投資リターン計測法:運用効率が分かる「シャープレシオ」をわかりやすく解説
LIMO / 2020年5月23日 20時30分
投資リターン計測法:運用効率が分かる「シャープレシオ」をわかりやすく解説
何らかの投資を始めようという方は、まず株式投資が頭に浮かぶのではないでしょうか。たとえば、トヨタとかソニーの個別株式を買ってみるというアプローチです。うまく行けば高いリターンが得られる一方で、下手すると投資額が半分になってもおかしくありません。
そこまでのリスクを取れない方は、株式や債券等をまとめて運用する投資信託に投資することを考えるのではないでしょうか。オンライン証券では投資信託が100円で買えるところもありますしね。
ところで、投資は結果的に儲かればいいのですが、個別銘柄にせよ投資信託にせよ同じものは一つとしてありません。ですから、どの銘柄を選んだらよいか迷ってしまうのは不思議ではありません。
個別銘柄なら日本の上場企業社数は3,713(日本取引所、2020年5月1日現在)、公募投資信託なら5,997本(投資信託協会、同4月末現在)もあります。本当にどれを選んだらいいのでしょうね。
投資成果を計測するのはリターンだけではない
さて、今回の記事ではどの銘柄を買えとか、どの投資信託が良さそうとかそういうお話はいたしません。ただ、読者の皆さんが何らかの有価証券を購入される際の目安になるであろう、リターンの計測方法の一つを紹介しますので参考としてください。
たとえば、あなたがトヨタとソニーの2銘柄を買ったとします。そして1年間保有し売却したところで、両社は年間15%のプラスリターンとなったとします(トヨタ、ソニーはいずれかの投資信託に置き換えていただいても結構です)。
トヨタ: プラス15%
ソニー: プラス15%
トヨタもソニーも1年間でプラス15%上昇しましたから、どちらの銘柄でも結果的には同じリターンが得られましたね。めでたし、めでたし。
ところがこのリターンを得るためには、1年間という時間がかかり、その間相場が大荒れだったかもしれません。仮に1年前の日経平均株価が2万円ちょうどだったとして、この1年間で最高値は2万5,000円で、最安値は1万5,000円だったとしましょう。すると、この間の日経平均株価の平均的な振れ幅は上下25%ずつにもなります。
同様に、トヨタの株価の振れ幅は10%、ソニーは30%だったとします。つまり、トヨタの株価は日経平均株価やソニーよりも振れ幅が小さくより安定的だったということですね。
ここで言う振れ幅とは、株価が平均リターンからどのくらい、かい離して動くかという統計値のことです。株価の振れ幅のイメージは以下の図表1をご覧ください。
株価の振れ幅を勘案してリターンを計測する「シャープレシオ」とは
同じプラス15%のリターンを計上したトヨタとソニーですが、この株価の振れ幅という観点を入れると、景色は違って見えます。話を簡略化するため、両株価の年間平均振れ幅(率)をそれぞれ10%と30%とします。
そうすると、トヨタ株価は年間10%の振れ幅に対して15%のリターンとなりますが、ソニーはトヨタの3倍にあたる年間30%の振れ幅に対して15%のリターンです。
そうすると、リターンの結果は同じでも、振れ幅に対するリターンは異なってきます。トヨタは振れ幅対比1.5倍のリターン(15% ÷ 10%)、ソニーは0.5倍のリターン(15% ÷ 30%)となります。
言い方を変えれば、労少なくして15%のリターンを得られたのがトヨタ、労多くして同じ15%のリターンを得たのがソニーということになります。
同じリターンなら株価の振れ幅が小さい方が効率的ですし、心理的にも負担が少なくなります。振れ幅がゼロ%で年間リターンがプラス15%である定期預金があったと想像してください。もしあるなら誰も株式なんて買いませんよね。
このように、投資対象資産価格の振れ幅対比のリターンのことを「シャープレシオ」といいます。ちなみに、シャープレシオ(Sharp’s ratio)は、1990年にノーベル経済学賞を受賞しこの計数を生み出したウィリアム・シャープ博士の名前に由来します。
シャープレシオ = 投資対象資産のリターン(収益率)÷ 投資対象資産価格の振れ幅(標準偏差)
これがシャープレシオの計算式です。簡易な計算式ですが、株価や投資信託の基準価額のリターンを横並びで判断する際の一つのモノサシとしてとてもわかりやすい指標です。
上がった下がったもいいのですが、上がり方や下がり方も観察しておくのが賢明な投資家と言えるでしょう。ぜひ使ってみてください。
筆者注:上記では個別銘柄を記載していますが、本稿を分かりやすくするための事例です。銘柄の推奨ではありません。本来、シャープレシオを計算する際は無リスク資産のリターンを控除して分子を計算しますが、実質的に短期国債のような無リスク資産はゼロ金利であることと、数式の理解を分かりやすくするため割愛しています。
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