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日本の「スマートシティ戦略」は世界に受け入れられるのか

LIMO / 2020年5月15日 19時45分

日本の「スマートシティ戦略」は世界に受け入れられるのか

日本の「スマートシティ戦略」は世界に受け入れられるのか

ロボットがゴミを分別してくれたら、渋滞がなくなったら、車が自動で行きたいところへ連れていってくれたら――

そんな痒い所に手が届くようなモノやサービスがあったらどんなに生活が楽になることか。それを実現させようと世界中で「スマートシティ化」が加速されています。 

しかし問題はプライバシーがどこまで守られるかということです。

オンライン上のみならず、実生活の行動を監視して人々の情報を収集蓄積し、それで利益を追求しようとするグーグルとその姉妹会社のSurveillance Capitalism(監視資本主義)思考による計画は、失敗に終わったようです。

高まる「スマートシティ」への関心

最近スマートシティに関する話題が増えているようです。

2020年3月にはトヨタとNTTがスマートシティ事業の業務資本提携に合意したことを公表しました。スマートシティの基盤を共同で構築するということです。

すでにトヨタは、2020年1月にラスベガスで開催されたCES 2020という見本市でスマートシティ実証都市、「Woven City(ウーブン・シティ)」(静岡県裾野市)の建設計画を発表し、トヨタらしい斬新なアイデアで注目を集めています(※1)。

トヨタx NTTのプロジェクトはまずは、この「Woven City」と東京の品川駅前NTT街区で実装していくということです。

また、4月17日には、国土交通省が「スマートシティの社会実装をより一層加速するため、全国の牽引役となる先駆的なプロジェクトの追加公募」を発表しています(※2)。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により変わりゆく人々のニーズや行動に合うスマートシティが必要となっているのではないでしょうか。

一方、先日5月7日、グーグルの姉妹会社サイドウォーク・ラボは、カナダのトロント市の一部のエリアをまさに夢の未来都市にする「スマートシティプロジェクト」を数年前から計画し話題となっていましたが、断念することを発表しました。

顔認証で街中「顔パス」

現実的には、スマートシティは少しずつ生活に入り込んできています。身近で言えば街頭カメラが挙げられます。いつの間にか街中のあちこちに設置され、住民の安全を見守っています。これもスマートシティの1つです。

今後は顔認証システムがますます取り入れられていくでしょう。すでにオフィスの入退時に利用され、顔認証勤怠管理をしている企業も増えています。

2020年2月には、茨城県つくば市の「つくばスマートシティ協議会」の取り組みの1つとして顔認証でバスの乗降ができるという実証実験が実施されました(※3)。

近い未来、文字通り「顔パス」で公共施設や乗り物など、手ぶらで何でも用事が済みそうで便利です。

また企業レベルで、COVID-19の感染拡大防止に向けた赤外線サーモグラフィカメラの設置も急増しているようです。建物の入り口でカメラを通して自動的に検温できるようです。これも新しいノーマルとなり、スマートシティの一部となっていくのではないでしょうか。

プライバシー保護と監視資本主義の失敗

基本的にスマートシティは、人々の行動や情報、様々な現象データをインターネットを介して収集蓄積し、それを地域の課題解決や効率化のために活用していきます。

しかし、蓄積された個人情報を自治体が街の効率化のために使うだけではなく、企業がビジネスのために使うとなると、個人のプライバシーがどこまで守られるのかという懸念は拭えません。

前出のサイドウォーク・ラボがトロントのプロジェクトを断念せざるを得なかったのは、この「プライバシーへの配慮」が足りなかったからだろうといわれています。

同社CEOのダン・ドクトルフ氏は断念する理由として、COVID-19パンデミックによる経済的な問題を挙げています。

しかし、ニューヨーク・タイムズ(※4)によれば、サイドウォーク・ラボの計画は「初めからしくじっていた」というのです。これはそもそも、「監視資本主義(surveillance capitalism)の失敗だ」と、評論家たちは述べているようです。

確かにサイドウォーク・ラボは、第三者の企業などが住民の行動履歴や個人情報にアクセスできるように計画していました。これにより、住民を敵に回し計画が難航したのです。

その点、トヨタと NTTは「(データの使い方は)使ってもらう人が幸せになるやり方がいい」(豊田社長)として、「収集データはNTTとトヨタが保有する形はとらない。あくまでデータを提供する市民や都市に帰属するとの位置づけだ(※5)」と、しています。

NTTは2018年、このようなデータにこだわらない姿勢から、米ラスベガス市から信頼を得てスマートシティ推進のパートナーとして選ばれています。

日本は、スマートシティの取り組みが出遅れているという意見もあるようですが、NTTをはじめ日本企業の技術や戦略は世界中のスマートシティ開発において既に高い評価を得ています。

日本の技術力と日本ならではの気配りを活かし、パンデミックでの経験を考慮した新しい時代に合った、誰もが安心して暮らせるスマートシティの実現に期待が高まります。

【参考】
(※1)「トヨタ、「コネクティッド・シティ」プロジェクトをCESで発表」(https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/31170943.html)TOYOTA
(※2)「スマートシティの社会実装を加速!全国のスマートシティを牽引するモデルプロジェクトを追加公募します」(https://www.mlit.go.jp/report/press/toshi07_hh_000153.html)国土交通省
(※3)「つくばスマートシティ協議会で顔認証等によるバスの乗降車の実証実験を実施しました」(https://www.pref.ibaraki.jp/sangyo/kagaku/kenkyu/20200214.html)茨城県
(※4)“Google Sibling Abandons Ambitious City of the Future in Toronto”(https://www.nytimes.com/2020/05/07/world/americas/google-toronto-sidewalk-labs-abandoned.html)The NewYork Times
(※5)「トヨタとNTTが提携、スマート都市基盤を共同開発」(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57173340U0A320C2TJ2000/)日本経済新聞

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