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「普通」が叶わなくなっている今…出産を控えた妊婦たちの不安

LIMO / 2020年4月21日 20時15分

「普通」が叶わなくなっている今…出産を控えた妊婦たちの不安

「普通」が叶わなくなっている今…出産を控えた妊婦たちの不安

本来なら普通にできるはずだったことが、突然できなくなってしまった…。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、そんな歯がゆさを私たちに与え続けています。

中でも現在、厳しい状況を余儀なくされているのが、出産を控えた妊婦さんたち。立ち合い出産や産後の面会の禁止など、これまでなら当たり前にようにできたことが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によってできなくなり、大きな不安を抱えています。

希望していた無痛分娩・計画分娩ができない

来月出産予定の佐藤りえさんは、もともと持病があるため、望ましいとされていた無痛分娩に対応している病院を探し、通院していました。「出産は今回で2回目。今の病院は予約しても3時間待たないといけなかったり、大部屋でも出産費用が高額だったりしたけれど、計画分娩にも対応してくれるとのことだったので、つわりの酷い時でも頑張って電車で通っていました。」

りえさんが計画分娩を検討したのには、様々な理由があったよう。例えば、保育園の休園によって、上の子(1歳)が預けられなくなったことも理由のひとつ。「自分たちの親はどちらも遠方に住んでいますし、上の子と2人きりの時に陣痛が来たら置いていくわけにもいかないと思って…。」

しかし、3月中旬頃から「病院からのお知らせ」が頻繁に更新されるようになり、ある日の検診時、病院側から今後の決定事項が書かれた書類を渡されたそう。そこに書かれていたのは「面会禁止」「立ち合い出産禁止」「計画分娩の中止」「無痛分娩の中止」という言葉。検診の回数を減らすようにとも明記されていました。

その後、妊婦健診を月に1回にしたようですが、こうした病院側の対応は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を広げないための配慮ということは重々わかっていながらも、りえさんは病院側の対応に少し不安を感じていたようです。

不安な気持ちにさらに追い打ちをかけたのが、4月の中旬に病院の前に突然設けられた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療用のテント。「出産に挑んでも痛みも取り除いてもらえず、誰にも立ち会ってももらえず、退院するまでは誰とも面会が許されないのは孤独で辛いです。すぐ近くでコロナの診療を行っているので、もし院内感染が起きたらどうしようとも考えてしまいます。」

やり場のない苛立ち

病院の方針変更によってりえさんが今、一番不安を感じているのが上の子と2人でいる時に破水したり、強い陣痛が来たりしたら…ということ。「子どもは病棟にも入れないので、夫か親が来てくれるまで家で待機しないといけないけど、近い距離ではないので、その間に生まれてしまったらどうしようって考えます。」

経産婦は一般的にお産の進みが早いと言われているからこそ、2回目の出産を経験するりえさんは初産とはまた違った恐怖に悩まされているのです。「それに、無痛分娩ができないことで持病が悪化したら…っていう不安も大きい。転院の難しい臨月直前になって、『これはできません』や『緊急事態なので』と言われても、正直私は納得できません。」

周りで里帰り出産を断られた話を聞くと、産む病院が決まっている自分はまだマシだと思う。けれど、コロナのせいで“普通の出産”ができず、無痛分娩や計画分娩も出来なくなってしまった。酷いつわりの時でも頑張って通院し続けた意味が無駄になってしまったように思え、りえさんはどうしてもやり場のない苛立ちを感じてしまうのです。

「無痛分娩は甘えっていう声があるのも分かりますし、麻酔の先生がひとりしかいないタイミングで帝王切開の方と無痛分娩希望の私がいたら、帝王切開の方が優先されて当然だとも思います。でも、妊娠が病気ではないからというだけで、全て我慢して当たり前という風潮は苦しい。妊婦は優先されて然るべきとは決して思わないけれど、“自分で望んで妊娠したんだから自己責任”という言葉を向けられるのは、あまりにも痛いです。」

「妊娠は自己責任」という言葉に苦しむ妊婦たち

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が深刻なものになっている近ごろは誰かの苦しみを自分の辛さと比較して軽んじたり、心無い言葉を向けたりしてしまったりすることも多いもの。無痛分娩や計画分娩を初めから望んでいない人の心には、もしかしたらりえさんの悲鳴は響きづらいかもしれません。しかし、人が抱える様々な苦しみに大小をつけることはできません。

妊婦さんの悩みには「それでも産めるからいいじゃん」や「妊娠は病気じゃない」という厳しい言葉が向けらることもありますが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で思い描いていた「普通」が叶わなくなっているのは理由こそ違えど、みなおなじ。その悲しみは妊娠の有無に関わらず、私たち全員が共感できる想い。だからこそ、「妊娠は自己責任」という冷たい響きの言葉を向けるのではなく、不安に寄り添うこともできるはずです。

「大変な時期だからこそ、お腹の赤ちゃんの力を信じて頑張っていきます。」最後にそう語ってくれた、りえさんのような妊婦さんが少しでも安心して出産に臨めるよう、私たちは他者に対して向ける言葉をもう一度考えていきたいものです。

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