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資産残高を金融機関に教えてはダメなワケ〜敵は「おまかせ型顧客」を待っている

LIMO / 2020年6月21日 10時0分

資産残高を金融機関に教えてはダメなワケ〜敵は「おまかせ型顧客」を待っている

資産残高を金融機関に教えてはダメなワケ〜敵は「おまかせ型顧客」を待っている

銀行や証券会社などのウェブ上のロボアドバイザーに資産運用シミュレーションを申し込むと、必ず金融資産の種類や保有額を聞いてきます。

資産だけではなく、負債(借金)である住宅ローンや自動車ローンの残高等も聞かれる場合もあります。借金する際は、保有している資産があれば一種の担保になるのでいいとして、資産運用だけの場合にも根掘り葉掘り聞いてきますね。

もっとも、明日の天気でさえどうなるかわからないのに、数十年後の資産額が分かるはずはありません。診断結果は参考程度です。ただ入力データを適当に答えたとしても、自分の資産が他人に把握されているというのは気持ち悪いことです。

他人に自分の資産内容を教えていいのか?

資産の多寡にかかわらず、自分の資産内容を他人に知らしめるのは、実に危険なことです。金融機関は守秘義務やシステムを堅牢化させて、個人情報の保護に努めていますが、運営するのは最終的に人間。魔が差すことだってありえます。だから、個人情報が漏れたり、売られたりするわけです(図表1参照)。

図表1:知能犯罪(詐欺・横領・背任)件数の推移

(/mwimgs/b/e/-/img_bea665a2cb1bc214afd4a530c20e692e121239.jpg)

拡大する(/mwimgs/b/e/-/img_bea665a2cb1bc214afd4a530c20e692e121239.jpg)

出所:犯罪白書(令和元年版)より筆者作成(期間:1989年から2018年まで)

最近はフィンテックの発展でコンピューターが最適な資産運用をするかのごとく喧伝されていますが、何百年経とうと数十年後の資産残高を想定できるなんてことはありえません。

そもそも人間は平均80年そこそこで死ぬのです。相談した人も亡くなれば、された人も亡くなります。いなくなる人がいなくなる人の面倒を見ることはできません。

資産運用会社も投資哲学だとかチーム制での運用継続を謳いますが、そもそも80年続く企業がどれだけあるのでしょう。従業員はやめるし、コンピュータだって陳腐化してデータが飛んだりするのは日常茶飯事。

筆者も金融取引はほぼネット取引のみですが、ある日データが消えて「あなたの預金はゼロです」と言われかねないなと感じながら日常を過ごしています。

もっとも、人間が対応してくれる店頭でも、担当者に「コンピュータが壊れて、あなたの預金はゼロです」と言われかねませんから、もはやオンラインもオフラインもリスクは同等と考えているだけです。

金融機関の利益の源泉

筆者も金融業界で35年以上働いていますから、同業がどこで利益を得られるかは分かります。それは、①顧客からの手数料、②自己資金(累積利益)の運用益、の2つに大きく分けられます。

①はリスクは小さく確実に儲かるビジネス、②はリスクは大きいが当たればデカいビジネスで、それ以上はありません。金融機関の業態によって収益構造は異なりますが、この両方で収益を上げているのです。金融機関の収益構造は意外とシンプルです。

では、個人の資産状況を教えることの問題はどこにあるのでしょうか。

あなたがある金融機関に相談したとしましょう。たとえば、来月定年で退職金が1千万円くらい出て、年金をもらうのがもうすぐ。自宅の住宅ローンはほとんどないし、金融機関をまとめたいので運用を任せたい、といったところですね。

金融機関から見ると、あなたは①カテゴリーとなり、あれやこれやの金融商品を提示され、年金の受け取りは当行へどうぞとなります。

そしてその場合、手数料の高い金融商品から順番にオファーされます。表面上、手数料率が低くても全体では割高なものに決まっています。なぜなら、その担当者の給料は手数料から支払われるのですから。

手数料を徴求するのに、良い悪いはありません。それが彼らのビジネスモデルで収益の源泉だからです。

「お金の管理は自分の仕事」が大前提

最近では、こうした高手数料ありきの取引が批判され、多くの識者が何百回も繰り返して説明していますので、わざわざ言うことではないのかもしれません。

一方、金融機関にもいろいろな部署があり、大変親切に対応される方が多数いらっしゃることも事実です。私も某銀行勤務時は、利回りの低い定期預金を売らずに、銀行保証の高利回り抵当証券を売っていたくらいの変人でしたから。

しかしながら、金融機関の収益性はどんどん落ちています。その割に人は減らせないし、システム投資は毎年法外に嵩みます。となれば、食っていくためには取れるところから手数料を取るしかないのです。

どこからか? それは自分で勉強しない「おまかせ型顧客」のポケットからです。

ということで、自分のお金は徹頭徹尾自分が管理しないといけません。金融機関を利用することがあっても利用されてはいけません。あくまで、金融取引のハードウエアと割り切ってください。

人間味がないと言われればそれまでですが、ITの発展で個人情報はどこかで蓄積され、名寄せされる可能性があります。個人の詳細な資産状況を教えるということは、自分がいつかカモにされる可能性があるということです。

個人の金融取引にしても、ビジネスにしても、性善説で対応したいのはやまやまですが、お金は人を変えてしまうのです。自分の身は自分で守りましょう。

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