1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

突然停止したグローバル経済、投資家にとっての希望の光とは? <HSBC投信レポート>

LIMO / 2020年4月26日 20時45分

突然停止したグローバル経済、投資家にとっての希望の光とは? <HSBC投信レポート>

突然停止したグローバル経済、投資家にとっての希望の光とは? <HSBC投信レポート>

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な感染拡大と感染を食い止めるための対策を受けて、経済は「突然の停止」となった。深刻な景気後退は不可避と見られ、その影響についても多くの不確実性が存在する。

市場は2008年の世界金融危機同様の事態を織り込んでいるが、今回は危機の性質が非常に異なる。他方で、中期の資産クラスの期待リターンは大幅に改善している。

突然の停止

マクロ経済の観点から見ると、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は、経済見通しに著しい変化をもたらし、経済は「突然の停止」となった。

2020年1-3月期の初期段階では新型ウイルスの感染拡大は一部地域に限られ、隔離政策がサプライチェーンとともに一部の生産能力に影響を及ぼしていた。しかし、パンデミック(世界的流行)が広がった結果、その後の需要は大幅に減退した。

新型ウイルスの感染拡大をめぐり強い不透明感とパニックが発生し、封じ込め策によって社会的交流は抑制され、経済活動が停滞し、家計とビジネスは深刻な「現金のひっ迫」に直面している。悲観的なシナリオは、需要サイド(景況感の悪化)と供給サイド(企業の倒産など)の両方に対して、今後一段と打撃が加わり、「悪循環」をもたらすことを想定している。

(/mwimgs/a/7/-/img_a7cc791e628aac1ab881cab9f0bcee5e101147.jpg)

拡大する(/mwimgs/a/7/-/img_a7cc791e628aac1ab881cab9f0bcee5e101147.jpg)

景気の先行きを占う景気循環指標は、最初に中国で、次に欧米で経済への打撃が非常に大きいことを浮き彫りにした。たとえば、この2週間で米国の新規失業保険申請件数は各週ともに660万件を超え、世界金融危機当時の10倍にも上っている。

セントルイス連銀のエコノミストは、「突然の停止」により米国の失業率が30%に達する恐れがあるとしている。一方、フランス統計局は、目下フランスの経済活動は平時の65%に留まっていると推定している。

エコノミストは多くの先進国の4-6月期の国内総生産(GDP)成長率が2桁のマイナスになると推定している。2020年通年については、世界の経済成長率のコンセンサス予想は現在0.5%と、2月から1.9ポイント低下した。

図表2は、いわゆる「2曲線問題」として世界の政策当局が直面している現在の課題を示したものである。政策当局はまず、新型ウイルス感染の「疫学的曲線を平坦化」し、医療体制を崩壊から守ることに注力している。しかし、厳しい封じ込め策は経済的コストを伴い、第2の問題である「景気後退曲線」を招くことになる。

(/mwimgs/d/b/-/img_dbcb40dc739556563695567e9d1066e082559.jpg)

拡大する(/mwimgs/d/b/-/img_dbcb40dc739556563695567e9d1066e082559.jpg)

総力戦

経済政策で命に関わる危機を解決することはできないものの、「景気後退曲線」を平坦化することは可能である。

過去数週間、政策当局は大胆かつ迅速に行動してきた。米国の政策対応を見てみよう。2008年9月の「リーマンショック」後、米連邦準備制度理事会(FRB)が金利をゼロに引き下げて量的緩和(QE)を開始するまでには2カ月を要し、財政政策の発表は2009年2月にずれこんだ。

今回は当時より大規模な金融・財政政策を2週間で実施している。国際通貨基金(IMF)のウェブサイトに掲載され、日々増加している膨大な「政策トラッカー」は、世界各国の政策支援のスピードと規模を浮き彫りにするものである。

現在の米国の財政刺激策に伴い、財政赤字は世界金融危機当時を上回りGDPの10%に達するとみられている。主要国の間では、財政赤字の対GDP比率が10~20ポイント上昇する可能性がある。金融当局は利下げ、制約のない量的緩和、金融市場と実体経済に的を絞った支援を実施しており、財政政策は金融当局とも「足並みを揃えた」内容となっている。

総合的に判断して、危機発生前に広がっていた政策当局の「弾切れ」という懸念は払しょくされた。代わりに、政策当局は大恐慌や世界金融危機で犯した過ちを教訓に、極めて低いインフレ、原油価格、債券利回りがもたらした「政策余地」を活用している。

今回の危機はリーマンショックの再来か?

