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全土封鎖の延長で不安の高まるインド <HSBC投信レポート>

LIMO / 2020年5月27日 10時0分

全土封鎖の延長で不安の高まるインド <HSBC投信レポート>

全土封鎖の延長で不安の高まるインド <HSBC投信レポート>

マーケットサマリー

インド株式市場は、1月下旬から新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株式市場の急落を受けて大幅に下落したが、3月下旬以降は欧米における感染拡大のピークアウトを背景に世界の株式市場が値を戻す中で、反発している。

債券市場は、昨年12月下旬以降、世界的な金融緩和の動き、インド準備銀行(中央銀行)による追加緩和を支えに堅調(利回りは低下)に推移している(5月15日現在)。

トピックス

全土封鎖の延長で高まる不安

インドでは、世界の主要国の中で最も厳しいロックダウン(都市封鎖)が実施されてきたが、新型コロナウイルス感染症は4月から5月にかけて、ほぼ全土に拡大。国内の感染者数は4月半ばの約1万2000人から5月半ばには8万人超にまで急増した。

その中で前向きな話としては、感染の有無を調べる検査数が増えたこと(世界で最も少ない国の1つであることには変わらない)、そして感染経路の追跡調査の体制が強化されつつあることが挙げられる。感染者の回復率も5月半には30%を超える水準まで著しく改善した。

しかし、政府は厳しい政策の舵取りを余儀なくされており、感染拡大が止まらないためロックダウンの延長を続ける一方、その解除後は経済活動の本格的な再開を段階的に進める方針と伝えられている。

3月25日から実施されている全国を対象とするロックダウンは現在、3回目の延長期間(5月18日~31日)に入っているが、その後も数週間、何らかの形でさらに延長される可能性がある。ただし、政府は、ロックダウンの一部について、経済的打撃と、社会的弱者が属する「インフォーマル・セクター」への大きな影響を考慮して、4月20日以降は条件付きで徐々に緩和している。

感染の拡散状況は地域別に感染率に応じて赤、黄、緑に色分けされ、生活必需品などを扱う店舗の営業など一部の経済活動は認められてきた。5月12日には国鉄の一般旅客輸送の一部再開が認められた。開始直後は国内経済の70%近くに影響を与えたロックダウンだが、段階的な緩和によって5月現在その割合は40%に減っている。

インドのロックダウンが完全に解除される時期がいつ頃になるかを予測することは難しい。経済活動の再開に踏み切った他の国々の状況が示しているように、政府にとって、経済を再活性化させることは非常に困難な課題であることは明らかだ。

最近数週間にインド及び他の国々で起きたことをベースに「経済回復シナリオ」を想定してみよう。それには、感染拡大の影響の大小に注目する必要がある。影響が小さい地域・分野が経済活動の本格的な再開とそれによる景気回復の実現で先行するというシナリオが考えられるからだ。

インドの場合、その役割を担うのは、①農村部、②供給サイド、③製造業、④消費ということになる。農村部が都市部ほど打撃を受けていないのは明らかだ。失業者が増え続ければ需要の低迷は必至で、需要よりも供給サイドの回復が先行する可能性が高い。

同様に、製造業がサービス業より先に回復基調に戻ることが予想される。また、消費と投資を比べると、経済の先行き不透明感や家計収入の減少に直面しても生活必需品などの消費を減らすことは難しいため、消費の水準が投資ほど大きく落ち込むことはないと思われる。

直近数週間の経済活動の冷え込みと新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンの延長を考慮して、エコノミストは相次いでインドの国内総生産(GDP)成長率見通しを大幅に下方修正している。

感染拡大防止策の一部が6月末まで維持される可能性がある中で、4-6月期の経済成長率の大幅な低下に加えて、その後遺症が7-9月期も続くことが予想される。供給サイドに比べると、需要ショックからの反転には時間がかかるため、成長がプラスに転じるのは2020年末近くまで待たねばならないことも考えられる。

政府は5月12日、総額20兆ルピー(約29兆円)の経済対策を発表した。財政・金融措置を含む景気刺激策パッケージの規模はインドの名目GDPの約10%に相当する。同パッケージの一部は市場からの借り入れでまかなわれる予定で、政府が2020年度(2020年4月-2021年3月)の借り入れ目標を当初の7.8兆ルピーから12兆ルピーに引き上げた。

