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スマホ育児や子どもに動画を見せることは悪?

LIMO / 2020年5月3日 10時0分

スマホ育児や子どもに動画を見せることは悪?

スマホ育児や子どもに動画を見せることは悪?

発達心理学の専門家に聞く

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止の休校措置で、子どもたちが家にいる時間が長くなっています。スマホやタブレットによる動画やテレビ番組などを観る機会がグッと増え、親として「こんなにスマホや動画を見ていて大丈夫なのだろうか」と不安になっている人も多いのではないでしょうか。

電車や飲食店といった公共の場で、子どもを静かにさせるためにパっとスマホを見せる親に対するバッシングも少なくない現代の子育て環境。そもそもスマホや動画を子どもに見せることは悪なのでしょうか。

外出自粛で子どもがデジタルデバイスに触れる機会が多くなる今、親が気になりがちなことについて、発達心理学を専門とする法政大学の渡辺弥生教授に聞きました。

「スマホ育児は子どもに悪影響」という科学的エビデンスはないが……

渡辺教授は発達心理学を専門とし、子育てや親子関係に関する数々の著書も出版。アサヒ飲料が「『アサヒ 十六茶』子育てサポート事業」の一環として、2020年2月28日よりYouTubeに開設した子ども向け見守り動画チャンネル“十六CH”の企画監修の一人です。

なお、この動画チャンネルは、十六茶に含まれる16素材がキャラクターになって登場し、クイズやうた、工作などさまざまな教育につながるストーリーを展開し、子どもたちが楽しく、前向きに学ぶ姿勢や創造性を育むきっかけが作れる内容になっています(参考:アサヒ飲料公式チャンネル(https://www.youtube.com/channel/UC7Q_rnMbrqfDHnEKwuyjjxg))。

――「スマホに子守をさせないで」という日本小児学会のポスターがあります。世間では「スマホ育児は悪影響」「動画を見せる親は子どもを放置している」という考えが根深い気がしますが、発達心理学的にはどうなのでしょうか。

渡辺教授(以下、渡辺):実は医学的にも心理学的にも、スマホ育児が子どもにどのような悪影響を及ぼすかのエビデンスがなく、また研究そのものが難しいのが実情です。

私の考えとしては、スマホやタブレットなどの媒体そのものやコンテンツ内容、また生活環境における親子の関わり方、バランスのいい知識や情報の取り方などをトータルで考えた上でスマホや動画を見せてもいいと思っています。

ただ、どう考えても与え方がおかしかったり、コンテンツが暴力や残忍な描写が多かったり、子どもが何時間も何もできないくらい見させたりといったやり方は、スマホに限らずよくないでしょう。

たとえば昔から絵本で愛されてきたイソップ物語でも、テレビ、スマホ、タブレットなど媒体が変わっても中身は同じ。むしろ動画になることで、読み聞かせよりも情報がわかりやすくなって楽しいと思う子がいるかもしれません。紙芝居や絵本、生身の人間のよさがあるように、動画のほうが面白く学べるものもあると思います。

――子どもに動画を見せてもいい時間についての目安はありますか?

渡辺:視力低下など身体的観点で言えば〇〇時間という具体的な数字があるかもしれませんが、心理学的観点では1日の子どもの自由時間での遊びの種類や、親子のコミュニケーション時間なども加味した相対的なバランスが大事になってきます。

動画コンテンツは一方的なプログラムを受け身の状態で見させられているだけなので、“受動遊び”と言われます。逆に、体の機能や創造性を発達させる外遊びや積み木などは“能動遊び”。

それぞれの遊びに子どもの成長を促す要素があるので、どちらも取り入れて偏りのない遊びをし、また親子のコミュニケーション時間をしっかりとれれば問題ないかと思います。

動画やスマホは「絶対ダメ!」と意固地になる必要はない

――大きなテレビ画面で動画を見せるのと、小さなスマホの画面で動画を見せるのとでは、発達への影響でどのような違いがあるのでしょうか。

渡辺:研究やエビデンスがないのであくまで個人的な見解ですが、たとえば子どもは成長にしたがって、いろいろなものに注意を向けていく力が発達します。

たとえば赤ちゃんを10人集めて「静かにしてね」と言っても静かにならないけれども、5歳くらいになると先生1人が「静かにしてね」と全体を見渡して注意すると自分事として理解し、指示に従えます。これを「共同注意力」と言います。小さなスマホを長時間観続けることで、自然と伸びていく共同注意力に何かしらの影響を及ぼす可能性はあるかもしれません。

