があれば、そこを埋める人材を探すということになります。
欧米企業が新卒社員を歓迎しない理由は以下のように明白です(欧米企業が正しいと言っているわけではなく、普通の企業経営者ならそう思うという理由です)。
新卒社員はスキルがなく、教育コストが必要なので当初は採用企業に過大な負担となる(お辞儀の仕方、名刺の渡し方まで教えるのは日本企業くらい)。
退社リスクが大きい。経験上は3年以内に約半数が3割が辞めるのが実情(日本の場合は3年以内に3割。厚生労働省:新規学卒就職者の離職状況(平成27年3月卒業者の状況)(https://www.mhlw.go.jp/content/11652000/000510780.pdf)参照)。
すぐに営業収益をもたらす人材が少ない(大企業では、新人は売上に直結する営業部門だけではなく、経理・人事や総務関連などの管理部門にも配属されるため、売上に直結する新入社員は少ない)。
そもそも新卒を採用する必要がない(労働市場に流動性があり、即戦力の転職者を採用しやすい)。
そのため、学生は卒業してすぐ就職ということは稀で、企業にアルバイトやインターンで潜り込んだり、ひたすら履歴書を書き送ることになります。
ただ、アイビーリーグのような一流大学の学生であれば、学部や院の卒業が近づくと企業側から声がかかることもある、といった格差があったり、就職が決まるまで学生ローンの返済に苦しむという問題があるのも事実です。
「集団」から「個」へという時代の流れ
思うに、令和の時代、残念ながら「〇〇会社はこうした理念で社員を育てる」という、古き良き時代には当たり前のように受け入れられていた”スローガン”が成り立たないのです。
なぜなら、個々人の多様性を尊重するように変化してきている今は、一括採用の新入社員という「集団」よりも、「個」を認めて、その「個」を伸ばさなければ企業も成長しないと考えるからです。”スローガン”は、いわば会社の宣伝です。敏感な学生はそれが本当かどうか見抜いている気がします。
加えて、コロナショックで自宅待機だテレワークだ、さらに給与カットだリストラだとなると、企業に対する不信感は増すでしょう。
もちろん労働者として、未払賃金を請求したり会社の不当行為を訴えたりする権利はありますが、解決に時間と費用がかかるその戦いは、そこそこで手打ちをしないと時間の無駄です。次のキャリア形成にも支障が出るかも知れません(少なくとも筆者は、有事の際は適宜“手打ち”してきました)。
ということで、新卒一括採用された若手社員や就職活動中の皆さんには多少ショッキングかも知れませんが、筆者のアドバイスを参考にしてください。
給料の半分は我慢料
職場で周りを見渡して、四六時中手を動かして本当に忙しくしている社員はどのくらいいるでしょう? 特にホワイトカラーの稼働率はよくて50%程度でしょう(もっとも、ホワイトカラーでも現業で忙しくしている方々もいらっしゃるので、平均すればという意味です)。
ですので、給料の半分はその会社に対する我慢料と保険料みたいなものです。なぜなら、みんな出世して社長になれるわけではないですから。我慢が限界に来れば辞めればいいと思います。次の転職先でより高い我慢料を貰えばいいのです。
会社を利用せよ
個人で信用力をつけようと思っても、かなり大変です。加えて、世間は「〇〇商事の鈴木さん」というように肩書を通して信用する癖がついています。
したがって、運良くネームバリューがある企業に就職したら、その信用力を生かしてクレジットカード、住宅購入(住宅ローン)、その他資金計画等をあらかじめ作って個人の財務基盤を確保しておきましょう。そうでない方は、その会社で一目置かれることを目標とし、ステップアップのための会社と割り切りましょう。
会社はあなたを守ってくれない
会社なるものに過度な期待をしてはいけません。最後に頼れるのは自分自身しかありませんので、リストラや減給・降格があってもドンと構えられる気持ちの強さをもってください。
もちろん、不祥事をしでかしたとか問題行動での処分は論外です。いくらあなたがエリートでも(と呼ばれていても)、会社は平気でカットします。経営陣であっても雇われ社長はすぐ首をすげ替えられますので、ましてや平社員は当然そうなります。
それでも一社目が好きな人が最後まで続けるには
極論すれば、その企業カルチャーにどっぷり浸かることです。朝礼、体操、ダラダラ会議、残業、飲み会、社宅・・・。こういうものが当たり前と思えるような精神構造になればしめたものです。会社ってそんなもの、転職しても同じでしょ?と思い切れれば勝ちかもしれません。ただそれは、筆者には無理でした。
低成長を脱せない日本企業は新卒一括採用を維持できない?
日本経済は低成長が持病のようになっています。そこにまたコロナショックという大打撃が襲ってきました。この影響は短期間では終わりそうもないという時代の流れもあり、新卒一括採用はいずれ成り立たなくなるでしょう。
なぜなら、
一括採用コストと入社後教育コストが収益上見合わない。
学歴や数回の面接で学生の将来性を判断することは不可能。
モノに不自由してこなかった学生は、初任給の高さだけでは採用できない。
学生も自由度の高い働き方を求めている。
と考えるからです。
では、これからどのような採用方法になっていくかです。私見では、新卒採用人数が激減し、各企業は中途採用を増やしていくと思います。
中途入社人材は業界経験が豊富ですから、ビジネスに直結する確率は新卒新人よりは高いでしょう。もっとも、中途採用される側としては、その会社に試されているわけですから、成果が出なければクビになることを覚悟して精進するのは言うまでもありません。そこは新卒採用よりメンタル的には厳しいかもしれません。
これだけ複雑な世の中で、明日は何が起こるか分かりません。そうした中で、新卒採用をコミットし、実質半年以上前から入社を確約することができる会社が何社あるでしょう。そのため、新卒の学生は海外のように、「個」として能動的に企業にアプローチして自分を売り込むことが必要になるかもしれません。
学生諸君も鋭いですから、自分の向き不向きは分かるはずです。多様で将来性のある学生を、一つの枠にはめてゴソっと採用しても、逃げていくのは目に見えていますね。実のところ、黒服を着て就活なんてアホらしいと思っているのは、学生諸君かもしれません。
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