「子どもをほめてはいけない」ってどういうこと? 上下関係から横の関係へ
LIMO / 2020年5月18日 10時0分
「子どもをほめてはいけない」ってどういうこと? 上下関係から横の関係へ
ベストセラーとなった『嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え 』。本書では子育てにおいて、「叱ってはいけない、ほめてもいけない」と教えています。
叱ってはいけない意味は分かる一方で、理解するのも、実践するのも難しいのが「ほめてもいけない」こと。子どもが何か一つできると、自然と喜びの感情が湧き上がり、満面の笑みが出て、「すごいね!」と拍手をしたり、頭をなでてほめるーーこのような反応は自然と出るものです。
子どもをほめることはごく自然な反応ゆえ、ガマンするのも難しいもの。3児を育てる筆者も、当初「ほめてはいけない」という考えは受け入れがたいものでした。
親の言いなりの子どもに育てないために
アドラー心理学の他の部分には賛同するものの、「子どもをほめてはいけない」部分に関しては疑問が残っていた筆者。しかし読み解いていくと、アドラーは、ほめるという行為は「能力のある人が、能力のない人に下す評価」であると指摘するのです。
ほめる行為の背景には「上下関係」があると指摘するアドラー。これは大人が大人をほめるケースを想像すると分かりやすいでしょう。
たとえば仕事で成果を上げたとき、上司に「よくやった」とほめられるのはすんなりと受け入れられるものの、同僚や後輩に「よくやりましたね」とほめられると違和感を感じる、という方もいるのでは。それは、アドラーが言うように上下関係を伴うからでしょう。
ほめる行為の背景にあるのは、「相手を操作しよう」という目的。なるほど、親がほめると小さな子は喜んで同じことを繰り返し「できたよ」とアピールしたり、もっとほめてもらおうと頑張ります。
子どもが段々と成長すると、「親にほめられたいから勉強しよう」「親にほめられるために進路を選ぼう」と考えることは、特に日本では多いかもしれません。子どもをほめることには、常に親の顔色を伺い、親の意見を求め、親にほめられる人生を歩むよう育ててしまうというリスクがあったのです。
自分で考え、自分で納得した人生を歩んでもらうために
親の言いなりの人生を歩むのではなく、子ども自身の頭で考え、自分が納得できる人生を歩んでもらうために、親ができることは何でしょうか。
アドラーは、ほめることで生じる上下関係のような「縦の関係」ではなく、あらゆる人間関係が「横の関係」になるよう勧めます。
そのためにも必要なのは、「介入」ではなく「援助」。親が子どもの代わりとなり、手とり足取り指示をしたり、何でもやってあげたり、「勉強しなさい!」と叱って管理したり押し付けるのではなく、子どもが自力でできるようになるための援助をするのです。
たとえば自転車の練習をするとき、転んだ子どもを叱ったり、上手くいったときのみほめたり、「小学生になったら自転車に乗れないと困るよ」といった言葉がけをするとどうでしょうか。
子どもは「乗れないと困るらしいし、はずかしい」「乗れるようになるべきだから練習する」といった、周囲を気にする気持ちを持ってしまうでしょう。
代わりに、転んでも叱らず、子どもと同じ目線に立ち、改善策を一緒に考えてみます。改善策を考えると、子ども自身が自転車の面白さを感じるようにもなるでしょう。親が一緒に乗ってみても良いものです。
また、友達が乗っているのを見たり、自転車に乗れると便利だという気付きが重なると、だんだんと乗ってみたいという気持ちも湧くでしょう。
横の関係になって、一緒に楽しんだり、考えてみる。子どもと横の関係になれば、叱ることはもちろん、ほめることも減るというわけです。
子どもが「ありのままでいい」と思えるフレーズは?
それでも、ほめたい気持ちは湧き上がるものですよね。ほめたいときに選ぶ言葉も、「横の関係」を意識すると分かりやすいでしょう。湧き上がる喜びの気持ちはそのままに、子どもと横の関係になり、同じ立場で声をかけるのです。
たとえば子どもが靴が履けるようになったら、「ママ嬉しい」と一緒に喜びます。子どもがお手伝いをしてくれたら、「助かったよ。ありがとう」と感謝します。子どもが自分の考えを話したら、「なるほど」と感心したり、質問して子どもの考えを深堀りするのも良いでしょう。
横の関係で声をかけてもらった子どもは、「ありのままの自分で大丈夫」と思えるでしょう。「できた・できない」「すごい・すごくない」「えらい・えらくない」という判断ではなく、ありのままの自分がしたことで、誰かが喜んでくれたことが自信に繋がります。
子どもと横の関係を築くためには、それまでの先入観を考え直すことと、ある程度の時間や試行錯誤が必要です。しかし横の関係で声がけをするようになると、子どもが嬉しそうに自分の考えを話すのを聞いたり、自分のことを誇らしく思っているような笑顔を見ることができるようになるものです。
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