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雇用調整助成金の問題点と「みなし失業」「休業者給付金」を税理士が解説【新型コロナ特例】

LIMO / 2020年5月19日 18時0分

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雇用調整助成金の問題点と「みなし失業」「休業者給付金」を税理士が解説【新型コロナ特例】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は日々の生活だけでなく、事業者の経営にも大きく影響を及ぼしています。特に、資金繰りや雇用の維持のために事業者は多くの手続きを行わざるをえなくなりました。

この状況の中、雇用維持のために主な役割を担っているのが雇用調整助成金です。しかし制度設計に始まり、手続きの煩雑さなど多くの問題が発生しているのも事実です。今回はこの雇用調整助成金の概要と諸問題の要点をまとめてみました(2020年5月15日時点の情報に基づく)。

申請がとにかく複雑な雇用調整助成金

新型コロナウイルスによる休業で注目を集めることになったのが、「雇用調整助成金」です。

そもそも、事業主の都合で従業員を休ませた場合には、「休業手当」といって、直近3か月の平均給与の60%以上を支払わなければならないという制度があります。新型コロナによる休業が事業主都合なのかという議論もあります。ただ、ここは深く突っ込まず、休業手当を支払わなければならない前提で話を進めます。

この雇用調整助成金、いろいろなところで話が出ているので、既にご存じの人も多いでしょうが、とにかく申請が複雑です。

受給するための要件の緩和も数回に分けて行われていますが、それでも複雑です。要件が緩和されるごとに申請様式も変更となるので、かなり現場も振り回されています。具体的な申請書類は厚生労働省のページを見れば載っていますが、普段から慣れている人でなければ、見ただけでイヤになってしまうかもしれません。

1日当たりの受給額に限度がある

さらに、ざっくりと1年間の給与の平均値から受給額を計算するのですが、1日当たり8,330円が限度ということになっています。法律上の最低限度である給与の60%を超えて支給した場合、超えた部分は100%助成するということになりましたが、それでもこの上限は残っています。

月22日勤務で、月給30万円の人であれば、会社が100%補償したとして、会社が受給できる助成金は22日×8,330円=183,260円が限度ということです。会社の負担で休業中に研修を行えば多少は上乗せ給付されますが、それでも100%補償してもらえるということにはならないのです。

今後は、この8,330円という上限を15,000円まで上げるという案もあります。しかし、上限を上げたところで、申請件数が大きく伸びるかどうかは不明です。そもそも書類を作る過程で上限に達しているかどうか分かるわけですから、受給額の多寡が申請するかどうかの意思決定の主たる要素でもないと思うのですが。

こうした申請の複雑さから、助成金の専門家である社労士に申請を依頼する方法もありますが、対応できない社労士も多くいます。そもそも実務的に対応できない場合や、受給額が少なく報酬が取りにくいなどという理由もあります。自治体によっては社労士への費用を補助するという制度を取っているところもあります。

アルバイトなども対象にしたことによる問題

さらに、現場の混乱を招いているのが、アルバイトなどの雇用保険に加入していない人も雇用調整助成金の対象としたことです。

雇用調整助成金は財源が雇用保険料なので、雇用保険に加入していない人(扶養の範囲内で働くパートの方や学生アルバイトの方など)はもともと対象外でしたが、今回のコロナウィルスでの特例では、これらの方への休業手当も助成対象となったのです。

そのため、これまで雇用していない人に給与を払ったことにして雇用調整助成金を受給できないか、といった相談まで社労士のところに寄せられる始末です。

こうしてまとめてみると、今回の新型コロナウイルスにおける雇用周りの諸問題を、この雇用調整助成金の枠組みで解決しようとしたこと自体に無理があるということを改めて思い知らされます。

みなし失業や休業者給付金も検討中

雇用調整助成金は、まず事業者が従業員に休業手当を支払って、その後、国からその一部が助成されるという制度です。

まずは事業者の給与(=休業手当)の支払いが先にきます。そもそも売上が落ち込んで、家賃などの固定費が出ていく中、さらに従業員の休業手当を支払わないといけないというのは、事業者にとっては非常に大きな負担です。しかし、雇用は維持しておかないと、状況が改善した後の事業活動に支障をきたすのも事実。

ある会社で、一度解雇して失業手当を受給し、後に再雇用しようとしているところもありましたが、結局再雇用が予定されているということで失業手当の対象にはならないということになりました(当然の話ですが)。

みなし失業

こんな状況の中、検討が行われているのがみなし失業の制度です。

失業してはいないけれど、失業したものとみなして失業手当を受給できる制度です。東日本大震災のときに行われた制度ですが、新型コロナウイルスにも適用しようというわけです。

これなら事業者が休業手当を支払う必要もなくなりますし、難しい書類を準備する負担もなくなります。確かに新型コロナウイルスは事業者からしたら天災のようなもので、いくら雇用の維持とはいえ、売上減少の中で休業手当を支払うという負担もなくなります。

休業者給付金

もう一つが休業者給付金で、休業手当を受け取れない人向けの制度です。

先ほど、アルバイトなども雇用調整助成金の対象となるということを書きましたが、アルバイトなどは業務の繁閑に合わせて労働量を調整する役割が強いものです。だからこそ時給制が多いのです。

法律上は支払い義務があるとはいえ、現場の感覚では休業手当の対象にすることに異論が出てもおかしくありません。そのため、休業手当を受給できない人向けに検討されているのが休業者給付金です。休業者自らが申請するということになっているため、事業者の負担はないということになります。

おわりに

営業自粛がかかっている現場では、資金繰りなどやるべきことが満載です。また、休業手当を支払うように言われても、支払いの原資がないと支払えません。体力がある会社は良いですが、1、2か月の営業資金しかない事業者も多くあります。

経営者はあらゆる責任を負わなければならないといってしまえばそこまでですが、中小企業の平均的な財務状況や申請に割ける労力などを考慮して、どこまで事業者の負担(金銭的な面や労力の面で)で行うのかということについてもっと検討すれば、雇用周りの負担は国が引き受けるなどの選択肢もあったのかもしれません。

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