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さよならファミレス! コロナ禍で大リストラ…突然訪れた一時代の終わり

LIMO / 2020年6月12日 20時0分

さよならファミレス! コロナ禍で大リストラ…突然訪れた一時代の終わり

さよならファミレス! コロナ禍で大リストラ…突然訪れた一時代の終わり

コロナ禍で大ピンチに陥ったファミリーレストラン

一連のコロナ禍による政府の緊急事態宣言や地方自治体からの休業要請などにより、飲食店が広範囲にわたって甚大な影響を受けたことはご存知の通りです。これは、すっかりお馴染みとなった外食チェーン店でも同じですが、休業要請の緩和等を受けて、徐々に営業活動が戻りつつあるようです。

しかしながら、コロナ後の「ニューノーマル」でさらに厳しくなる外食産業の業態も少なくありません。現時点で見る限り、最も厳しい局面にあるのはファミリーレストラン(以下、ファミレス)ではないでしょうか。

先ず、一連のコロナ禍を受けて明らかになったファミレス業界の動きを振り返ります。

ロイヤルホールディングスが不採算の続く「ロイヤルホスト」「てんや」など約70店舗を2021年度末までに閉店することを発表。内訳は非公表だが大部分が「ロイヤルホスト」と見られる。(5月14日)

すかいらーくホールディングス(「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」等を運営)が、7月1日から全店での深夜営業廃止を発表。(5月26日)

店舗数で業界第3位の「ジョイフル」が約200店舗を2020年7月から順次閉店すると発表。(6月8日)

発表された閉店計画は、“大リストラ”そのもの

この1カ月弱(実際には約3週間)だけで見ても、これだけの大きなニュースが発表されました。

特に、中国・四国・九州ではトップを快走する「ジョイフル」の200店舗の閉店計画は衝撃的でした。現在の店舗数が767ですから、約26%が閉店することになります。また、「ロイヤルホスト」に関しても、仮に閉店予定70店舗のうち50店舗が「ロイヤルホスト」だとした場合、現在の店舗数が202ですから、約25%閉店と試算できます。

「ジョイフル」も「ロイヤルホスト」も、はっきり言って大リストラであることは間違いありません。今後、他のファミレスも同じような閉店計画や事業縮小に踏み切るものと考えられます。

ただ、冷静に考えると、これらファミレスの閉店計画や時間短縮は少し異常です。なぜならば、コロナ禍で甚大な影響を受けたのはファミレスだけではなく、ファストフード(牛丼、ハンバーガー、回転寿司、麺類など)も同様だからです。

しかしながら、少なくとも現時点において、ファストフードでこれだけの大規模閉店や営業時間変更を発表したケースは見られません。やはり、ファミレス特有の大きな構造的問題があると考えるべきでしょう。

そこで、ファミレスの特徴やアドバンテージなどを考えながら、今回のコロナ禍による影響を考察してみます。

1フロアーの広大な店舗による高賃貸料が大きな足かせに

ファミレス店舗の最大の特徴は、その広さです。しかも、ほぼ全てが1フロアーです。これは言い換えると、賃貸料が非常に高いことを意味します。

確かに、ファストフードでも1フロアーの広大な店舗を構えているケースもありますが、圧倒的な少数派であり、その多くは小面積店舗と言えましょう。

また、マクドナルドのように総面積は大きくても、複数フロアー(例えば1階~3階)になっている店舗がほとんどです。そのため、売上動向を見ながら店舗面積を変動することができます(例えば3階のみを閉鎖・撤退する等)。

しかしながら、広大な1フロアーのファミレスにはこれができません。今回のような売上激減時には、最大の固定費の1つである賃貸料が大きな負担になるのは明らかです。売上が激減する中で、最大の特徴であった広々とした空間が、大きな足かせになったと考えられます。

テイクアウト営業ではファストフードに劣る

ファミレスは店内飲食がメインであり、元々、テイクアウトという概念が希薄です。

確かに、ここ数年はランチ時を意識したテイクアウトメニューに取り組んできた店も少なくありませんが、消費者への浸透度はまだまだ低いと考えられます。また、テイクアウトに適したメニューは多くないことも否めません。