また、現実と虚構の違いや現実と動画の中の世界を区別できなくなることが起こりかねない気はしています。私たちは映画やドラマでも、「これはウソの世界で安全だから見て楽しむ」と意識できます。

というのは、現実でいろいろな人間や空間、場所などを五感で経験することで「これはウソだ」「〇〇ごっこをしている」と現実と虚構の区別がわかっていき、あえて虚構を楽しむこともできるようになるからです。

たとえば図鑑しか見ないで外遊びをまったくしなかった子どもが、実際に外に行ったら草むらの茂みで馬を探していた例がありました。図鑑ですらそうなるので、高画質の大画面のテレビで現実では見たことのない自然や動物をずっと観続けることで、現実と虚構を区別するバランスが悪くなることは起こり得るかもしれません。

――バランスが大事ということですね。一方で、「スマホを触らせてもいい」「長時間でなければ動画を見せてもいい」と頭ではわかっていながらも、「でも、子どもにはなるべく見せないほうがいいのでは」と葛藤している親も多いと思います。渡辺教授のお考えを教えてください。

渡辺:まったくデジタルデバイスを触らせない方針の育児も親の考えです。ただ、これだけデジタル社会になっている現代では、まったく触れさせなければアナログ人間になり、スマホやデジタルツールだからこそ学べる知識や情報を得る機会がなくなってしまうでしょう。

動画コンテンツやスマホアプリも、静止画とは違うからこそ学べることはたくさんあります。我々の世代でもたとえばリビングでドラマを観ていたときに、男女関係の描写が出てきて家族で気まずくなることがありましたよね。

そういうものを親子で観たときに、子どもながらにそのときの空気感を理解できたり「人ってこういうことがあるんだよ」と親が補足したりして、子どもに物事を考えさせる機会となりえます。

いろいろな媒体によって親が口で教えるのがなかなか難しいことも、子どもに教えることができる。そういう意味でも「絶対に動画を見せない!」「スマホを触らせない!」と意固地になる必要はないのではないでしょうか。

「これは子どもの発育によくないのでは?」と親が考え、悩むことが大事

――今のコロナ禍では特に、多くの親が「こんなに動画ばかり観させてしまっていいのだろうか」と不安になっていると思います。

渡辺:親がどう子どものことを考えるかが最も重要です。完璧な育児は誰にもわからないので、悩むのは当たり前。むしろ悩まない親のほうが心配です。

「これって、うちの子に大丈夫かしら?」と考えながら、親がチェックした上で媒体や動画を与えること。「一切ダメ」「ずっと見せる」「世間がこうだから自分もこうする」といった偏向的だったり自分の考えがなかったりするほうがリスクは高いと思います。

また、スマホや動画視聴に限らず、意固地な気持ちで育児をすればどんどんイライラし、そのイライラは子どもにも伝染します。子どもが育つ上では親ができるだけ余裕のある状態になることが一番です。子どもにとって親がモデルであり、一番身近な影響力のある大人。その人がイライラして家庭内で機能しないのが最も大きな問題です。

「絶対にスマホを見せないつもりだったのに見せてしまった!」と不安やイライラが募るくらいなら、「ちょっとくらいなら見せていいか」くらいの余裕を持ってほしいと思います。

おわりに

スマホや動画をどのように子どもに与えるかに悩むのは、現代の親が必ずと言っていいほど通る道。特に今は家にいる時間が長くなり、さまざまな動画コンテンツやスマホアプリの無料配信などで子どもがいつも以上にスマホや動画に触れているかもしれません。

不安やイライラが募りそうになる今だからこそ、過度に罪悪感を持たずに上手にスマホや動画と付き合っていくバランス感を身につけたいですね。

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