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株式市場の歴史に学ぶ - 現在は「外因性」のベアマーケット<HSBC投信レポート>

LIMO / 2020年5月1日 20時20分

株式市場の歴史に学ぶ - 現在は「外因性」のベアマーケット<HSBC投信レポート>

株式市場の歴史に学ぶ - 現在は「外因性」のベアマーケット<HSBC投信レポート>

本稿では、世界の株式のベアマーケットについて歴史的なデータに着目する。衝撃の質に応じて、「外因性」と「内因性」のベアマーケットを区別する。HSBC投信は現在の危機は外因性の危機であると考えている。ただし、「危機の内因化」の兆しを注視することは必要である。

ベアマーケットのベンチマーキング

まず、「正常な」ベアマーケットを理解したいと考える。図表1は、米国とアジアを含めた世界の様々なベアマーケットの長期データを表示したものである。

過去のベアマーケットの下落率は平均40%程度(天井から底までの最大の下落)であり、最安値に達するのはピークの1年半から2年後である。一般的に、回復(ベアマーケット前の水準に戻るまでの期間と定義される)には下落局面の2倍近い期間がかかる傾向がある。

データはこれらの基準を軸としてかなりの幅があることを示している。しかし、そうした基準が有効であり、今回の危機で市場の最安値にすでに達しているとすれば(史上最速のベアマーケット)、統計的に見て今後6カ月で株式市場の迅速な回復が期待できる。

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しかし、ベアマーケットは全て同じわけではない。学術研究にならって、HSBC投信ではベアマーケットを「内因性」と「外因性」の2種類に区別する。

内因性ベアマーケットはマクロシステム内部で生まれ、それを通じて増幅する。最初は(世界金融危機のように)構造的アンバランスや(ITバブルのような)資産バブルが原因だが、増幅、モメンタム、悪循環の存在を特徴としている。

ジョン・ダニエルソン教授が2002年の研究で述べたように、内因性ショックの合計は各部分の和より大きくなる。衝撃が他の市場参加者の行動に影響しそうであれば、衝撃がシステム全体に与える影響は当初の衝撃よりもはるかに大きくなる可能性がある。

一方、外因性のベアマーケットもダメージが大きくなるおそれがあるが、これらは特定の衝撃(石油ショックやウイルスのパンデミックなど)によって引き起こされることが一般的である。マクロ経済や金融システムが原因ではないことから、同じ自己増殖のパターンを生み出すことはない。そのため、衝撃は自己増殖ができず吸収することが可能である。

この理論は、外因性の衝撃から生じるベアマーケットの方が内因性のものより下落率が小さく、早い回復が期待できることを示唆している(図表2参照)。

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HSBC投信は1872年以降の米国のデータを用いて、それぞれのベアマーケットを「内因性」と「外因性」に分類した(図表3参照)。事実、内因性ベアマーケットの下落率は平均して外因性を大幅に上回り、回復までに要する期間も長かった。内因性ベアマーケットは企業の利益に与える影響も大きかった。

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これは米国に限った話ではない。1980年代以降の世界の株式市場で、内因性と外因性のベアマーケットのリターンの明暗が分かれている(図表4参照)。

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新型コロナウイルス危機は内因化するか?

新型コロナウイルスの感染拡大が「外因性」であることは明らかだが、マクロシステムで「内因化し」、より大幅に市場が下落し回復が遅れる恐れがある。問題は、衝撃がつけこもうとするシステミックな弱さが十分にあるかどうかである。

今回は危機の急所は金融セクターではなく実体経済である。いずれにせよ、(上述したように)金融セクターの最も脆弱な部分は2008年当時よりも体力が増している。さらに、金融情勢の総合指数も2008年ほど圧迫されていない。ただし、事態が長引けば、危機が悪化するリスクはある。

むしろ、「危機が内因化」する最大のリスクは経済に根差しており、具体的には、マクロ経済への短期のダメージが中長期の成長のダイナミクスに影響を及ぼし阻害するかどうかが問われている。

エコノミストの間ではこの現象は「ヒステリシス」として知られているが、一般的にはこの現象は労働市場や世界貿易で見受けられる。景気循環に伴い高い失業率が続くと経済の自然失業率も上昇し、中期の経済成長が損なわれることが、典型的な例として挙げられる。

現在の実体経済の問題は、ビジネスと家計を支えることに重点を置いた政策対応を必要としている。多くの国がすでにその対策に着手していることは朗報である。

こうした政策対応はヒステリシスのリスクを抑えることに役立つはずであり、景気が今年後半に速やかに改善し始めた場合は特にそうである。しかし、サプライサイドにすでに何らかのダメージが起きた恐れもある。

たとえば、世界の貿易が激減した結果、貿易のパターンは危機後に変化する可能性が高い。さらに、地域ごとの重要な影響も考えられる。少なくとも過去の例で見ると、欧州経済は景気後退後の長引く経済の傷跡に翻弄されてきた。

当面は新型コロナウイルスの感染拡大を外因性の事象とし、成長に敏感な資産クラスには反発力があるとみなす。ただし、「危機の内因化」リスクを注視していくことが必要である。

HSBCグローバル・アセット・マネジメント チーフ・グローバル・ストラテジスト ジョー・リトル(Joe Little)他

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