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”コロナ不況”で政府が取るべき大胆な倒産防止策とは?「犠牲者」を救うのは国の責任

LIMO / 2020年4月12日 20時15分

”コロナ不況”で政府が取るべき大胆な倒産防止策とは?「犠牲者」を救うのは国の責任

”コロナ不況”で政府が取るべき大胆な倒産防止策とは?「犠牲者」を救うのは国の責任

政府の緊急経済対策が発表されましたが、消費減税や全員への現金給付より、倒産防止の資金繰り支援等が重要で、迅速かつ大胆な実施が求められる、と筆者(塚崎公義)は考えています。

「金がないから消費しない」わけではない

新型コロナによる不況が深刻です。景気対策として「消費税を減税しろ」「全世帯に現金を配れ」という意見が聞こえてきますが、政府はそれを採用しませんでした。賢明な判断だと思います。

通常の不況時は、人々が「金がないから消費できない」ので、減税や現金給付をすれば消費が増えて景気が回復します。効果が絶大なのか限定的なのかは議論がありますが。

しかし今回は、人々は金を持っているのに、外出できないから消費をしないのです。そんな時に減税をしたり現金を配ったりしても、消費が増えるはずはありません。

飲食店等々の倒産と解雇を防ぐことが最重要

そんなことよりも、遥かに重要なことは、倒産しそうな企業や解雇されそうな労働者が多数存在しているということです。通常の不況の時にも倒産や解雇はありますが、今回は事情が異なります。

通常の不況が浅く長いものである一方で、今回は深く短いものだと思われます。深いことについては疑いありませんが、短いという点については、新型コロナが半年程度で収束宣言に至るという前提で論じることにしましょう。

収束宣言が出れば、速やかに消費も投資も戻るでしょう。人々は金がなくて消費できないわけではないので、節約疲れの反動から一気に消費が出るでしょうし、投資も出るでしょう。

つまり、半年程度を倒産せずに生き残るか否かが決定的に重要なのです。企業は生きていればすぐに元気になりますが、倒産してしまえば設備がスクラップ業者に叩き売られ、組織のノウハウや信用や顧客リスト等々が雲散霧消してしまうわけです。それは当事者にとってのみならず、日本経済にとって大きな損失です。

つまり、半年程度生きのびるか否かが勝負だという点が通常の不況と異なるわけです。そうであれば問題は、半年間の資金繰りを政府が助けるべき、ということになります。

雇用も半年後には戻るわけですから、その間の解雇を防ぐべく、雇用調整助成金等々の充実が求められる、というわけです。

この点、政府の大方針は正しいと思います。ただ、制度の存在を知らずに倒産してしまう中小企業が多い、申請の手続きが面倒で審査に時間がかかる、といったことは大いにありそうで、危惧されるところです。

スピード感を大切に

資金繰り支援をするとなれば、たとえば緊急融資をするわけですが、「ゾンビ企業にも貸すのか」「収入が減ったことをどうやって証明させるのか」といったことにこだわりすぎてはいけないと思います。

今は非常時ですから、完璧を求めてはいけません。ある程度の失敗はあったとしても、「完璧を求めて支援が遅れて多数の企業が倒産してしまう」といった事態を避けることが最重要だと思います。

以下に、筆者のアイデアを記します。これがベストだということではなく、こうしたイメージで考えていただきたい、ということです。

基本的な考え方は、「資金を交付しようとすれば、対象を慎重に絞る必要が出てくるので、まずは幅広く資金を貸与しよう。その上で、返済させる相手と返済を免除する相手をじっくり選別すれば良い」ということです。

税と社会保険料の納付期限を1年延長する

企業は従業員から所得税等々の源泉徴収を行い、それを政府に納めます。企業自身が負担して納める分も当然あります。その納付を1年待ってあげることで、1年間の融資を受けたのと同様の効果が企業に生じます。自営業者についても同様です。

政府としては、何の手間もかけず、幅広い企業に資金繰りの支援をすることができるわけです。1年待てば2年分の税収等々が入るわけですから、支援によって財政赤字が膨らむことはありません。

条件をつけると審査に時間がかかってしまうので、条件をつけずに全員に対して待てば良いでしょう。税収等がなくても、国債を発行して資金繰りをつければ良いのですから、政府としては困りません。政府にとって、1年待つことのコストは非常に小さいのです。

昨年の申告所得の半分を融資する

昨年の申告所得は税務署に聞けばわかります。その半分を上限として融資をするのです。昨年の所得を実際より少なく申告した企業(自営業者を含む、以下同様)はあるでしょうが、多く申告した企業はないでしょうから、この制度を悪用して不正に融資を受けることはできないはずです。

金利を3%程度に設定すれば、資金繰りに困っている企業は借りるでしょうし、そうでない企業は借りないでしょう。「資金繰りに困っている企業に限り融資する」などという条件を付ける必要もありません。

中には資金繰り支援を受けても倒産する企業があるでしょうから、ある程度の貸し倒れは生じるでしょうが、それは仕方のないことです。貸し倒れを恐れて融資に慎重になり、倒産が増えることを考えれば、それはコストとして割り切りましょう。

銀行の新規融資を支援する

銀行に対し、中小企業向けの融資残高を維持するように強く要請しましょう。「融資残高を2年間維持した先については、それ以降に倒産した場合の銀行の貸し倒れ損失の一定割合を政府が補填する」といったインセンティブを検討しましょう。

融資残高の維持だけではなく、融資の増額も要請しましょう。銀行に対し、「中小企業に対して融資残高を増やしたら、報告すること。報告を受けた融資案件については、銀行の貸し倒れ損失の比較的大きな割合を政府が補填する」といったインセンティブを与えることで、銀行の中小企業向け融資が増えることを期待しましょう。

飲食店等と従業員は「犠牲者」だから救うべき

本件を考える上では、飲食店等々がある意味で「犠牲者」だ、ということも重要だと思います。政府は難しい決断をしました。「自粛要請をせずに、大勢が死亡することを黙って見ている」「自粛要請をして、飲食店等が苦しくなるのを我慢してもらう」という選択肢のうちで後者を選んだのです。

それならば、彼らを支援してあげることは国の責任だと思います。自粛要請のおかげで筆者の感染可能性が下がり、同時に飲食店が苦境に立たされているわけですから、少なくとも筆者は1国民として、減税してもらうより、現金を配布してもらうより、飲食店を助けることに税金を使って欲しいです。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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