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コロナ倒産急増で知っておきたい「未払賃金の立替払制度」

LIMO / 2020年5月19日 21時15分

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コロナ倒産急増で知っておきたい「未払賃金の立替払制度」

5月14日、政府は、東京や大阪などをのぞいた39県について、新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づいて発出された緊急事態宣言を正式に解除しました。各自治体による営業自粛要請も緩和の方向へ徐々に舵が切られてはいますが、一度打撃を受けた経済活動が“ニューノーマル”の下で元の水準に戻るには、相当の時間が必要となるでしょう。

東京商工リサーチの調査によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連して経営破綻した企業は、5月18日午後5時時点で156件。事業の継続をあきらめ廃業を決める零細企業や個人商店なども急増しています。

勤務先が倒産し、給料をもらえないまま退職になったとき、未払賃金の80%を国が立替えて支払う「未払賃金の立替制度」があるのをご存じですか。すでに厚生労働省は、「コロナ倒産」の急増を懸念し、4月30日に成立した今年度補正予算で立替えのための原資として21億円の積み増しを行っています。

今回は、この「未払賃金の立替制度」についてみていきます。

「未払賃金の立替払制度」って?

通常、賃金に未払いが生じた場合、まず労働者が事業主へ支払い請求を行います。それでも未払いのままであれば、労働基準監督署へ申告する、という流れが一般的です。

今回取り上げる「未払賃金の立替払制度」は、企業が倒産(事実上の倒産も含む)した場合、賃金未払いのまま退職した労働者に対し、事業主に代わって国が未払賃金の一部を立替払いするものです。独立行政法人労働者健康安全機構(https://www.johas.go.jp/)が実施しています。

立替払いを行った場合には、機構が「立替払いに相当する額について、労働者の承諾を得て賃金請求権を代位取得し、事業主に求償(立替え分の請求)する」というしくみになっています。

同機構によると、1976年の制度創設から2019年3月までに、約124万人に対して総額約5198億円の立替払いが行われています。ちなみに、2018年度における立替払支給者数は2万3554人、立替払額は96億円です(※1)。

制度の概要

では、同機構のリーフレット「未払賃金の立替払制度の概要(https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/tatekae_seido_leaflet-2.pdf)」などを参考に、この制度のあらましについてみていきます。

事業主に関する要件

     労災保険の適用事業で、1年以上事業を実施していたこと(法人・個人は問わない)

    倒産したこと

法律上の倒産

破産手続開始の決定(破産法)
特別清算手続開始の命令(会社法)
再生手続開始の決定(民事再生法)
更生手続開始の決定(会社更生法)

事実上の倒産(中小企業事業主のみ)

事業活動の停止、再開の見込みなし、賃金支払能力なし(労働基準監督署長の認定)

※ 中小企業事業主とは、以下のいずれかに該当する事業主をさします。
資本金の額等が3億円以下または労働者数が300人以下で、以下の業種以外の業種
・資本金の額等が1億円以下または労働者数が100人以下の卸売業
・資本金の額等が5千万円以下または労働者数が100人以下のサービス業
・資本金の額等が5千万円以下または労働者数が50人以下の小売業

労働者に関する要件

     破産手続開始等の申立日(事実上の倒産の認定申請日)の6か月前の日から2年の間に退職していること

    未払賃金額等について、法律上の倒産の場合には、破産管財人等の証明(事実上の倒産の場合には、労働基準監督署長が確認)があること

    破産手続開始等の決定(事実上の倒産の認定)の日の翌日から2年以内に未払賃金の立替払請求書を労働者健康安全機構に提出すること

立替払いの対象となる賃金

対象・・・退職日の6か月前から立替払請求日の前日までに支払期日が到来している未払賃金(定期賃金と退職金。ただし、総額2万円未満のときは対象外)

対象外・・・賞与、役員報酬など

(注)退職後6か月以内に破産手続開始の申立てまたは労働基準監督署長への認定申請がなされなかった場合は、立替払いの対象とはなりません。

 立替払いされる金額

未払賃金総額の80%(年齢により上限額あり)

退職日における年齢:45歳以上

未払賃金総額の限度額……370万円
立替払いの上限額……296万円(370万円×0.8)

退職日における年齢:30歳以上45歳未満

未払賃金総額の限度額……220万円
立替払いの上限額……176万円(220万円×0.8)

退職日における年齢:30歳未満

未払賃金総額の限度額……110万円
立替払いの上限額……88万円(110万円×0.8)

例)退職日に35歳で未払賃金が200万円の場合・・・立替払額160万円
退職日に35歳で未払賃金が300万円の場合・・・立替払額176万円

申請は「倒産の翌日から2年以内」に

先にも述べたように、立替払いの対象となるのは、裁判所への破産手続き開始等の申立て日(法律上の倒産の場合)、もしくは労働基準監督署長への認定申請日(事実上の倒産の場合)の6か月前の日から2年の間に退職した場合のみです。

また、労働者健康安全機構への「未払賃金の立替払請求書」提出期限は、破産手続き決定日(法律上の倒産の場合)または労働基準監督署長の認定日(事実上の倒産の場合)の翌日から2年以内となっています。会社が倒産し、未払賃金が発生した場合は、できるだけすみやかに申請手続きを行いましょう。

労働者健康安全機構ホームページの「未払賃金立替払に関するQ&A(https://www.johas.go.jp/tabid/692/Default.aspx)」では、制度に関して寄せられたさまざまな疑問に対する、詳細な回答が掲載されていますので、参考にしていただければと思います。なお、未払賃金の立替払制度についての問い合わせ先は、最寄りの労働基準監督署、もしくは「労働者健康安全機構 立替払相談コーナー※」です。

※5月18日現在、COVID-19緊急事態宣言をうけ、相談は電話での対応のみとなっています。相談方法などは今後変化する可能性がありますのでご注意ください。

【参考】
「『新型コロナウイルス』関連倒産状況【5月18日17:00現在】(https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20200518_01.html)」株式会社東京商工リサーチ
「『未払賃金の立替払制度』の御案内 ─賃金の支払の確保等に関する法律に基づく制度─(https://jsite.mhlw.go.jp/hokkaido-roudoukyoku/content/contents/000635234.pdf)」厚生労働省
「令和2年度 厚生労働省補正予算案(参考資料)(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000621170.pdf)」厚生労働省
※1「未払賃金の立替払事業(https://www.johas.go.jp/tabid/417/Default.aspx)」独立行政法人労働者健康安全機構
「未払賃金の立替払制度の概要(https://www.johas.go.jp/Portals/0/data0/kinrosyashien/pdf/tatekae_seido_leaflet-2.pdf)」独立行政法人労働者健康安全機構
「未払賃金立替払に関するQ&A(https://www.johas.go.jp/tabid/692/Default.aspx)」独立行政法人労働者健康安全機構

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