「孫のために買い出しに行かないで！」高齢義父の止まらない薬局パトロール

世間では新型コロナウイルス感染症（COVID-19）対策のためのマスク不足もだいぶ解消され、スーパーマーケットや薬局で見かけることも増えてきました。自粛期間が続いたことで使用するマスクも減り、家庭によっては当面のストックができたという声も耳にするように。

しかし、一部の家庭では「品薄状態のときでも家庭内在庫が増えていき、本当に心苦しかった」といいます。いったいどのような事情があったのでしょうか。

地方に住む義実家

Ｔさんの義両親は地方在住で、すでに仕事は定年をむかえ夫婦仲良く暮らしているそうです。感染者も少ない地域なので他の地域よりは感染リスクも少ないのではと夫婦で話していたそう。

「ある日、義父の名前で宅配便が送られてきました。開けてみると、マスク数箱とアルコールウェットティッシュがたくさん。うちの周りはすでに品薄状態の時期だったので正直助かりました。しかし、お礼の電話をすると義母から『お父さんが薬局を数件めぐって買い占めのようなことをしている』という話を耳にしました。どうやら我が家だけでなく、義弟一家の分も探し回っていたようで。だとすると、この倍の量を手に入れたことに…。

義父に電話を替わってもらうと『小さい子を守ってあげるんだよ』ととてもありがたい言葉をもらいました。とはいえ、我が家は未就園児二人と私たち夫婦のみ。夫はリモートワーク中だし、私も最小限の買い物しか行きません。これだけの量の衛生用品が必要な人の元に届かないのはとても複雑な気持ちになりました。また、義父も70歳近い年齢なのでリスクの高い世代といえます。『もう私たちは大丈夫ですので』といっても、まだ探し回っているようなので、正直ハラハラします」

随時届けに来る義父

また、Ｋさんの義実家は同じ市内にあるそう。Ｋさん一家もマスク不足に悩んではいたものの、休校中の子供たちや自分は布マスクを作り使用していたため、朝から並んで購入するといった方法はとっていなかったそうです。

「先日、夫の元に義父から電話がありました。『マスクが手に入ったから今から届けに行く』と。私たち一家は近所に住んでいるとはいえ、感染リスクを考えて義実家を訪れることを遠慮していました。それなので、家にきてもらうのは気が引けるということを夫経由で義父に伝えてもらうことにしたのですが、義父は『玄関でいいから』とマスクを届けに我が家にやってきました。義父は3枚入りのマスクを置くと孫の顔も見ずにすぐに帰っていきました。

夫の話だと、どうやら並んでマスクを手に入れてくれたようで…。気持ちはありがたいですが、そのために早朝から列を作ることや我が家まで届けることのほうがよっぽど家族にとって不安な状況です。その後も数回同じようなことがあり、夫にハッキリ言ってもらおうとしても『俺のいうことを聞く人じゃないからもらってやっておけばいいんじゃない』なんていうだけ。もし何かあったらお義母さんにも顔向けができません」

好意ゆえに断りにくい

どちらのケースも共通するのが「良かれと思って」行動されてしまったこと。また、実の親に比べ義実家には言いにくいということも止めきれない原因のようです。確かに衛生用品はいくらあっても困るものではありませんが、なくても困らない人が買い占めることで影響が出ることもまた問題だったのではないでしょうか。

高額な衛生用品を買うお金と時間がある高齢者たち。大切な孫や子供たちのことを考えるあまり、メディアが大きく取り上げるたびにお店に走ってしまうという構図があちこちで見られていたようです。

まとめ

高齢者ほどリスクが高いといわれる新型コロナウイルス感染症（COVID-19）。高齢の親を思いやるからこそ距離を置く子供たちに対し、その気持ちを理解せず混雑した中に向かって行ってしまう高齢の親たち。どちらも根底にあるのはやさしい気持ちなのですが、コミュニケーションが少し足りないと、周囲を巻き込む迷惑行為になりかねません。

「我が家はすでにこんなに在庫がある」「本当に身体が心配だから家にいて欲しい」そんな気持ちがあることを理解してもらい、お互い何かを送りあわなくても思いあっていることが伝わるよう話し合ってみてもよかったのかもしれません。