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コロナ自粛要請の大胆な緩和を望む理由〜倒産・失業急増から始まる悪循環

LIMO / 2020年5月17日 20時0分

コロナ自粛要請の大胆な緩和を望む理由〜倒産・失業急増から始まる悪循環

コロナ自粛要請の大胆な緩和を望む理由〜倒産・失業急増から始まる悪循環

感染症と同様に、不況も放置すると加速度的に悪化するので、「先に感染症を封じ込めてから景気のことは考える」というのは危険だ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

新型コロナの徹底封じ込めを主張する人は加速度的悪化を根拠としている

新型コロナなどの感染症は、放置していると感染者数が1人から2人、4人、8人と加速度的に増えて行きかねません。さらには、感染が一定以上に広がると医療機関のキャパシティを超えて悲惨な状況に陥ります。

そこで、初期段階で徹底的に封じ込めることが望ましいわけで、厳しい外出自粛などが要請されているわけです。

早期に封じ込めることが望ましい、というところまでは、筆者も全く賛成なのですが、「感染症対策を最優先して、景気対策は後からゆっくりやれば良い」という主張には賛成しかねます。

景気に関しても感染症と同様に、放置すると不況が加速度的に深刻化していく、ということが言えますし、ある程度以上に不況が深刻になると金融危機といった悲惨なことが起きかねませんから。

政府にはぜひ、感染症の専門家だけではなく、経済関係者の話もよく聞いて、バランスのとれた判断をお願いしたいと思います。専門家会議に経済の専門家も参加させる、という政府の方針が報道されています。ぜひ、実現してほしいものです。

筆者は感染症に詳しくありませんが、とりあえず新規感染者数は落ち着いているようなので、緊急事態宣言の早期終了、それが難しくても自粛要請の大胆な緩和が望まれます。感染が再拡大したら再度緊急事態宣言を出せば良いのですから、とりあえず経済の回復に取り組んでほしいですね。

倒産と失業は加速度的に増加する

外出自粛となると、飲食店の顧客は劇的に減りますが、普通の店にはある程度の蓄えがありますから、短期間で倒産する店は多くないでしょう。しかし、顧客の激減がある程度続くと蓄えが底を突いて倒産する店が増えてくるはずです。

自粛が長引くと、仕入れ代金を後払いではなく現金払いするように要求されるかも知れません。食材業者としては、心配になるのは自然なことですから。しかし、それによって材料が仕入れられずに倒産に追い込まれる店もあるでしょう。

店を閉めていても、賃料負担や正社員の給料等の負担に耐えきれずに倒産するところが増えてくるでしょう。あるいは、営業再開時に材料仕入れ代金が現金払いできなくて倒産してしまうかもしれませんね。

連鎖倒産も増えそうです。食材が売れない食材納入企業や賃料が入らない貸しビル業者などでは、銀行に借金が返せなくなり、倒産が増えるでしょうから。

失業も増えそうです。店を閉めた飲食店はアルバイトを解雇するでしょうし、倒産してしまえば正社員も失業してしまいます。そうなると、収入がなくなった失業者は消費をしませんから、景気が一層悪化します。

景気が悪化するから失業が増え、失業者が消費しないから景気が悪化する、といった悪循環が起きてしまうわけですね。

外出できないから消費できない、という部分については新型コロナの収束宣言で元に戻るでしょうが、収入がないから消費できない、という分については元には戻らず、悪循環を続けることになるはずです。

飲食店は数が多いので、景気への影響は大きいですが、連鎖倒産や悪循環という点では観光地への悪影響が甚大でしょう。観光産業が壊滅すると、地域の産業が全体として成り立たなくなりかねませんから。

恐ろしいのは金融危機

倒産が一定のレベルに達すると、銀行の決算が赤字に転落し、銀行の自己資本が減ります。銀行には自己資本比率規制が課されているので、これが貸し渋りを招きかねません。

この規制は、大胆に言えば「自己資本の12.5倍までしか貸してはならない」というものなので、自己資本が減ると貸せる金額が減ってしまいかねないからです。

銀行が貸し渋りをすると、自動車ローンが組めずに自動車購入を諦める人が増えて景気が悪化しますし、材料を仕入れる資金が借りられずに倒産してしまう中小企業が出てくるかもしれません。

そうなると、景気が悪化して、不良債権が増えて、銀行の貸し渋りが増えて、倒産が増えて、銀行の赤字が増えて、といった悪循環に陥ってしまいます。

最悪なのは、銀行が倒産することでしょう。一般企業の倒産とは比較にならないほど深刻なダメージを日本経済に与えますから。もっとも、さすがに政府日銀が全力で倒産を回避すると強く期待していますが。

金融は経済の血液だ、と言われています。普段は目立ちませんが、金融危機が起きると心臓病が起きた人体のように、様々な問題が起きてくるわけですね。

政府の支援策が完璧ならば感染症対策優先で良いのだが

仮に、政府が完璧な倒産防止支援策や失業防止支援策を策定し、実行しているのであれば、景気のことは心配せずに感染症対策を優先して良いと思います。

もしかすると、医療関係者の中にはそうした理解をしている人も多いのかもしれませんね。理屈で考えれば、超大型補正予算なども成立しているので、景気対策は万全に見えますから。

しかし、現実は理屈通りではありません。様々な支援策が策定されていますが、そうした情報が困っている人にきちんと届いているようには思われません。政府は広報が上手くありませんから、読みにくい行政文書を役所のホームページに貼り付けるだけで終わっている場合もありそうですし。

また、仮に情報が届いたとしても、申請手続きが面倒だったり、申請を受け付けてから本当に支援が必要か否か審査するのに時間がかかったりすることもあるでしょう。その間に倒産してしまう中小企業もありそうです。

筆者としては、そうしたことがないように「すべての人に、納税と社会保険料納付の期限を1年待つ」という政策を提言しているのですが、今のところ超少数説にとどまっているようです(笑)。

参考:『政府は「納税期限の無条件猶予」で中小企業の資金繰り支援を(https://limo.media/articles/-/17201)』

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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