大学にかかるお金を国が支援。この春スタートの「高等教育の修学支援新制度」ウチは対象?いくらもらえる?
LIMO / 2020年6月9日 18時15分
大学にかかるお金を国が支援。この春スタートの「高等教育の修学支援新制度」ウチは対象?いくらもらえる?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、多くの子どもたちの新年度が想定外の形で始まりました。保護者の休業や雇止めなど、世帯収入に直結する問題も多く起きています。「この先、教育費はいくらかかるのだろう?」と不安を感じる人は増えているでしょう。
2020年4月、高等教育(大学・専門学校など)にかかる費用が無償化される制度が始まっていることをご存じですか。授業料減免・給付型奨学金の2本立てになっていて、貸与型奨学金や教育ローンとは異なり返済不要です。今回はこの「高等教育の修学支援新制度」についてみていきます。
知りたい、いまどきの「大学進学費用」
大学へ進学するには、どれくらいお金がかかるのでしょうか。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果[令和元年度(2019年度)](https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf)」のデータをみていきましょう。
大学卒業までに必要な入在学費用(※1)
(子ども1人当たりの費用)
大学1年次・・・234万7000円
大学2~4年次合計・・・455万7000円(※2)
これを国公立・私立別、文・理系別にみると・・・
国公立大
入学費用・・・71万4000円
在学費用・・・428万円
私立大学文系
入学費用・・・86万6000円
在学費用・・・630万4000円
私立大学理系
入学費用・・・84万5000円
在学費用・・・737万2000円
となっています。
(※1)在入学費用
「入学費用」には受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金など、「在学費用」は「学校教育費」(授業料・通学費など)と、「家庭学習費」参考書の購入費など、をさします。
(※2)同調査結果の月額(151万9000円)より算出しました。
また、同調査によると、自宅外通学をする学生1人あたりの年間仕送り額は平均102万3000円(月額8万5000円)、自宅外通学を始めるためのアパート敷金や家具などの購入費は平均39万1000円となっています。
進学する学部や、自宅外通学をするかどうかによって、必要となる費用にだいぶ差が出てきますね。きょうだいの進学が重なったり、COVID-19の影響で家計が急変したり・・・という場合はご家庭への負担が大きくなることが考えられます。「高等教育の修学支援新制度」の給付条件を満たしていれば、ぜひ検討したいところです。次では、制度の概要をみていきましょう。
この春スタートした「高等教育の修学支援新制度」って?
ここからは、文部科学省の資料をもとに、令和2年4月に始まった「高等教育の修学支援新制度」の概要を整理していきます。まずは、対象となる要件からみていきます。
対象となる学校
大学・短期大学・高等専門学校・専門学校
対象となる学生
住民税非課税世帯、及びそれに準ずる世帯の学生※(年収目安380万円)
対象者の要件
進学前は成績だけで否定的な判断をせず、レポートなどで本人の学修意欲を確認
進学後の学修状況に厳しい要件
大学等の要件
学問追究と実践的教育のバランスが取れた大学等(※国、又は自治体による要件確認を受けた大学などが対象となり、経営に課題のある法人が設置する大学などは対象外)
次は支援の内容について整理します。
①授業料等減免制度
各大学などが、定められた下記の上限額(※3)まで授業料の減免を行い、減免に要する費用は公費から支出
授業料等減免の上限額(年額)(住民税非課税世帯)
②給付型奨学金
日本学生支援機構(JASSO)から各学生に支給される
学生が学業に専念するため、学生生活を送るのに必要な学生生活費をまかなえるよう措置
給付型給付額(年額)(住民税非課税世帯)(※4)
(※3、4)上記の「授業料等減免の上限額」「給付型給付額」ともに、「住民税非課税世帯」の年額です。また、住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生の場合は、世帯年収に応じて、住民税非課税世帯の学生の2/3または1/3が支援されます。
「自分は対象かな?」と思ったら・・・
自分が支援の対象かどうか、在学する(または進学を希望する)学校が対象かどうかを早めに調べておきましょう。すでに大学などに在学中の人と、これから入学する人とでは申し込みの流れが異なってきます。次では、条件を満たしていた場合の、申し込み後の流れをまとめました。(※下記は令和2年度に申し込んだ場合のスケジュールとなりますので、今後利用を考えたときには、必ず最新の情報をご確認ください。
「既に大学・短大・高等専門学校(4・5年次)・専門学校に在学中の人」(令和2年4月時点)
●前期(春)申込みの場合(→4月分(前期分)から支援)
4月~5月下旬:申し込み
【給付型奨学金】在学中の学校で関係書類をもらって、インターネットでJASSOに申し込む
【授業料等減免】在学中の学校で関係書類をもらって、学校に申込む
7月ごろ:選考結果の通知
JASSOから在学中の学校を通じて、学生本人に選考結果が通知される
●後期(秋)申込みの場合(→10月分(後期分)から支援)
9月~10月中旬ごろ:申し込み
【給付型奨学金】在学中の学校で関係書類をもらい、インターネットでJASSOに申し込む
【授業料等減免】在学中の学校で関係書類をもらい、学校に申込む
12月ごろ:選考結果の通知
