政府は「納税期限の無条件猶予」で中小企業の資金繰り支援を
LIMO / 2020年5月10日 20時0分
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政府は「納税期限の無条件猶予」で中小企業の資金繰り支援を
中小企業の資金繰り支援は、迅速で手間が不要でコストがかからない「税金と社会保険料の納付期限の1年延長」が最適だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。
最重要な経済対策は中小企業の資金繰り支援
緊急事態宣言が延長されました。自粛要請等々が続くので、飲食店等々の資金繰りは一層厳しくなり、倒産が激増することが懸念されます。
筆者としては、「感染症の専門家の話を聞くのは良いが、経済活動をしている人々の実態も見て、バランスのとれた判断をしてほしい」と考えていましたが、決まったことは仕方ないでしょう。
それならば、現在採用し得る最善の景気対策を早急に実施すべきです。それは、「税と社会保険料の納付期限延長」による中小企業の資金繰り支援です。
国民1人あたり10万円の現金を配布しても、外出できなければ飲食店等の売り上げは増えません。自宅で使うパソコンやゲーム機等々は売れるでしょうが、一番困っている人に届かないのでは、倒産を防ぐことはできません。
飲食店等の損失を減らすことは難しいでしょうが、「資金繰りを支援して倒産を防ぎ、新型コロナ収束後に立ち直ってもらう」ためにできることは最大限やるべきです。
給付に条件をつけると時間がかかる
「収入が減っている人には資金繰りの支援をします」といった対策は、政府も実施しているようです。納税猶予の制度もあるようですが、制度があることを知らない人も多いでしょう。
制度を知っていても申請書の書き方が面倒で、しかも「収入が減っているか否か確認してから給付するので、しばらく時間がかかります」と言われることも多いようです。
そんな問題点を一気に解決するのが「条件を付けずに全員に金を貸す」ことです。しかも、資金を振り込むのではなく、「納付を待ってあげることで実質的に金を貸す」のです。
納付期限を待つだけですから、手間はかかりません。申請書を提出する必要もありませんし、全員に貸すので収入が減っているか否かを調べる必要もありません。
貸すだけで、返してもらうわけですから、財政収支は悪化しません。今年納められるはずだった税金等が来年納められる、というだけのことですから。政府の資金繰りは苦しくなりますが、1年後満期の国債を発行すれば、ゼロ金利で資金調達できるでしょう。
資金繰りに困っていない人にも貸すことになりますが、そのためのコストがかからないならば、何も問題ないでしょう。資金繰りに困っていない人は納付期限前に払って来るかもしれませんが、それも別に良いでしょう。
「納税を1年待ったら、1年後に企業が破産してしまった」というケースもあるでしょうが、それは仕方ないことです。むしろその損失こそ「倒産を恐れず幅広く迅速に資金を貸せた結果であり、財政資金の有効な使い道だ」、と割り切ることにしましょう。
そもそも資金繰り支援の申請書を提出する企業は倒産する可能性も高いわけですが、そうした企業こそが支援を必要としているわけですから、倒産を恐れて支援をしない、というのは本末転倒でしょう。
公共料金の支払いも猶予しよう
企業は、自分が納める法人税等々のほかに、従業員から源泉徴収した所得税や地方税や社会保険料等を国に納付するわけですから、それを全部1年間待ってあげれば、相当の金額になります。
電気料金等々の支払いも、1年間猶予しましょう。電力会社の資金繰りが困らないように、政府が1年間貸してあげれば良いでしょう。
「1年後に倒産して電気料金が払い込まれなかった」という場合もあるでしょうが、それは政府が補填してあげましょう。納税を猶予している間に倒産した場合と考え方は同じですね。
昨年の申告所得の半分まで融資する、という選択肢も
収入が減ったか否かを調べるのは手間がかかりますが、昨年の収入は税務署に提出された納税申告書を見ればわかります。
今年の収入が減っているか否かにかかわらず、その半額までは融資しましょう。そうすれば、今年の収入を調べる必要がないので、迅速な資金繰り支援が行えますから。
貸出金利を3%程度に設定すれば、資金繰りに困っていない人は借りないでしょうから、必要な人だけに必要な支援が届くことになるはずです。
借り手が倒産してしまった場合には貸し倒れとなりますが、これも上記のように倒産を恐れて融資をしないのは本末転倒だと考えましょう。さらに言えば、「過去に納税された法人税を返してあげた」という考え方も可能かもしれません。
赤字の次に黒字になれば納税義務を免除される制度があるのならば、黒字の次に赤字になれば過去の納税分を返してあげる制度があっても良い、というわけですね。まあ、どうせ戻って来ないなら、そう考えることが気休めになる、といった程度の話ですが(笑)。
ここまで、貸すことだけを論じてきましたが、財政赤字拡大を覚悟したうえで、売上が急減した企業等には資金を給付する、ということも併せて考えるべきでしょう。その場合にも、条件に合っているか否かを今判断するのではなく、1年後に納税申告書を見て判断し、条件を満たした企業等には「貸した金の返済を免除」すれば良いのです。
そう考えると、貸し倒れも気にならなくなります。「非常に困っている企業に返済を免除した」と考えれば良いからです。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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