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「子どもの大学卒業時に貯蓄ゼロ」の恐怖。老後資金と教育資金、合わせていくら必要?

LIMO / 2020年5月17日 20時0分

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「子どもの大学卒業時に貯蓄ゼロ」の恐怖。老後資金と教育資金、合わせていくら必要?

最近は、子ども1人あたりにかける教育費が高くなっているという話を耳にします。その一方で、世帯収入はそう簡単には上がりません。親世代は子どもたちの教育費を用意するのと同時に、自分たちの老後資金を貯めることも求められます。

人生100年時代と言われ、これまで以上に老後の蓄えが必要になる中、子どもの教育にかけるお金とのバランスも気になるところです。老後資金と教育費の現状を見た上で、ある夫婦に聞いた話を紹介します。

老後資金と教育費にはいくら必要なのか

まずは、子どもの教育費用と老後資金それぞれに、いくらくらい必要になるのかを見ておきましょう。

老後資金の目安

総務省統計局が公表している「家計調査報告(家計収支編)2019年」によると、「高齢夫婦無職世帯」(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の1カ月あたり平均の消費支出・非消費支出は270,929円、実収入は237,659円、うち社会保障給付は平均216,910円となっており、不足分は33,270円となっています。

もし60歳で定年退職して65歳から年金を受け取るとしたら、その5年間は社会保障給付による収入はありません。一方、上記の消費に関する平均額で計算すると、この5年間の支出は27.1万円×12カ月×5年間=1,626万円となります。

また、65歳の年金受給開始後から2018年の平均寿命である男性81歳、女性87歳(厚生労働省 簡易生命表による)まで生きるとすると、男性は16年間、女性は22年間になります。そのため、先述の1カ月あたり不足分をもとに計算すると、

男性 33,270円×12カ月×16年間≒639万円
女性 33,270円×12カ月×22年間≒878万円

となり、夫婦ともに平均寿命まで生きるとしたら639万円+878万円=1,517万円が必要となります。

つまり、60歳定年で65歳まで社会保障給付がなく収入がゼロという場合に必要な1,626万円と、65歳から夫婦が平均寿命まで生きた場合の1,517万円を足して、3,143万円程度が必要となる計算になります。

定年年齢や年金の受給開始年齢など、さまざまな条件によって必要金額は変わってきますので参考値でしかありませんが、世間一般で言われる夫婦で3,000万円(1人の場合2000万円)というのは、こうした計算によるとある程度妥当なものと言えそうです。

ただ、高齢になると病気やケガも増えますし、生活水準をどれだけ下げるかにもよりますので、3,000万円では少し心もとないと感じられる方もいるでしょう。

教育費の目安

教育費については、文部科学省の「平成30年度 子供の学習費調査」(小学校〜高等学校)と日本政策金融公庫の「令和元年度 教育費負担の実態調査」(大学)によると、1年間の必要額は以下のようになります。

小学校の学習費総額
公立:32万1,281円 私立:159万8,691円
⇒6年間で公立は約193万円、私立は約959万円

中学校の学習費総額
公立:48万8,397円 私立:140万6,433円
⇒3年間で公立は約147万円、私立は約422万円

高等学校(全日制)の学習費総額
公立:45万7,380円 私立:96万9,911円
⇒3年間で公立は約137万円、私立は約291万円

大学にかかる費用
【入学費※1】 国・公立:71.4万円 私立文系:86.6万円 私立理系:84.5万円
【在学費(1年間)※2】 国公立:107.0万円 私立文系:157.6万円 私立理系:184.3万円
⇒4年間(入学費含む)で国公立は約499万円、私立文系は約717万円、私立理系は821.2万円

※1 受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金の合計
※2 学校教育費 [授業料、通学費、教科書代など] 、家庭教育費 [塾の月謝、おけいこごとの費用など] の合計(令和元年度における見込み額)

上記の「学習費総額」には学校教育費のほかに給食代や学校外の活動費用も含まれているため、これもあくまで参考値ですが、小学校から大学まですべて公立の場合は1人あたり約1,000万円、すべて私立の場合は2,500万円ほど。となると、最大では夫婦の老後資金3,000万円と教育資金2,500万円で約5,500万円ということになります。

皆さんは、この金額をどう捉えますか?

子どもの教育費で無理をした家庭は…

実際に教育資金で頑張りすぎて老後資金に不安を感じているという、東海地方に住むAさん夫婦に話を聞きました。

Aさん夫婦には年子のお子さんが2人。2人ともすでに社会人として働いており、Aさん自身はパートの事務員として週4日働き、Aさんの夫は建設業勤務で世帯収入は600万円ほどだと言います。

Aさんによると、「子どもは2人とも大学進学で東京へ出た。娘は私立文系、息子は私立理系だが、仕送りを十分できたとは言えない。学費はそれぞれ自分で支払ってもらうことを大学受験前に約束していたので、奨学金とアルバイト代でまかなってもらっていた」のだそう。

「仕送りの中でも東京の家賃を2人分というのは予想以上にキツかった。途中から娘が家賃を自分のアルバイト代で補ってくれるようになったが、理系の息子は実験や実習が多くてアルバイトの時間があまり取れなかった様子。学資保険は入学金でなくなったし、毎月家計は火の車。夫と2人で節約生活を続けた」と話します。

「結果として、2人が大学を卒業する頃に貯蓄はほぼゼロになった。またここから老後資金のために貯金し直さなければいけないのは大変。今後は年金が減るかもしれないと思うと、どうしたらいいのか悩むし怖い。娘はそんな私たち夫婦の懐具合を察しているのか、『仕送りが必要になったら言ってね』と言ってくる」とため息をつくAさん。

「私たちももう50代半ば。夫の定年まであと10年もないし、これから収入が増える見込みもなく、退職金も出るのかどうか。できるだけ迷惑はかけたくないけれど、娘や息子に頼らなければならなくなるんじゃないかと不安…」と教えてくれました。

おわりに

Aさん夫婦の話のように、50代になってから老後資金を貯め始めるとなるとたしかに不安を感じるでしょう。教育費については経済力に合わせた選択をし、子どもともよく話し合うことが必要かもしれません。

参考資料
「家計調査報告(家計収支編)2019年(https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2019.pdf)」(総務省統計局)
「平成30年 簡易生命表(https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life18/dl/life18-02.pdf)」(厚生労働省)
「平成30年度 子供の学習費調査(https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_01.pdf)」(文部科学省)
「令和元年度 教育費負担の実態調査結果(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf)」(日本政策金融公庫)

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