本当に危機的な日本の漁業…魚介離れの国内、新興国需要は増加の一途
LIMO / 2020年6月19日 20時0分
![本当に危機的な日本の漁業…魚介離れの国内、新興国需要は増加の一途](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_17872_0-small.jpg)
本当に危機的な日本の漁業…魚介離れの国内、新興国需要は増加の一途
突然ですが、6月22日は『かにの日』です。これは、大阪の有名なかに料理店「かに道楽」が1999年に制定した“記念日”です。6月22日が星占いのかに座の初日であることと、50音表で「か」が6番目、「に」が22番目であることから、この日が選ばれたようです。
しかしながら、よくある典型的な商業キャンペーン日の1つであることは間違いありません。実際、かに道楽のホームページを見ると、「かにの日」に絡むイベントの告知が掲載されています。今年はコロナ禍で例年ほど大規模ではないようですが、それでも恒例となった当日企画のスピードくじ等が実施されます。
最近は不漁続き? 全体の漁獲量はどれくらい減っているのか
さて、せっかくですから、蟹(カニ)の現状について見てみましょう。好き嫌いはあるでしょうが、カニは寿司ネタや鍋料理、年末年始のご馳走などに不可欠な具材であることは確かです。特に、冬の味覚としては和食を代表する具材の1つですから、真夏が近い6月下旬に「かにの日」は少し違和感があります。
ところで昨今、マグロやサンマなど、一昔前まで普通に家庭の食卓に並んでいた魚介類が獲れなくなったという話を耳にします。年初にはイカやサケの不漁が大きなニュースになりました。ここ数年間、カニが不漁というニュースも聞いた記憶もあります。
そこで、カニのデータを見る前に、先ずは日本の水産物全体の状況を把握しておきましょう。
日本の漁獲量は35年間でピーク時の3割未満へ激減
農林水産省が公表する漁獲量(生産量とは異なる。海面漁業のみ対象、以下同)の統計調査(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/kaimen_gyosei/)データ推移を見てみると、日本の漁獲量が激減していることがわかります。
ピークと推定される1984年に1,150万トンだった漁獲量は、35年後の2019年には約319万トン(速報値)まで落ち込みました。これは、ピーク時の約28%水準(つまり、▲72%減)ということであり、十分に激減と言っていいでしょう。
ちなみに、これらに含まれない養殖漁獲量も、ピーク時である1994年の約134万トンから2019年は約91万トンへと減少(ピーク比67%水準)しています。
この数字だけを見ても、日本の漁業が危機的状況にあることが分かります。
また、水産物の輸入量は、漁獲量の減少に反比例する形で増加してきましたが、2002年の442万トンをピークに漸減傾向が続いており、2013年は249万トンまで減りました。2014年以降のデータは不明ですが、輸入量が急回復している可能性は低いと言えましょう。
漁獲可能量が定められたことも一因だが…
一方、この厳しい数字だけをもって、水産物資源が枯渇に向かっているとは言えなさそうです。なぜならば、現在は多くの魚種に「漁獲可能量」が定められているためです。特に、1994年に発効した国連海洋法条約により(注:日本の批准は1996年)、こうした「漁獲可能量」の遵守が厳しくなっています。
このように世界的に水産物資源の保護が進んでいることも一因ですが、それを勘案しても、昔ほど獲れなくなっていることは間違いないと見られます。
“獲れないから食べない”のか“食べないから獲らない”のか
また、国内における水産物(魚介類)の消費量も減少が続いています。水産庁が発表している「食用魚介類の1人当たり年間消費量(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_4_2.html)」を見ると、ピークである2001年の40.2kgから2016年は24.6kgになっています。若年層を中心とした食生活の変化に加え、水産物の価格高騰も影響していると考えられます。
しかしながら、“獲れなくなったから食べない”のか、“食べなくなったから獲らないのか”を明確に判断することは難しいかもしれません。
カニの漁獲量も激減、ピーク時の2割強の水準
![](https://limo.ismcdn.jp/mwimgs/e/f/-/img_ef99b5e2328b7047b971b685bf581ad174737.jpg)
さて、カニの漁獲量はどうでしょうか。結論から言うと、カニの漁獲量は全体の漁獲量以上に減少しています。
農水省が公表するデータの「かに類」は、「ずわいがに」「べにずわいがに」「がざみ類」「その他のかに類」の合計ですが、ピーク推定である1983年の約10万トン強から、2019年には約2万2,300トンまで減りました。ピーク時の2割強の水準であり、全体の漁獲量以上に激減しています。
注:「がざみ類」は渡り蟹を指します。
カニが食べられなくなる日が本当にやってくるかもしれない
では、養殖と輸入はどうでしょうか。蟹の場合、養殖は非常に少ないと考えられます。一方、輸入は正確な数値を把握するのが困難と言われています。
もちろん、水産庁が把握している輸入データはあるのでしょうが(非公表)、公式データには含まれない輸入量、いわゆる“闇取引”が少なくないかもしれません。ロシア、中国、北朝鮮などから多くのカニを輸入しているのは公然の事実と言われますが、実際はどうなのでしょうか。
最後に、世界の水産物需要に目を向けると、これは増加の一途を辿っています。水産庁の「世界の水産物消費(https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/h29_h/trend/1/t1_2_3_2.html)」を見ると、1960年代からの50年間で世界の1人当たり食用水産物消費量は2倍以上に増加。中でも1990年代以降のアジアの伸びが顕著です。やはり、中国やインドネシアなどアジアを中心とした新興国での消費量が増えたためでしょう。
現在、日本向けに輸出されているカニについても、新興国へ次々とシフトすることもあるでしょう。とすると、カニが思うように食べられなくなる日も、そう遠くない可能性があります。そんなことを考えながら、6月22日はカニのおいしさに舌鼓を打つのもいいかもしれません。
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