どうしてアメリカで銃が売れてるの?新型コロナの「次の悲劇」とは
LIMO / 2020年4月22日 18時45分
![どうしてアメリカで銃が売れてるの?新型コロナの「次の悲劇」とは](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_16994_0-small.jpg)
どうしてアメリカで銃が売れてるの?新型コロナの「次の悲劇」とは
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大が収拾のつかないアメリカでは、3月中の銃の販売数は約190万丁。ニューヨーク・タイムズの調べによれば、オバマ前大統領再選とサンディフック小学校乱射事件が起こった直後の2013年1月に次ぐ、過去2番目の売れ行きだということです(※1)。
自らを犠牲に献身的に活躍する医療従事者への感謝の声が高まる一方で、銃器販売店の前で長蛇の列をなして銃を買い求める人々の様子に多くの人が対照的な印象を持ったようです。
この世界的な非常時に、アメリカの銃信者は一体銃に何を期待しているのでしょうか。銃に頼る彼らの背景は複雑なようです。また、今度は都市封鎖に対する抗議デモが相次ぎ、乱射事件が始まるのではないかという懸念の声も高まり始めました。
「銃は生存に不可欠なもの」とみなすトランプ大統領
生活、生存に必須ではないサービスや販売の営業休止を強いられるアメリカの多くの州では、銃器店も営業休止を求められました。銃信者達は慌てて銃を買い求めるため長蛇の列をなし、その様子が一時話題となりました。
それを受け、国立射撃スポーツ財団(NSSF)代表は早速、ロビー活動で次のように主張しました。
「人々は自らの家族や財産、ビジネスについて懸念しており、これはまさに(個人の銃保有の権利を保障した)合衆国憲法修正第2条が最も重要なときだ」「食料品、水、シェルター、適切な医療は生存に最も重要だ。しかし、個人が自身や家族、自宅、ビジネス、財産を防衛できる能力もそうだ」(※2)
結局3月末、トランプ大統領は銃器店を食料品店や病院、薬局などと同様に「生存に必須なビジネス」とみなし、外出禁止令が出ている中でも銃販売営業の継続を認めました。
「自己防衛のため」正当化できるか
銃を購入する理由として最も多いのは、「自己防衛」だということは様々な調査結果で明らかになっています。
さすがの銃信者も銃でCOVID-19病原菌は撃ち殺せないのは分かっていると思います。COVID-19感染拡大で世の中が物騒になり強盗や犯罪が増えることを予想し、自己防衛のために必須と考えているのだろうと言われています。
しかし、ハーバード傷害管理研究センターがまとめた研究報告(※3)では、銃は自身や財産を自衛するために有益であるという証拠はほとんど提供されていないとしています。
また、「自衛使用」の事例が年間数百万件という統計に正当性はなく、他人を怖がらせたり、脅したりするために使われている件数のほうがはるかに多いことも明らかになったとしています。
「アメリカン・ドリーム崩壊」と「男の義務」
男性の銃信者の多くが銃所持の権利を支持するのは「銃そのものへのこだわりだけではない」と、アリゾナ大学の社会学准教授ジェニファー・カールソン博士は指摘しています(※4)。
カールソン博士は銃信者が多いと知られるミシガン州で、銃を携帯する人々を対象にインタビューした様子をロサンゼルス・タイムズに寄稿しました。
銃を携帯する理由として、銃を(見えないように)携帯する許可をもつある男性は「いつ必要になるか分からない、常に持ち歩くのは最良の慣習だ…財布を持ち歩くように」と述べ、他の男性は「銃を持ち歩かないのは全裸でいるような感じだ」と話しています。
ミシガン州は1970年代までは自動車産業が栄え、学歴がなくても自動車工場で真面目に働くことで、誰もが十分な給料を稼ぎ安定した平和な家庭を築けました。いわゆる「アメリカン・ドリーム」です。しかし今はそうはいかず「生活保護を受けて暮らす人が増えた」と、彼らは訴えています。
ミシガン州などの脱工業化で経済が衰退した地域では、「多くの男性たちは自分の(経済的な)『提供する』という能力に疑問をもつにつれ、『守る』という願望がますます重要に感じるようになった」。彼らは、銃で自分自身や家族、女性、子供、脆弱な他人を危機から守ることを『男の義務』と考え、自分達を『銃をもつ良い人』とみなしているのだ、とカールソン博士は指摘しているのです。
いくら、銃が自己防衛よりも犯罪や自殺などに使われるていることの方が顕著であっても、彼らのような背景の銃信者にとってアメリカン・ドリームに頼れなくなった今、銃に男の「威厳」を見出しそれを制限されることは「男性に対する個人的な侮辱」と感じているのだ、ということです。
正義の味方という名目で銃を支持するという理想は、結局銃を簡単に入手できる社会をつくり、乱射事件の絶えないアメリカにしてしまったのは残念です。終息が見えないCOVID-19の感染拡大で手一杯のアメリカ、社会不安の中で次は乱射事件が増えてしまわぬことを願います。
(※1)“Second-Highest Ever: March Gun Sales Spiked as Virus Fears Grew(https://www.nytimes.com/interactive/2020/04/01/business/coronavirus-gun-sales.html%E3%80%80)”The New York Times
(※2)『銃器店のコロナ閉鎖に反対、米業界「必要不可欠」(https://jp.wsj.com/articles/SB12804231418440214436004586284622420077058?shareToken=st8d2f5d554c9846a58c5a29ae488588b6&reflink=line)』The Wall Street Journal
(※3)“Gun Threats and Self-Defense Gun Use(https://www.hsph.harvard.edu/hicrc/firearms-research/gun-threats-and-self-defense-gun-use-2/)”Harvard Injury Control Research Center
(※4)“Op-Ed: Why men feel the need to carry guns(https://www.latimes.com/opinion/op-ed/la-oe-carlson-gun-carry-culture-20150526-story.html)”The Los Angeles Times
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