史上最速のベアマーケット突入後、多くのアナリストが世界金融危機と今回の危機との類似点を挙げている。これは、景気後退の動向、その後の回復、投資市場の見通しを占う上でカギとなるものだ。

金融市場が景気後退を織り込んだことは明らかである。ディフェンシブな資産クラスに対して経済成長に敏感な資産クラスのロング・ショートと均等ボラティリティ加重バスケットを追跡しているHSBCマーケット・インプライド・グロース指数は、2008~09年以来の水準まで落ち込んでいる(図表3参照)。

(/mwimgs/4/3/-/img_435a96d8f5aac206d65691b21fe4bc7d80652.jpg)

拡大する(/mwimgs/4/3/-/img_435a96d8f5aac206d65691b21fe4bc7d80652.jpg)

資産クラスのバリュエーション(「リスクプレミアムの枠組み」)も同様の結論を示しており、国債利回りまたは当社のキャッシュレートのシナリオのいずれと比べて測定しても、債券と株式のリスクプレミアムの差は拡大し2008年に記録した極端な水準まできている。

現在は悲観論が大勢を占めている。経済成長に関する市場の見通しは、世界金融危機当時並みに落ち込んでいるようだ。この点は重要と思われる。すでに織り込まれている経済シナリオを前提に、投資市場は目先、今後のニュースに反応していくからである。

一体、次は何が来るのだろうか? 未曽有の状況で多数の「未知の未知」(存在するかどうかも知られていない未知の事項)を抱え、マクロ経済の予測は普段以上に困難を極めている。

しかし、「突然の停止」が景気を後退させてからでないと、回復のプロセスは始まらないだろう。

景気後退がどれだけ続くかは、①新型コロナウイルスの感染の拡大、②封じ込め策の実施期間、③景気刺激策が経済システムを支え新型コロナウイルスの二次的効果を食い止めることができるか否か、に左右される。

①、②については、今後の展開を正確に読むことはできない。③については、世界中で迅速かつ大幅な緩和策が実施されなければ、見通しが一段と悪化することは明らかである。

しかし、今回の危機ならではの重要な特徴は、衝撃の質が2008年とは非常に異なる点である。当時は金融危機が金融システムの弱さ、すなわち銀行の脆弱さのほか、多くのエコノミスト、投資家、規制当局が見過ごしていた他の弱さにつけこんだ。それは「内因性の危機」であり、悪循環によって拡大し助長されたものであった。

現在の「外因性の危機」と比較してみよう。世界的な新型ウイルスの感染拡大は衝撃的で経済に大きなダメージを与えそうだが、これは外的要因に由来している。

エコノミストにとって重要な問題は、衝撃がマクロシステムによって吸収され国内で解消できるか、「内因化」して悪化し始めるかである。この点を分けて考える必要がある。内因性の危機は大きな下落を引き起こし回復を遅れさせる。一方、外因性の「突然の停止」からは比較的早期に回復できる。

これまでのところ、外因性のショックは吸収可能で強力な回復が見込めるという兆候が出ている。

第一に、市場のストレスを示す総合指数は急上昇したが、金融危機に相当する水準には達していない(図表4参照)。

第二に、危機が発生するまでGDPレベルであからさまなアンバランスは存在せず、それがシステムの耐久力を高めると多くのアナリストは考えている。

第三に、規制の強化やリスク回避を経て、現在の銀行ははるかに体力がついている。

第四に、高リスクの貸付は現在、ノンバンク、政府系ファンド、その他レバレッジが少なくシステミックリスクを生み出すことが少ない機関によって行われている。

最後に、今回の危機に先立ち、資産価格のバブルは発生しておらず、多くのアセットクラスのバリュエーションは妥当とみられていた。

(/mwimgs/c/9/-/img_c96084f3aaa3d03748323500f3856d5f84572.jpg)

拡大する(/mwimgs/c/9/-/img_c96084f3aaa3d03748323500f3856d5f84572.jpg)

希望の光

現在の急激な景気後退は非常に深刻であり、次に何が起きるかについては「未知の未知」が数多い。しかし、投資家にとって重要な「希望の光」がある。急激な市場の動きは、リスク資産の価格が大幅に変化したことを意味している。そのことは債券、株式、多くのオルタナティブ商品などの戦略の見通しを大いに改善させる。

(/mwimgs/0/b/-/img_0b3acb4d86c06eb0c7ff40431a607c4e112502.jpg)

拡大する(/mwimgs/0/b/-/img_0b3acb4d86c06eb0c7ff40431a607c4e112502.jpg)

HSBCグローバル・アセット・マネジメント チーフ・グローバル・ストラテジスト ジョー・リトル(Joe Little)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください