親のお金を銀行員から守る!~狙う側の銀行員が内情を明かします(1)
LIMO / 2020年4月29日 11時0分
![親のお金を銀行員から守る!~狙う側の銀行員が内情を明かします(1)](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_16901_0-small.jpg)
親のお金を銀行員から守る!~狙う側の銀行員が内情を明かします(1)
「あなたの両親は富裕層ですか?」
こう聞かれて、すぐに「はい」と答えられる人は多くはないでしょう。
それでは、こちらはどうでしょうか。
「あなたの両親がどれくらいお金を持っているか、知っていますか?」
おそらく「よく知っている人」と「ほとんど知らない人」にハッキリ分れると思います。
昨秋、ゆうちょ銀行で問題化した高齢者への投資信託の不適正な販売も、一握りのお金持ちだけの話ではなく、もしかしたらあなたのご両親に、そしてあなたにも起こりうることかもしれません。
そこで今回は「親のお金を銀行員から守る!」をテーマに、「富裕層」や「高齢者のお金」を銀行員はどのように考えているのか、そうした内情を勤続年数30年の現役銀行員の私が3回に分けてお話ししていきます。
まず、富裕層と銀行の関係について知ってください
富裕層と聞けば、いわゆる”お金持ち”をイメージすると思います。では、いくら持っていると富裕層になるのでしょうか。1千万円、それとも100億円でしょうか?
まずは富裕層の定義から始めたいのですが、その前に「なぜ銀行の中にいる私が今回のテーマを書くのか?」をお話ししないと、内容に共感してもらえないと思います。銀行員の愚痴にも近いお話ですが、少しだけお付き合いください。
どうして銀行員が銀行の姿勢に批判的なのか? きっかけは老婦人の一言
きっかけは、勧誘にお邪魔したお宅で、高齢のご婦人とお会いしたときのことです。
銀行における金融商品の勧誘は、複数の銀行員で対応するのが基本になっています(その理由は、次回お話します)。この日も若手女性行員と、専門の私の2人で訪問しました。
最初に手渡した私の名刺を見て、ご婦人は「あら、銀行員だと思っていたけれど、あなた保険屋さんなのね?」とおっしゃいました。私の名刺にはFPなどの公的資格と共に「保険アドバイザー」といった肩書きも印刷されており、ご婦人はイヤミで言ったのではなく、単純に勘違いされたようでした。
この一言は結構「刺さり」ましたが、気を持ち直して自分が銀行員だと説明しセールスを始めました。しかし当然というか、提案したのは銀行で主流の個人年金保険の話ばかりでした。
すると、話を聞いていたご婦人が「銀行の方だから定期預金をすすめると思ったのに、保険のことしか話さないから、やっぱりあなた保険屋さんなのね?」と。
ご婦人は何気なく率直な感想をおっしゃっただけですが、ショックでした。そのあと何を話したかも覚えていないくらいです。
なぜショックだったのか?
おこがましいとは思いますが「お金にかかわることで人を幸せにしたい」「お金にかかわって誰かの助けになりたい」と思い続けてきた銀行員生活でした。
もちろん長年続けていくうちに、その初志も薄れてきていたかもしれません。それでも心のどこかでそうした気持ちが残っているからこそ、今まで銀行員を続けてこれたのだと思います。
それなのに、自分のやっていた仕事はお客様から見れば「保険屋さん」だったのです。
そして、こうも気づきました。「実績(販売手数料)欲しさに、自分は保険会社や投信会社などの下請けになってしまった」「自分の実績がすべてで、お客様のことは二の次だった」と。
当時、販売成績自体は順調でしたし、長い銀行員生活の中では、もっと辛いことも苦しいことも経験してきました。しかし、こうした銀行の姿勢に疑問を感じ、自ら異動を希望するかたちで金融商品の販売から身を引きました。結果として、続けていれば得られたはずの昇進を逃してしまいましたが、後悔はありません。
現在の銀行は、低金利や長引く不況で本業の預金や貸出で儲けることが難しくなり、金融商品の販売などで収益を上げるのが当たり前の時代です。ですから、金融商品の販売担当は銀行でもスター選手であり、うまく立ち回れば出世も早いのが一般的です。
しかし、こうした経緯で身を引いた私は、銀行の姿勢に批判的な気持ちを払拭することができず、かといって辞める勇気も、銀行を変えようと声を上げることもできず仕事を続けている次第です。
これからお話しすることは、私のこうした立場を念頭に置いて読み進めてみてください。今回のテーマは、特定の銀行や人物を非難するものでもありません。ただ、私の経験から読者のみなさんにとって、少しでも参考になることがあればという思いからお話していこうと思います。
「富裕層」って何?
それでは、まずは富裕層についてお話していきましょう。富裕層と一口に言っても、一般的な意味での富裕層と、銀行にとっての富裕層では意味合いに違いがあります。
一般的な定義での富裕層とは
富裕層を他の言葉で表現すると「資産家」「高額納税者」「セレブ」など、どれも正解のようで実は正解ではありません。富裕層という言葉は、もともとマーケティングの分野で使われていた専門用語が一般に広がったものです。
たとえば、野村総合研究所が2年ごとに公表している富裕層に関する調査では、世帯を純金融資産保有額※ごとに以下のように区分しています。
※純金融資産保有額=預貯金、株式、債券、投資信託、一時払い生命保険や年金保険など、世帯として保有する金融資産の合計額から負債を差し引いた金額
【純金融資産保有額による世帯区分】
資産5億円以上:「超富裕層」
資産1億円以上5億円未満:「富裕層」
資産5,000万円以上1億円未満:「準富裕層」
資産3,000万円以上5,000万円未満:「アッパーマス層」
資産3,000万円未満:「マス層」
2018年版の調査によると、超富裕層および富裕層の割合は100世帯あたり2~3世帯と推計されます。この結果を見て、「うちは富裕層ではない」と思った人が大半でしょう。
しかし一方で、銀行員は別の独自の視点で富裕層を捉えているのです。次回は、そんな銀行員がセールス対象として見る「銀行員にとっての富裕層」について詳しく説明していきたいと思います。
【参考】「野村総合研究所、日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計(https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2018/cc/1218_1)」(野村総合研究所)
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