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政府は再建困難な企業にも資金繰りを支援すべき〜ゾンビ企業でも今は延命を

LIMO / 2020年6月7日 20時20分

政府は再建困難な企業にも資金繰りを支援すべき〜ゾンビ企業でも今は延命を

政府は再建困難な企業にも資金繰りを支援すべき〜ゾンビ企業でも今は延命を

再建困難な赤字企業であっても、現在の経済情勢においては、原則として政府が資金繰りを支援すべきだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

* * * * *

新型コロナ不況の深刻化にともなって、倒産の増加が懸念されます。一時的な資金繰り難で倒産しそうな企業については、政府が資金繰りを支援することで景気回復まで延命させることが重要です。

倒産すれば、経営者や従業員が失業するのみならず、まだ使える機械がスクラップされたり、企業が持つノウハウや信用等が雲散霧消してしまい、日本経済にとって大きな損失となるからです。

失業者が消費しないので景気が一層悪化する、自分も失業するかもしれないと考えて財布の紐を締める消費者が増える、倒産による貸し倒れが増えると銀行が融資に慎重になる、といった悪影響も懸念されます。

さらには、倒産の増加で銀行が赤字に転落し、自己資本が減って自己資本比率規制による貸し渋りを余儀なくされる、等々も、倒産増加による悪影響として懸念されるわけです。銀行は自己資本の12.5倍までしか貸してはいけない、という規制がありますから。

しかし、ライバルに見劣りしている等の理由により、資金繰りを支援しても黒字を回復する見込みのない企業、いわゆる「ゾンビ企業」についてまで資金繰りを支援する必要はあるのでしょうか。

筆者は、その必要がある、と考えています。一つには、支援すべき企業の選別に時間がかかり、その間に倒産してしまう企業が出ることを恐れるからです。支援を求めるすべての企業に支援することで、多くの企業が救えるならば、支援先の中に支援すべきでない企業が含まれていたとしても、それはコストでしょう。

もう一つには、より積極的に「再建が困難な企業も不況期には原則として支援すべき」と考えているからです。その理由は以下の通りです。

景気が回復してから倒産する方が遥かに良いから

景気が悪い時には、たとえゾンビ企業であっても、労働者を雇用していてくれるだけで大変ありがたい存在ですから、1日でも長く延命させることには大きな意味があるでしょう。

企業の再建は無理でも、まだ使える設備機械があるならば、それが壊れるまで生産活動を続けてもらうことが日本経済のためになるはずです。

景気が悪化している時に倒産する企業があると、上記のように様々な悪影響が生じ、景気の悪化がさらなる景気の悪化を招く悪循環に陥りかねませんが、景気が良い時に倒産があっても、悪循環は生じにくいでしょう。

生産が増え、雇用が増え、消費が増えている時に倒産する企業があっても、失業した労働者はすぐに次の仕事を見つけることができるでしょうし、銀行も自己資本比率規制による貸し渋りをする必要はないでしょう。

景気が回復して労働力不足になった時点で再建不能企業が倒産するならば、失業した労働者は労働力不足を緩和する存在として多くの企業に歓迎されることになるかもしれません。

ゾンビ企業延命の批判に答える

「不況にはゾンビ企業を一掃して新陳代謝を進めるというプラスの効果がある」、という人がいます。彼らは「ゾンビ企業が労働者を囲い込んでいるから、効率的な企業に労働力が回らず、日本経済が効率化していないのだ」と考えているようです。

したがって、ゾンビ企業が淘汰される絶好のチャンスである不況期が来たのに、政府がゾンビ企業を延命させてしまうのはケシカラン、と考えているようです。

実はこれは、小泉構造改革の主要な関心事項でした。構造改革を支持している人々は「景気よりゾンビ企業の淘汰」を優先すべきだと考え、反対派は景気対策による雇用確保が大事だと考えていたわけです。

筆者が考えるには、景気や失業というものに対する基本的な認識が両者間で根本的に異なっているので、論争しても議論が噛み合わないのだと思います。したがって本稿も、論争のためというよりは、どちらの意見を支持しようか迷っている人を意識して書いている次第です。

彼らは、不況による失業という問題をあまり深刻に考えない傾向があります。失業している人だって、いつまでも失業しているわけではなく、「給料は安くても仕方ないから働きたい」と考えて仕事を探すだろうから、失業者は放っておいても減るのだ、と考えているようです。

それに対して筆者等は「景気は悪化を始めると様々な悪循環に陥るから、政府が景気対策をしっかり実施して失業者を減らさなくてはならない」と考えています。

筆者に言わせれば、ゾンビ企業の淘汰は好況期に行われるべきです。というよりも、好況期になればゾンビ企業は自然と淘汰されるでしょう。

景気が良くて労働力が不足して来ると、賃金が上がります。そうなると、高い賃金の払えない非効率な企業は倒産するか、従業員が転職していって縮小していくか、ということになるわけですから。

したがって、不況期にはゾンビ企業が雇用を守り、好況期に守って来た労働者を「放出」することで、調整弁の役割が担える、というわけですね。

今回の筆者の提案は、これを政府が積極的に行う、というものです。不況期にはゾンビ企業を支援して雇用を守り、労働力不足になった時点で支援を打ち切ってゾンビ企業を倒産させ、労働力を市場に提供する、というわけですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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