閉店する大阪道頓堀「づぼらや」前の公示地価は全国トップレベルの高騰を続けていた
LIMO / 2020年6月27日 9時0分
![閉店する大阪道頓堀「づぼらや」前の公示地価は全国トップレベルの高騰を続けていた](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_18012_0-small.jpg)
閉店する大阪道頓堀「づぼらや」前の公示地価は全国トップレベルの高騰を続けていた
大阪の老舗ふぐ料理店「づぼらや」が9月15日で閉店
一連のコロナ禍で飲食店が苦境に喘ぐ中、大阪の老舗ふぐ料理店「づぼらや」が9月15日で閉店することになりました。づぼらやは現有の2店舗とも4月8日から休業中ですが、営業再開することなく、このまま閉店するとのことです。既にホームページでも発表済み。
ホームページでは閉店の理由は細かく書かれていませんが、各メディアによる社長へのインタビューによれば、
コロナ禍以前からの経営不振に加え、一連の休業影響が重なった
大勢で鍋を囲むスタイルの飲食店で、再開しても密を避けながらこれまで通りに営業する見通しを立てられなかった
等を挙げているようです。
「づぼらや」が全国レベルで知られている2つの理由
ところで、大阪を代表する老舗ふぐ料理店とはいえ、づぼらやは2店舗(新世界、道頓堀)しかありません。
各店舗は座敷席などもあり、相応に大きな店だと思われますが、他のチェーン店のように手広くやってきたというわけではなさそうです。それでも、マスコミ各社が閉店を大々的に報道するくらいですから、大きな理由があるのでしょう。
づぼらやは、2つの理由で大阪のみならず、全国レベルで有名だったと言えます。筆者のように、残念ながら一度も入店したことがない人でも、店名くらいは聞いたことがあるかもしれません。
巨大ふぐちょうちんは大阪を代表するランドマークの1つ
1つ目の理由は、その巨大なふぐ立体看板(ちょうちん)です。
この立体看板は誰の目にも止まりやすく、当然ですが一目でふぐ料理だと理解できます。大阪では「かに道楽の動くかに」「くいだおれ太郎」「づぼらやのふぐちょうちん」は立体看板“御三家”として有名です。
特に、ここ数年は激増した外国人観光客に大人気であり、いずれも有名な写真スポットになっています。外国人にとっては、あの巨大な立体看板は相当に珍しいのでしょう。
いずれにせよ、この巨大ふぐちょうちんは、大阪を代表するランドマークの1つであり、ネットやテレビで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
なお、づぼらやの閉店後は、このふぐちょうちんを自治体主導(大阪市)でオブジェの形で残す動きが出ています。まだ何も決まっていませんが、どのような形で残るのか興味のあるところです。
爆騰が続く「道頓堀1-6-10」(づぼらや)の公示地価
2つ目の理由は、地価の高騰です。
実は、づぼらや道頓堀店前は公示地価算出の調査箇所の1つになっています(商業地、以下同様)。この地点は、国土交通省が発表する公示地価では“「道頓堀1-6-10」(づぼらや)”と表示されます。
そして、この場所の地価は急騰が続き、2017年(平成29年)の公示地価では上昇率+41.3%で全国第1位(上昇率ランキング、以下同)となり、2018年も+27.5%で全国第2位となりました。ちなみに、2016年も+40.1%で全国第2位でした。
念のためもう一度書きますが、全国での上昇率で1位とか2位というレベルです。
づぼらや道頓堀店前は大阪インバウンドバブルの象徴
しかしながら、2015年以前を振り返ると、状況は全く異なっていたことが分かります。2015年こそ上昇率は+9.8%で大阪府内の第4位でしたが、特段目立った上昇でないことは明らかです。
さらに、2014年以前を見ると、全国どころか大阪府内でも上位10地点に入っていません(2010~2014年まで筆者確認済み)。しかも、2010~2013年はづぼらや前が下落した年も散見されるなど、かつてはごく普通の商業地だったのです。
それが、あっという間に全国でもトップレベルの地価上昇地点になりました。つまり、づぼらや前の公示地価は、来阪外国人観光客が顕著に増加し始めた2015年を境に急騰、いや、大爆騰し始めたことになります。
まさしく、大阪インバウンドバブルの象徴的な地点なのです。
2020年の公示地価は大幅上昇だが…
さて、コロナ禍で不安が増していた今年2020年3月に発表された公示地価はどうだったのでしょうか。
づぼらや前は1㎡当り805万円(前年比+23.8%)と上昇が続いていますが、大爆騰という状況ではなくなってきました。もちろん、地価の上昇が続けば上昇率は徐々に頭打ち傾向が強くなりますので、現時点ではまだバブルが続いていると見ていいでしょう。
ちなみに、上昇率でなく、絶対価格(1㎡当り)を見ると、昨年(2019年)は650万円で大阪府の第10位。今年の805万円がどのくらいの順位か分かりませんが、発表済みの第5位が1,340万円ですから、もしかしたら10位以内は厳しいかもしれません。それだけ大阪の地価上昇が顕著ということです。
づぼらや閉店は大阪インバウンドバブル天井のサイン?
なお、言うまでもないことですが、3月に発表された2020年の公示地価には、一連のコロナ騒動の影響は一切反映されていません。大阪インバウンドバブルを牽引してきた来阪外国人観光客がほとんどいなくなって回復の見込みもない現在、来年発表される2021年の公示地価がどの程度影響を受けるか注目されます。
づぼらやの閉店が短期間に公示地価へ直接的な影響を及ぼすとは考え難いですが、づぼらやの閉店が地価天井を示すサインだった可能性はありそうです。今後の公示地価から目が離せません。
参考
「道頓堀1-6-10」(づぼらや)の公示地価の推移(1㎡当り、万円) カッコ内は増減率(前年比)
2010年:196
2011年:179(▲8.6%)
2012年:171(▲4.4%)
2013年:171(±0%)
2014年:184(+7.6%)
2015年:202(+9.8%)
2016年:283(+40.1%)
2017年:400(+41.3%)
2018年:510(+27.5%)
2019年:650(+27.5%)
2020年:805(+23.8%)
2021年:?
【参考資料】大阪府地価情報ホームページ(http://www.pref.osaka.lg.jp/yochi/chika/koji.html)
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