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銀行が「再建困難な借り手も支援すべき」なのは、銀行の得になるから

LIMO / 2020年5月31日 20時0分

銀行が「再建困難な借り手も支援すべき」なのは、銀行の得になるから

銀行が「再建困難な借り手も支援すべき」なのは、銀行の得になるから

再建困難な借り手に対しても、返済猶予等の支援することが銀行自身の利益になる場合も多い、と筆者(塚崎公義)は考えています。

一時的な資金繰り難の企業を支援するのは、銀行自身の利益

新型コロナ不況の深刻化にともなって、資金繰りに苦しむ企業が増加しているようです。必死に耐えている企業が力尽きて倒産する事例も、今後は増加してくるでしょう。ぜひとも政府には強力な対策をお願いしたいと思います。

もっとも、健全な企業が一時的な資金繰り難に見舞われた時に、資金繰りを支援して企業を延命させる役割は、銀行にも期待されます。「社会的使命だ」などと格好の良いことを言うのではなく、支援することが銀行の利益になるからです。

借り手が倒産すると、まだ使える設備機械がスクラップ業者に二束三文で買い叩かれたりしますから、銀行の回収額は非常に小さくなってしまうかもしれません。それなら借り手の資金繰りを支援して、回復を待つ方が得でしょう。

支援しないと「あの銀行は借り手を見殺しにする冷たい銀行だ」という悪評が立ち、取引銀行として企業から選んでもらえなくなる、というリスクもあります。

地銀の場合には、支援しないで借り手が倒産することで、地域経済がダメージを受け、地域内の他の企業の倒産を招いてしまうことにもなりかねません。

こうしたことを総合的に考えると、立ち直ると期待される企業を支援することは、銀行の利益にもなる場合が多いのです。こうした点については、前回の拙稿『銀行の融資基準が新規先に厳しく、既存先にはそれほどでもない理由(https://limo.media/articles/-/17429)』をご参照いただければ幸いです。

以上は立ち直ることが期待できる借り手についてでしたが、そうした借り手のみならず、立ち直ることが期待できない借り手であっても、資金繰りを支援する方がじつは銀行の得になる、という場合もあるのです。以下に示しましょう。

減価償却前が黒字ならキャッシュフローに期待

銀行から借りた金で100万円の機械を買った会社があるとします。その機械は10年使えるので、減価償却は毎年10万円です。

その会社にライバルが登場したので、製品価格が値下がりしてしまい、今後10年間にわたって毎年1万円の赤字が続く見通しとなりました。つまり、黒字に戻る見込みがないわけで、借金も返済の目処が立ちません。

その会社に「借金が返せる目処が立たないなら、会社を清算して返せるだけで良いから返して欲しい」と言うこともできますが、そうなると上記のように回収額が非常に少なくなってしまうかもしれません。

一方で、「操業を続けて、返せるだけで良いから毎年少しずつ返して下さい」と言えば、90万円が回収できるのです。

10万円の減価償却を実施した後で1万円の赤字ということは、減価償却をしなければ9万円の黒字だったということです。減価償却は損益には関係しますが、金庫の現金の増減には関係しないので、9万円は返済に充てられるということです。それが10年続けば90万円の返済が可能なわけですね。

初心者向けに減価償却の解説をしておこう

鉛筆を買った代金は、その年の費用として計上されます。半分は翌年に使うのかもしれませんが、そんなことを考えるのは面倒なので。

しかし、大きな機械を買った場合には、面倒でもしっかり考えないと、買った年の決算が大幅赤字になってしまいます。そこで、減価償却という制度が設けられているわけです。

減価償却というのは、機械を買った時に費用を計上するのではなく、機械を使った時に費用を計上しよう、ということです。

100万円の機械で100万個の製品が作れるとすると、製品を1個作った時に「機械が磨り減った分を費用に計上する」というわけです。代金を支払った時ではなく、機械を使った時に費用を計上するので、現金の増減と利益の増減が一致しなくなるのです。

製品を作るための材料費と人件費に、機械が磨り減った分の1円を上乗せして売るとしましょう。売上が現金で回収され、材料費と人件費を現金で支払うとすると、差し引き1円の現金が金庫に残ります。

利益は上乗せしていないので、利益はゼロなのに、金庫の現金は増えるのです。ここでも利益の増減と現金の増減がずれるわけですね。

結果として、機械を買った時に現金が出て行き、使った時に現金が戻ってくるわけですが、利益は一貫してゼロだ、ということになるわけです。

以上は一般論として利益がゼロの会社についての説明でしたが、本文の会社の場合、小幅な赤字ですから、売上が材料費プラス人件費プラス1円よりはわずかに小さいわけです。しかし、それを考えても金庫の現金は増加するので、それを返済に充てさせれば銀行としては結構な金額が回収できる、というわけですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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