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新型コロナと闘う看護師、今後は厳しい環境に? 看護学部は急増しているが…

LIMO / 2020年4月24日 20時15分

新型コロナと闘う看護師、今後は厳しい環境に? 看護学部は急増しているが…

新型コロナと闘う看護師、今後は厳しい環境に? 看護学部は急増しているが…

最前線で奮闘する医療関係者に深く感謝

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が拡大する中、自身の感染リスクを負いながらも、我々の日常生活を守るために日々働いてくれている人が大勢います。

それは公共機関や民間企業の区別なく、また老若男女を問わず多岐にわたっています。このような方々に対して、改めて深く感謝するとともに、私たちも感染拡大を抑制するため自覚を持って責任ある行動しなければなりません。

ご存知の通り、COVID-19と最前線で日々闘っているのは医師、看護師、病院スタッフなどの医療関係者であり、本当に頭が下がる思いです。今回はこのうち「看護師」の現状について考えてみましょう。

少し先になりますが、毎年5月12日は「看護の日」です。これは、ナイチンゲールの誕生日に看護及び看護職について考えることを目的に制定されたものです(日本は1991年から)。

なお、看護職と聞くと“看護婦”を思い浮かべる人も多いと思われます。確かに、2001年までは女性の看護職を「看護婦」、男性の看護職を「看護士」としていましたが、2002年に男女とも「看護師」に統一されました。

ただ、英語表記は従来通り「nurse」のままです。“ナース”と聞いて、白衣の天使(女性)をイメージしてしまうのは、少し時代遅れと言っていいでしょう。

さて、ほとんどの人が一度はお世話になったことがある看護師について、厚生労働省と公益社団法人日本看護協会のデータで見てみます。

現在の看護師数は約161万人、年率約+2%で増加中

まず、2018年時点の就業看護師(准看護師、保険師、助産師を含む。以下同)は全国で約161万人います。この看護師数はほぼ一貫して増加しており、直近10年間では年平均+2.0%の増加、人数にすると毎年平均3万人弱の増加です。

特に、男性の看護師の増加が著しく、2008年の68,599人が10年後の2018年には118,284人へと+72%増加しました。

しかも、国家資格である正看護師に限れば約+2.1倍に増えています(44,884人が95,155人へ)。確かに、男性の比率が未だ7%強であることから、圧倒的な“女性職場”なのですが、男性の進出は着実に広がっているようです。

看護師数の増加傾向が示す通り、看護師という職業は人気職種の1つと思われます。その理由として、急速な高齢化社会の進展を背景に、医療現場を支える看護師に対する需要拡大が挙げられます。また、女性にとっては、結婚・出産後も働き続けられる職業の1つであることも大きな魅力なようです。

看護師の資格を取得すれば、活躍のフィールドは将来的にも有望なのでしょう。

新設ラッシュが続く看護学部・看護学科

この人気の高さを裏付けるのが、看護学部・学科を設置した大学(看護系大学含む)の急増です。

ご存知の通り、少子化の影響を受けて多くの大学が学生数の確保に苦心しており、大幅な定員割れも頻発しています。しかし、看護学部・学科の新設ラッシュは止まるところを知らない状況です。

看護学部・学科のある大学数は1991年度にはわずか11校に過ぎませんでしたが、2018年度には263校へと約24倍に増加しています。これは、全国にある大学の約3.3校に1校が看護学部・学科を設置していることを意味します。

しかも、最近では、医療系とは全く関係ない大学(例えば〇〇工業大学)でも看護学部を新設することが珍しくなくなりました。

また、学生数(4年生大学のみ)も1991年度の558人が2018年度には23,670人へと増加しており、今後もさらなる拡大が見込まれています。

学生数の確保に苦しむ大学、言い換えれば、経営難に直面する大学にとって、看護学部・学科は大きな魅力なのです。こうした状況からも、年に一度の国家資格試験に合格する必要があるとはいえ、看護師が人気の高い職業であることが推察されます(注:准看護師は都道府県知事による免許制度)。

今も“看護師は3K職業”に変わりないが…

ここまで読んだ人の中には、“人気職業? 看護師は代表的な3K職業だったはずだが…”と思う方がいるはずです。

そうです、看護師の仕事は3K(きつい、汚い、危険)で表されることが多々あり、「3K」を超えた「9K」という言葉もあるくらいです。実際、夜勤の連続などで体調の維持なども大変なことは想像に難くありません。

しかし、大学がこぞって看護学部を新設するくらいの人気職種ということは、現在の看護師は3Kから解放されたスマートな職業になったのでしょうか。

結論から言うと、今でもそう変わっていない可能性が高いと思われます。少し古いデータですが、日本看護協会の調査によれば、2015年度における看護職の離職率(病院勤務のみ対象)は、常勤が10.9%、新卒が7.8%でした。

新卒の離職率8%未満は、大卒平均の11%前後(厚生労働所のサンプル調査)に比べると低い部類ですが、それでも大変な仕事であることが伺えます。しかも、この数字は、小規模の病院ほど高くなっており、病床数99未満の新卒離職率は約14%に達しています。

それでも、看護師を志す若者が増えてきたことは注目に値しましょう。単純に昔と比較することはできませんが、看護師という職業に「やりがい」を感じ、社会的な使命感に燃える人が増加してきたとも見られます。

厳しさを増す看護師を取り巻く環境

他方、看護師を取り巻く環境は厳しさを増しています。実は、看護師の約85%が勤務する「病院」「診療所」では、医療費削減を念頭に、厚生労働省の旗振りの元で病床数の削減が実施される見込みです。これにより、そう遠くない将来、看護師の余剰時代が来るのでは?とささやかれ始めていました。

しかしながら、今回のCOVID-19による社会混乱、とりわけ、いわゆる“医療崩壊”を食い止めるために奮闘する看護師の存在が大きくクローズアップされたことは確かです。いや、ハッキリ言って、看護師が今以上に不足していれば、とっくの昔に医療崩壊が起きていたでしょう。

COVID-19との闘いが年単位の長期戦になるという見通しが強まる現在、厚労省のみならず、地方自治体を含めた日本全体で看護師を取り巻く環境を改善していく必要があります。COVID-19との闘いが、看護師を始めとする医療関係者の待遇改善に向けた一歩となることを期待します。

【参考資料】
平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/18/dl/gaikyo.pdf#search='%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E5%B8%AB%E3%81%AE%E6%95%B0+%E6%8E%A8%E7%A7%BB')(厚生労働省)
看護統計資料(https://www.nurse.or.jp/home/statistics/index.html)(日本看護協会)
2019年度 看護系大学に係る基礎データ(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/098/gijiroku/__icsFiles/afieldfile/2019/05/27/1417062_4_1.pdf#search='%E7%9C%8B%E8%AD%B7%E5%AD%A6%E9%83%A8%E3%81%AE%E5%AD%A6%E7%94%9F%E6%95%B0+%E6%8E%A8%E7%A7%BB')(文部科学省)
「病床数を最大20万削減 25年政府目標、30万人を自宅に(https://www.nikkei.com/article/DGXLASFS15H75_V10C15A6EE8000/)」(日本経済新聞 2015年6月15日付)

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