看護師が語る「印象深い最期の選択」…今こそ考えたい「最期をどう生きる?」
LIMO / 2020年5月25日 19時0分
看護師が語る「印象深い最期の選択」…今こそ考えたい「最期をどう生きる?」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が大きな問題になっており、志村けんさんをはじめ著名人の方たちも尊い命を亡くしています。当初、若年層は軽症で済むと言われていましたが、力士で28歳の勝武士さんが亡くなられ大きな話題となりました。
また、COVID-19は感染防止の観点から死に目に会えない。葬儀もできず、お骨になった後しか再会できないなどがあります。
数年前から「終活」という言葉が流行るなどしていますが、今だからこそ自身の最期について考えるいい機会だと思うのです。筆者が看護師として多くの人と関わるなかで印象深かった体験から、最期に向き合うにあたってのヒントになりうるお話をしたいと思います。
誰かのために生き長らえる
自分の死に際の話になると、よく言われるのが「食事や酸素もチューブからになり、管まみれになりたくない」ということです。筆者もできれば最後まで食事は口から食べたいですし、無理矢理生きている状態は嫌だと感じます。しかし、実際にそれらを拒否する人は少ない。
なぜでしょうか?印象に残っている患者さんがいます。
末期のがん患者で告知が行われた患者さん。患者本人は「積極的な治療は考えていない」と言っていました。しかし、それを聞いた娘さんは「嫌だ、死んでほしくない」と患者さんに懇願したのです。それを見て患者さんは『ほんとに私がいないとダメだね。先生もう少し頑張ってみます』と治療に向かうこととなりました。
がん治療は想像を絶するほど身体に負担をかけます。痛み止めなど緩和治療も同時並行で行いますが、おそらく辛かったでしょう。しかし、患者さんは娘さんのために生きようとしました。娘さんは、必死に看病をしていました。
患者さんが亡くなったあと、娘さんは「お母さんは、私に親離れをする時間をくれるために治療を頑張ってくれた」と。
自身のことだけではなく、娘のことを思い辛い治療を選択した母親。筆者はまだ独身であるため自分がどうしたいかを考えがちですが、「周りのことを考えた自分の最期」というのを考えていきたいと感じた出会いでした。
やり残したことをやりに行く
20代、30代でやっておくべきこと、というような本がよくあります。筆者もついつい読んでしまうことがあります。誰しも自分が何をすれば幸せになれるか考えるものですし、やりたいこと、やるべきことは無限にあります。そんなときによくすることが高齢の患者さんに「若いうちにやり残したことは?」と聞くことでした。
そんな質問をした人の1人である患者さんは、介護施設で出会った方でガンが見つかったけれども治療をすることを拒否した人でした。
その方は、筆者の質問に『色々あるなあ。外国も行きたかったし、富士山も登るって言って行ってないわ』と答えました。筆者が冗談で「今から行きます?」と言うと『それもええな』と笑いながら話していました。
それだけなら良かったのですが、後日その人は本当に外出許可を取り、富士山へ行っていたのです。とんでもない行動力です。
その後も動けなくなるまでは、精力的に外に出て楽しい時間を過ごしていました。亡くなったあと家族から感謝を伝えられましたが、筆者はなにもしていないと思っています。
患者さん自身に行動力があったからこそ、最期まで楽しむ心があったからこそだと思っています。
悔いのない選択をしていこう
シェイクスピアは「人生は選択の連続だ」という言葉を残していますが、その通りだと思っています。お話しした2人はまったく違う選択をしましたが、筆者個人としては素晴らしい選択だったと思っていますし、当人たちも悔いがなかったのではないかと考えています。
人生は選択の連続。死が近い世の中だからこそ、悔いのない選択をしていきたいですね。
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