他人事じゃない!高齢ドライバーの事故…「親の免許返納」成功エピソード
LIMO / 2020年6月24日 11時15分
他人事じゃない!高齢ドライバーの事故…「親の免許返納」成功エピソード
高齢者による自動車事故が増え、社会問題にもなっている昨今。ニュースで高齢ドライバー(65歳以上)の事故を目にするたびに「うちの親は大丈夫かな?」「そろそろ返納させるべき?」と感じている人も多いかもしれません。ネガティブに捉えられがちな免許返納ですが、実は返納によって受けられるサービスもたくさんあります。
そこで今回は、免許返納の流れやメリット、エピソードを交えた自主返納の勧め方などをご紹介します。
増え続ける高齢ドライバー
警察庁によると2016年末の運転免許保有者数は約8,221万人。このうち、75歳以上の免許保有者数は約513万人で、75歳以上の約3人に1人は運転免許を持っているということになります(※1)。
高齢化社会の現代では、高齢ドライバーは今後も増加すると予想され、安全支援や運転サポートなどが求められています。
高齢ドライバーの「操作ミス」が死亡事故に
テレビや新聞の報道でも取り上げられることが多い高齢ドライバーによる交通事故。警察庁の調べでも75歳以上の運転者の死亡事故件数は、75歳未満の運転者と比較して免許人口10万人当たりの件数が2倍以上多いと公表されています。
また75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故459件のうち、ハンドルなどの操作ミスによるものが127件で全体の28%。うちハンドルの操作ミスは69件、ブレーキとアクセルの踏み間違いは27件となっています。
「操作ミス」の要因は認知機能の低下
運転歴も長く、ハンドル操作にも慣れているはずの高齢者が「操作ミス」を起こす要因として考えられるのが、高齢による視力、体力、認知機能の低下です。個人差はあるものの、一般的に高齢ドライバーの特性として、
•視力等が弱まることで周囲の状況に関する情報を得にくくなり,判断に適切さを欠くようになること
•反射神経が鈍くなること等によって,とっさの対応が遅れること
•体力の全体的な衰え等から,運転操作が不的確になったり,長時間にわたる運転継続が難しくなったりすること
•運転が自分本位になり,交通環境を客観的に把握することが難しくなること
引用元:「高齢者を取りまく現状」内閣府(https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/gaiyo/features/feature01.html)
が挙げられており、本人に自覚がなくとも運転に危険が伴う確率が高くなっているのです。
高齢ドライバーは免許更新も大変
高齢ドライバーの事故対策として免許更新の際に、70~74歳は「高齢者講習」、75歳以上は記憶力や判断力をチェックする「認知機能検査」が義務付けられています。
この検査で「認知症の恐れがある」と判定された場合、医師の診断を受けることが義務付けられていて、医師から「認知症」などと判断された場合は、免許返納や取り消しを求められることがあります。
自主返納にはメリットもいっぱい
相次ぐ高齢ドライバーの事故や免許更新の複雑さを受け、運転免許を自主的に返納する「自主返納」も増えています。警察庁の統計によると、2019年に免許証を自主返納した75歳以上の人の数は、35万428件と昨年よりも5万8339件増加。調査をはじめた1998年以降最多の記録となっています(※2)。
運転免許証を自主返納すると、身分証明書にもなる運転経歴証明書の交付を受けることができるのですが、実はこの運転経歴証明書にはメリットがいっぱい。タクシー料金の割引やデパートの配送料無料といったサービスのほか、商品の割引や銀行の金利の優遇など多岐にわたるサービスを受けられるのです。
親に自主返納を納得してもらうには?
そうはいっても、長年運転をしている親に「運転を辞めて欲しい」とはなかなか言いづらいもの。親の方も運転に不安を感じていなければ、自分から「免許を返納する」という気にはならないものでしょう。親に免許の自主返納してもらうことに成功した人は、どんな方法で説得したのでしょうか。
「高齢者の交通事故のニュースが報道されるたびに、もし父が事故を起こしたら他人の人生を奪ってしまうこと。事故を起こすことで父自身や私たち家族も今のような生活はできなくなることを冷静に伝え続けました。はじめこそ、『俺には関係ない』と耳を貸さなかったのですが、小さな子供が犠牲になったニュースを見て、やっと『免許を返納する』と納得してくれました」
「私が何度お願いしても免許返納に応じなかった母。私の娘である孫が免許取得したのを機に『これからは私がおばあちゃんの足になるよ!』と言った途端、あっさりと免許返納。孫の力はすごいと思ったものの孫が口先ばかりのため、今では私が母の足になっています。大変だけど、運転して事故を起こされるよりはマシです」
「高齢だからとマンションに移り住んだ両親。マンション前にバス停があるのに、それでも運転を辞めないので、理由を聞いたところ『バスの乗り方がよくわからない』とのこと。それからしばらくは一緒にバスに乗車し、ICカードの使い方や路線図の見方などをレクチャーして、バスに慣れてきたころに免許返納を促しました」
いずれの場合も、一度ではなかなか免許返納には納得してくれなかった様子。交通事故を起こしたらどうなるのかを何度も話すことで、自分のこととして考えてもらえるように促したり、免許を返納した後どのようにサポートするかを具体的に話し合ったりすることで、自主返納に納得してもらうことができたといえそうです。
免許返納をしてほしいと焦ってしまうと、ついつい強い口調で親を責めてしまいがちですが、親の気持ちを理解して不安を取り除いてあげられるよう時間をかけて説得していきましょう。
免許返納には家族のサポートが必要
高齢ドライバーの現状や免許返納のメリット、免許返納の説得方法などをご紹介しました。長年運転してきた高齢ドライバーに免許返納してもらうのは難しいですが、事故の危険性や免許返納のメリットなどを理解してもらい、納得する形で免許返納できるように促していきたいですね。
参考
(※1)「高齢者に係る交通事故防止」(https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h29kou_haku/gaiyo/features/feature01.html)内閣府
(※2)「免許返納が最多、2019年60万人 高齢者事故影響か」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO56558990Z00C20A3CR8000/)日本経済新聞
「高齢者運転免許自主返納サポート協議会加盟企業・団体の特典一覧」(https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/smph/kotsu/jikoboshi/koreisha/shomeisho/support.html)警視庁
「令和元年度(2020年度)運転免許統計」(http://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/menkyo.html)警察庁
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