今回のように、突然にテイクアウト営業が主体となっても、ファストフードに対して大きなビハインドがあったことは事実です。今後、テイクアウト商品を拡充するとしても、コスト高(容器など)を吸収するだけの売上が見込めるかどうか疑問が残ります。

収益源の高齢者層や“おひとり様”の外食頻度が大幅減に

ファミレスと聞くと、その名の通り、子供連れの家族が食事をするイメージが強いと考えられます。しかしながら、意外に思うかもしれませんが、ファミレスの主要顧客は、高齢者層や“おひとり様”が多いことが分かっています。

特に、高齢者層は女性を中心に昼間、ギャーギャー騒ぐ中高生が多いファストフードを避け、比較的ゆっくり落ち着けるファミレスを利用します。その証拠と言っていいかどうか分かりませんが、ファミレスのメニューには、高齢者やシニア層が好む品物(ぜんざい、和菓子、蕎麦などの和食等)が数多く載っています。

確かに、ファストフードに比べると価格は高くなりますが、多くの高齢者層(年金受給者含む)はまだ余裕があると見ていいでしょう。逆に言うと、中高生にとってはファミレスは価格が高過ぎるのです。

ところが、コロナ感染による命の危険が高いと言われる高齢者層が、外食の頻度を一気に落としました。また、高齢者を含めた“おひとり様”も外食の頻度を下げています。こうした顧客は、ファミレスにとっては正しく“お得意様”だったわけですから、その影響が大きかったのは容易に想像できます。

一定の需要があった深夜営業も廃止や大幅な縮小傾向に

深夜営業の大幅縮小・廃止も大きな痛手になっている可能性があります。深夜営業の縮小は、コロナ禍の前から徐々に顕著となっており、とりわけ働き方改革による影響も小さくなかったと見られます。

ただ、そうは言っても、一定の需要があったことも事実です。また、筆者が推察するには、深夜営業は相応に利益を出していた可能性もあります。

深夜にファミレスへ行ったことがある方ならお分かりだと思いますが、なぜか深夜メニューは少し割高で、サービス料(概ね10%)も加算されます。さらに、競合相手(主にファストフード)が営業していないパターンが多いため、意外に混んでいました。

しかし、在宅テレワークの定着などで消費者の飲食行動が大きく変わり、深夜営業も縮小を余儀なくされました。すかいらーくグループが深夜営業を「休止」ではなく「廃止」にしたことは、もう深夜営業が成り立たなくなったことを如実に表しています。

ファミレスの役目は終わった?

このように見ていくと、コロナ禍の影響によってファミレスの特徴・アドバンテージは大きく減退したと言わざるを得ません。そして、ファミレスの位置付けも中途半端になりました。いや、誤解を恐れずに言うならば、存在価値そのものが根本的に見直される局面にあるのではないでしょうか。

高度成長が終わりを迎えた1970年代以降、日本の外食産業の発展を牽引してきたファミレスですが、その役目が終わりつつあると言うのは言い過ぎでしょうか?

振り返ると、ファミレスが続々と開業した1970年代半ば、それまで家族での食事はデパートのレストラン(食堂)がある種のステータスでした。当時は“高嶺の花”に近かったデパートのレストランが、比較的手頃な価格で楽しめるようになったのがファミレスの原形でもあります。

現在、既にデパートのレストランは見る影もありません。というか、地方都市を中心にデパートが続々と閉店に追い込まれる時代です。

ファミレスも実に40年以上にわたって、様々なアイデアや業態変更で時代のニーズの変化に対応してきました。この多大な功績は無視できません。しかし、今回のコロナ禍への抜本的な対応は難しいというよりも、不可能に近いものがあると考えるのは筆者だけでしょうか。

最後に、筆者も頻繁に利用したファミレスへ感謝の意を表したいと思います。

「さよならファミレス。今まで本当にありがとう!」

【参考資料】「ファミリーレストランの利用(第7回)(https://www.myvoice.co.jp/biz/surveys/20806/index.html)」(マイボイスコム)

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