選考結果の通知が、JASSOから在学中の学校を通じて学生本人に通知される
「大学などに進学予定(高校3年生や高校卒業後2年を経過していない人)」(令和2年4月時点)
4月下旬~5月:申し込み
高校などから関係書類をもらって、学校の先生などと相談しながら、インターネットでJASSOに申し込む
秋ごろ:選考結果の通知
JASSOから高校などを通じて生徒本人に通知される
まとめにかえて
さいごに、この制度の利用にあたり、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。文部科学省のパンフレットによると、「修業年限で卒業できないことが確定した場合」「修得単位数が標準の5割以下の場合」「出席率が5割以下など学修意欲が著しく低いと大学等が判断した場合」などは、すぐに支援打ち切りの対象となります(やむを得ない事情がある場合などを除く)。
継続して支援を受けるためには、学ぶ意欲がとても大切になってくる、という点は、ぜひ頭に入れておきましょうね。「自分は対象かな?」と思った場合は、申し込み開始前、早めにリサーチされることをおすすめします。
また、この制度の対象外だった、という場合に「貸与型奨学金」「教育ローン」などの利用を検討するご家庭も多いかもしれません。いずれも“借金”であることを理解し、返済計画を親子で話し合う場などを設けることをおすすめします。そこで身についたマネーリテラシーは、近い将来社会人デビューしたときに、大いに役に立つはずです。
【参考】
「教育費負担の実態調査結果(令和元年度)(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r01.pdf)」日本政策金融公庫
「高等教育の修学支援新制度」(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm) 文部科学省
「高等教育の修学支援制度について(https://www.mext.go.jp/content/20200110-mxt_gakushi01-100001062_1.pdf)」文部科学省
「高校生のみなさんへ 学びたい気持ちを応援します 高等教育の修学支援新制度(授業料等減免と給付型奨学金)(https://www.mext.go.jp/kyufu/student/koukou.html)」文部科学省
「『奨学金』と『教育ローン』、どう違う?(https://limo.media/articles/-/16935LIMO)」LIMO
「大卒イコール正規雇用」ではない現実。奨学金「無理なく返せる?」「教育ローンとの違いは?(https://limo.media/articles/-/17689)LIMO
「子ども教育費、大学卒業までに1000万、みんな普通に払うの?」(https://limo.media/articles/-/17312)LIMO
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
国立大学の「学費値上げ」が話題になっていますが、国公立大学が最安なのでしょうか? 2年間で修了する「短大」や「専門学校」のほうが断然安いと思うのですが。
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月19日 5時0分
-
世帯年収400万円ですが、子どもが「大学進学」を希望しています。この年収なら“給付型奨学金”を利用できるでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月15日 4時40分
-
夫婦で「年収800万円」ですが、子ども3人を大学に通わせたいです。多子世帯なら「無償化制度」で、全員大学に進学させられますよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月12日 4時30分
-
「お金ないから国立大を目指して」と言われましたが、うちの親は公務員で年収600万くらいだと思います。そんなに大変なのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年9月8日 7時0分
-
大学生2人と高校生の子どもがいます。2025年から「大学無償化制度」が新しくなるようですが、子どもが3人いれば利用できますよね?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月25日 4時30分
ランキング
-
16時間睡眠を続けた人の脳は「ワインを2~3杯飲んだ状態」と同じ…「昼休みも仕事する人は危険」といえる理由
プレジデントオンライン / 2024年9月20日 10時15分
-
2「令和のコメ騒動」不足解消でも楽観できない事情 人口減少社会で「農地改革」が進まない本当の理由
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 8時0分
-
3バフェットの次を行く投資術 長年の積み重ねで業態転換成功の「富士フイルムHD」急速な時代の変化への対応は「お手本」 かつて「世界の巨人」コダックは破綻も
zakzak by夕刊フジ / 2024年9月20日 11時0分
-
4あの「ポーター」が人気商品を大胆に変えた裏側 価格2倍にしても素材変えた吉田カバンの挑戦
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 13時0分
-
5夫の死後「積年の恨み」晴らす「死後離婚」驚く実態 義理の家族と「完全に縁を断ち切る」方法は?
東洋経済オンライン / 2024年9月20日 9時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください