50歳から考える、老後のための金融資産はどれくらい必要?
LIMO / 2020年7月1日 18時45分
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50歳から考える、老後のための金融資産はどれくらい必要?
~坂本さんの「お金のはなし」シリーズ2~
「人間は大きく分けると、計画的な人と、行き当たりばったりの人の2つのタイプがあるように思います。若い頃から計画的に生きて順風満帆の人もいるでしょう。けれど、50歳ともなれば、人生後半の計画を立てる難しさを感じる人が多いのではないでしょうか?」
そう語るのは人気ファイナンシャルプランナーの坂本綾子さん。
著書『節約・貯蓄・投資の前に 今さら聞けないお金の超基本』(https://amzn.to/31rh5dN)(朝日新聞出版)がベストセラーとなっている坂本さんは、とにかくわかりやすく丁寧にお金の知識を伝える達人です。
そんな坂本さんの新刊、『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』(https://amzn.to/3evmdBe)(エムディエヌコーポレーション)では、50歳からのマネープランを立てる上で、「これだけは!」押さえておきたいお金の仕組みを多数掲載しています。今回はその中から、まずは押さえておきたいお金の基本をご紹介します。
家計の構造を知ろう
家計は、仕事や年金などから収入を得て、生活のための支出を行います。収入を全部自由に使えればいいのですが、そうはいきません。収入があると税金がかかり、日本に住んでいる=住民票がある人は、社会保険料を支払う義務があります。これにより老後は公的年金を受け取ることができ、医療費や介護サービス費の負担が軽減されます。
会社員は税金と社会保険料を給与から天引きされ、自営業者などは自分で支払います。税と社会保険料を引いた残りが手取り=可処分所得となり、自分の判断で自由に使えるお金です。手取り収入(=可処分所得)からは生活のための支出(=消費支出)をします。可処分所得から消費支出を引いた残りが黒字ですが、住宅ローンなどの借入金があるなら、この黒字分から返済します。貯蓄や、貯蓄性のある保険の保険料もここから払います。残りは翌月(または翌年)に繰り越されます(図参照)。
拡大する(/mwimgs/f/4/-/img_f4d238448d3fb10b5b9fbed28f99a40022620.png)
収入が増えても、税金・社会保険料と消費支出がそのぶん増えたら、黒字は増やせません。同じ収入のまま、少しでも資産を増やすには、合法的に税金や社会保険料を減らす、または消費支出を減らすことで黒字を増やし、貯蓄や運用でこの黒字を有効に活用することです。
理想的な貯蓄割合は?
黒字はどれくらいが理想でしょうか?
総務省統計局の「家計調査報告」では、50代の2人以上世帯では、全国平均で可処分所得の31.3%となっています。つまり手取りの7割を生活費として使い、残り3割が黒字。しかし、家計の構造で説明したとおり、この黒字分が全部、貯蓄に回っているわけではありません。50代は住宅ローンの返済が大変で、なかなか貯蓄できない世帯も多いようです。
住宅ローンを返済すると、そのぶん、借入金が減少して純資産が増え、家計は改善します。しかし住宅は最も現金化しにくい資産で、値下がりする可能性もあります。住宅ローンを抱える世帯は、繰り上げ返済も視野に入れつつ、金融資産を増やす貯蓄にも黒字分を振り向けることを重視すべきです。
貯蓄に回す割合の1つの目安は、手取りの2割を目標に定期預金や投資信託など金融資産への積み立てを検討しましょう。住宅ローンの返済が終わった、子どもが自立したなど余裕ができたら3割を目標にします。
手取りの2~3割貯蓄で実現すること
現役時代、手取りの2~3割を貯蓄すると、どれくらい貯められるでしょうか?手取り金額
により違ってくるので、手取りとの比率で考えると、次のようになります。
手取り年収の2割貯蓄
50歳から60歳までの10年で手取り年収の2倍
(0.2×10年=2)
50歳から65歳までの15年なら手取り年収の3倍
(0.2×15年=3)
手取り年収の3割貯蓄
50歳から60歳までの10年で手取り年収の3倍
(0.3× 10 年=3)
50歳から65歳までの15年なら手取り年収の4.5倍
(0.3×15年=4.5)
手取り年収の2~4.5倍の貯蓄があると、どんな効果があるのでしょう?
一般的に、現役引退後の生活費は現役時代の7割程度と言われます。現役時代は手取り収入(=可処分所得)の7割で生活していて、その7割ですから、5割弱(0.7×0.7=0.49)に相当します。
引退後の生活を支えるのが公的年金による収入ですが、収入には税金がかかりますし、社会保険料の負担は生きている限り続きます。この分を生活費の2割程度と見積ると、生活費と税金・社会保険料を合わせた必要額は6割(0.5×1.2=0.6)です。
このうちどれくらいを公的年金で賄えるかは現役時代の働き方、収入、家族構成により異なります。仮に8割を公的年金で賄えるなら、残り2割を金融資産から取り崩して生活することになり、これは現役時代の手取りの1.2割です(0.6×0.2=0.12)。
つまり、現役時代の手取り年収の2倍の貯蓄があれば約17年分(2÷0.12=16.66‥)、4.5倍の貯蓄があれば約38年分(4.5÷0.12=37.5)に相当します。貯蓄の取り崩しで生活がなり立つ可能性がある期間です。
資産運用で得られる利回りやインフレなどは考慮せず、あくまで現役時代の手取り収入と比較した単純計算です。
引退しても生活費が減らない世帯もあるでしょうし、逆に老後は節約して公的年金の範囲内で暮らすという考え方もあります。ところが想定していたほど公的年金をもらえないケースもあるかもしれません。
実際には、現在の貯蓄額や引退時期、退職給付など、世帯ごとに個別の条件を考慮して計算や判断を行わなければなりません。あくまで、公的年金で足りない分を補う金融資産をどれくらい持っておきたいかを考える際の目安にしていただければと思います。
『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』坂本 綾子(著)(エムディエヌコーポレーション)(画像をクリックするとAmazonのページにジャンプします)
〈書籍概要〉
『まだ間に合う! 50歳からのお金の基本』(https://amzn.to/3evmdBe)
著者:坂本 綾子
イラスト:たかしま てつを
発売日:2020年6月
定価:1,400円(税抜き)
発行:エムディエヌコーポレーション
〈著者プロフィール〉
坂本 綾子
1988年よりマネー誌、女性誌にて家計管理や資産運用の取材記事を執筆。
1,000人以上に取材。1999年ファイナンシャルプランナー資格取得。2010年ファイナンシャルプランナー坂本綾子事務所設立。
20年を超える取材記者としての経験を生かして、生活者向けの金融・経済記事の執筆、家計相談、セミナー講師を行っている。超高齢出産の子育ても進行中。
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