投資家は当初、経済対策に前向きな反応を見せたが、その後、パッケージの3分の1以上は2020年に入ってからこれまでに公表された金融措置だとわかると、歓迎ムードは消えてしまった(図表1参照)。

経済対策には、マイクロ企業家、中小企業、それらに融資を行うノンバンク金融事業会社(NBCF)を対象に設定された総額620億ドル相当の信用与信枠、電力の配電(小売)業者向けの100億ドル相当の融資枠がそれぞれ含まれている。政府は、インド経済の根幹をなす中小企業、「シャドーバンク(影の銀行)」、不動産会社など、新型コロナウイルスで打撃を被った部門への支援に力を入れる姿勢を鮮明にしている。

経済対策発表の2週間前に格付会社フィッチ・レーティングスは、インドの財政が一段と悪化した場合、格付けを引き下げる可能性があると警告していた。インドでは、景気はパンデミック(世界的大流行)発生前から減速しており、財政も低税徴収率による歳入不足が続く中で歳出が増えたことから悪化し続けていた。

最新の経済対策は供給サイドを支援する措置で構成されているが、ロックダウン解除後には政府が需要サイドの支援策を発表するという期待が国内では見られる。

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株式市場

1月以降の急落後、3月下旬から反転上昇

インド株式市場は、2020年1月下旬から、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株安を受けて、大幅に下落した。しかし、3月下旬以降は、欧米における感染拡大ペースの鈍化と経済活動の一部再開を背景に、景気回復への期待が高まり、世界の株式市場が反発する中で、インド株式市場も上昇に転じた(5月15日現在)。

新型コロナウイルスは、インド国内でも感染が拡大しており、インド政府は3月24日、全土を封鎖すると発表し、期限を5月末まで延長した。外出や移動の制限による国内経済への影響が懸念されている。

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HSBC投信の株式運用戦略

インド株式市場は短期的には新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、引き続き不安定な展開を続ける可能性がある。また、当面は感染予防対策が国内の経済活動に大きな影響を及ぼすことが見込まれる。

インド経済は当面は厳しい局面を向かえそうだが、当社は長期的にはインド株式市場に対する強気の見方を維持している。インド経済の成長ポテンシャルは高く、構造改革の進展から、長期的に成長率はさらに高まると見られている。与党インド人民党(BJP)が安定した政治基盤のもとで高成長・構造改革路線を継続すると見込まれることも、株式市場にとり強力なサポート要因となる。

インド株式の運用では、持続的な収益成長性を有しながらバリュエーションに割安感のある銘柄を選別する。業種別には金融と不動産をオーバーウェイトとし、エネルギー、生活必需品、ヘルスケアをアンダーウェイトとする。また、インフラ関連銘柄は、第2期モディ政権が推進するインフラ投資計画の恩恵を受けると見込まれる。

債券市場

2019年12月下旬以降、上昇(利回りは低下)基調

インド国債市場は、2019年12月下旬以降、上昇(利回りは低下)基調をたどっている(5月15日現在)。

インド準備銀行(中央銀行)は、新型コロナウイルスの感染拡大の国内経済への影響を抑制することを目的に金融緩和を続けている。また、原油価格の大幅下落と国内のインフレ率の落ち着きも債券市場にとりプラス要因となっている。

HSBC投信の債券運用戦略

インド債券市場は、グローバル投資家にとり良好な投資機会を提供している。新型コロナウイルスによる経済的混乱が収束すれば、インド経済は再び優位性を取り戻すと思われる。インド経済のファンダメンタルズは比較的良好であり、また、インド国債は投資適格級ながら、利回りが依然として高水準にある点も注目される。

インド債券の運用においては、引き続きインドルピー建国債に重点を置いて投資を行う。また、短中期のインドルピー建社債を選好する。一方、米ドル建債券には慎重な姿勢を維持する。

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為替市場

インドルピーは2月下旬以降に急落した後、4月からは一進一退

インドルピーは対米ドル、対円ともに本年2月下旬以降は新型コロナウイルスの感染者の世界的な広がりを受けた投資家のリスク回避志向の高まりを受けて、他の新興国通貨とともに急落した。4月以降は一進一退の方向感に欠ける展開となっている。

インドルピー相場は、短期的には引き続き不安定な動きを続ける可能性があるが、長期的には、相対的に良好な経済ファンダメンタルズや潤沢な外貨準備高が支援材料となり、堅調な展開が予想される。

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