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新型コロナで「予期せぬ死」が身近に? 改めて遺言書の意味を考える

LIMO / 2020年4月17日 20時0分

新型コロナで「予期せぬ死」が身近に? 改めて遺言書の意味を考える

新型コロナで「予期せぬ死」が身近に? 改めて遺言書の意味を考える

新型コロナ、最悪は国内で40万人超死亡という衝撃的な試算結果

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の猛威が続いており、感染拡大に歯止めがかからない状況です。

実際、7都府県に発令されていた緊急事態宣言の対象が、一気に全国(47都道府県)へ拡大適用されることになりました。また、一部報道では、5月6日までとされている期間が延長される可能性も高まっている模様です。

そんな折、4月15日、厚労省のクラスター対策班が衝撃的な予測を発表しました。それは、新型コロナウイルスの感染拡大で、人と人との接触を減らすなどの対策を全く取らない場合、国内で重篤患者が約85万人に上り、半数の40万人超が死亡する恐れがあるという試算です。

もちろん、これは「対策を全く取らない場合」という最悪シナリオですが、感染した場合の「死」が現実味を帯びていることは確かです。また、これは高齢者だけの問題ではなく、若年層にも死亡者が出ています。

自分自身だけでなく、家族や親族の「死」が決して大袈裟ではない状況にあると言えましょう。

予期せぬ死が身近になる中、遺言書の重要性に関心が高まる?

さて、厚労省クラスター対策班が衝撃的な試算結果を発表した4月15日は、偶然にも「遺言の日」でした。これは、「良(4)い、遺言(15)」という語呂合わせで制定され、2007年度から日本弁護士連合会の主催行事が行われています。

記念日が制定されるくらいですから、近年は遺言の重要性や必要性が非常に注目されてきました。そして、今回のコロナ騒動で死亡者が増加することに伴い、従前よりも関心が高まる可能性があります。

ところで、「遺言」とは何でしょうか?

広義の意味においては、故人が自らの死後のために遺した言葉や文章を指すと言われますが、現在では民法上の制度に鑑みて「自分が生涯をかけて築き、かつ守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う、遺言者の意思表示」(出所:日本公証人連合会)とされています。

なお、ここから先は、「遺言=遺言書を残す」とします。

「相続」にはトラブルも少なくない

全ての人は、いつか必ず最期を迎えます。そして、ほとんどの場合、何らかの財産(注:負債を含む、以下同)を残します。そして、その財産は「相続」という手続きにより、法定相続人(妻子など)に受け継がれていきます。

その際、残した財産は民法で定められた「法定相続分」に沿って分割されるのが基本で、これを「遺産分割」と称しています。なお、相続を放棄することもできますが、ここでは詳細は省略します。

ところが、この遺産分割はなかなかスムーズには行かず、親族間でトラブルになることが珍しくありません。たとえば、“私は老後の世話をしたから多くもらえるはずだ”、“生前に自宅をもらえる約束をしていた”などと、相続人の主張が対立するケースです。

それがエスカレートすると、親族間で訴訟になったり、最悪の場合は殺人事件になったりします。何とも醜いものですが、血を分けた親族でも、お金に係るトラブルは後を絶ちません。しかし、これが現実なのです。故人が嘆き悲しんでいる姿が思い浮かんできます。

家庭裁判所で扱う遺産分割事件は13年間で約4割増

直近の統計データではありませんが、「平成24年度司法統計」(最高裁判所)によると、家庭裁判所への相続関係の相談件数は、 10年で約2倍に増加しているようです(平成24年は約17万5千件)。

また、遺産分割事件の件数(家事調停・審判) も、平成14年の9,148件が13年後の平成27年には12,615件に増加しており、過去最高となりました。平成28年はやや減少して12,188件となりましたが、高水準であることに変わりありません。

ちなみに、1985年は約5,100件だったと見られることからも、遺産相続に係るトラブルが増加の一途を辿っていることがわかります。

遺言書は厳格に定められた様式の“文章”しか認められない

そこで、前述したように、自らが生前に遺産分割の内容や方法を、法律で定められた様式に従って、文章として残しておくのが遺言です。ここで重要な点は、

法律で定められた様式である

文章にする(用紙に残す)

という2点です。

録音テープや動画は全て無効ですし、原則的にメールも無効です。ましてや、口約束など論外なのです。世の中のハイテク化が進んだ現在でも、遺言は厳格な“紙ベース”の世界であることに注意してください。USBメモリに残したとか、スマホで動画を自撮りした等は一切通用しません。

遺言は法定相続より優先されるが、一定の制約はある

最大のポイントは、前出の民法で定められた「法定相続」よりも「遺言」が優先されることです。“遺言ファースト”といったところでしょうか。

ただし、一定の制約があります。たとえば、妻子を残して亡くなった夫が“財産は全て銀座のクラブのママに渡してくれ”という遺言を残していた場合、残った家族はたまったものではありません。

そのため、法定相続人(この場合なら妻子)には「遺留分」という最低限度の相続分が認められており、減殺請求することで確保することができます。

ただ、こうした極端な場合を除けば、原則、遺言が最優先されることになっています。

いわゆる“内縁関係”などは遺言書があるとないでは大違い

相続の遺産分割において、故人の遺言があるとないでは大違いのケースが少なくありません。確かに、遺言がない場合でも、民法の法定相続分に沿って分割することで遺産分割は成立します。

しかしながら、1)何らかの事情により、正式な婚姻関係にない配偶者がいる(いわゆる内縁関係)、2)同じく、嫡出子を認知していない等のように、正式な相続人以外に財産を与えたい場合、遺言は必須となります。

特に、最近は“事実婚”のような法律上の婚姻関係に束縛されない男女(夫婦)が増えています。しかしながら、これは民法上では婚姻関係とは認められないため、突然に相続が発生した場合、遺言がなければ一切の財産分与なしということが十分に考えられます。

15歳以上なら作成できる遺言書

遺言書は、その様式が厳格に定められていますが、代表的な「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」は、比較的簡単な手続きで作成できます。公正証書遺言の作成には相応の費用を要しますが、公証役場で原本が保管されるので安全・確実と言えます。

若年層の中には、“自分は遺言とは関係ない”と考えている人も少なくないと思われますが、民法では満15歳以上なら誰でも遺言書を作成できます。実際に15歳で遺言書を作成する人はごく稀だと思われますが、若い人たちが自身の財産の有無に関わらず、遺言を残すことは不自然ではないと考えます。

今回のコロナ感染騒動が続けば、今後は多くの人が「死」を身近なものと捉える可能性があります。いつ訪れるかわからない自らの最期に備えて、改めて遺言の重要性を考えてみたいものです。

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