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「俺の”ゴミ捨て”、なぜ嫁は不機嫌?」”名もなき家事”の値段を考える

LIMO / 2020年7月1日 19時15分

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「俺の”ゴミ捨て”、なぜ嫁は不機嫌?」”名もなき家事”の値段を考える

あるマンガのワンシーン(※)。妻が妊娠5か月だという男性が、愚痴交じりに話します。「最近妻の機嫌が悪い。俺だって忙しい中、ゴミ捨てとかもしているんですよ、感謝してほしい」それを聞いた主人公は、「どこからしてます?」と問いかけます。

男性の答えは、「ゴミを家からゴミ捨て場にもっていく」。すると主人公が静かに口を開きます。「ゴミ捨てというのは、ゴミ箱のごみを集めるところから、はじまるんですよ。分別をして、袋を取り換えて、生ゴミは水を切って、ついでに排水溝の掃除もして、ゴミ袋の在庫があるかをチェックして、そうやってやっとひとつにまとめるんです。そこが一番面倒なんです。それで感謝しろと言われても…」

ここ数年、よく耳にするようになった『名もなき家事』。多くの人にとって「家のごみを集める」は、ゴミ捨ての準備段階であり、いわゆる『名もなき家事』と認識されているようです。今回は、この『名もなき家事』問題について、お金の面から考えてみましょう。

※小学館フラワーコミックス『ミステリと言う勿れ(1巻)(https://www.cmoa.jp/title/140206/)』p24,25田村由美

ゴミ捨てまでの工程は、まさに『名もなき家事』

まず、国立社会保障・人口問題研究所が2019年9月に公開した『第6 回全国家庭動向調査(http://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ6/Kohyo/NSFJ6_gaiyo.pdf)』の結果について見てみましょう。『夫婦の「見えない家事」の遂行の実態』として、『名もなき家事』に関する報告があります。

食材や日用品の在庫の把握…妻88.6%、夫2.5%

食事の献立を考える…妻91.6%、夫2.7%

ごみを分類し、まとめる…妻76.2%、夫12.0%

家族の予定を調整する…妻63.1%、夫6.2%

購入する電化製品の選定…妻26.4%、夫34.0%

いずれも「軽い仕事」とは決して言い難い作業だと感じられますが、やはり妻の役割となっている家庭が多いようです。

『名もなき家事』に値段をつけると?

次に内閣府が2018年12月に公表した『無償労働の貨幣評価』を見てみましょう。よく「専業主婦の月給は〇〇万円」などと耳にすることがありますが、その根拠となっているのが、この資料の報告内容になります。
こちらの資料では、主に3つの方法で家事労働のお値段を算出しています。

機会費用法(OC法)

「外で働くことで得られる予定だった1時間当たりの賃金」を男女別年齢別に設定し、それをもとに家事労働に費やした時間を掛け合わせて算出する方法です。
これによれば、女性が家事に費やす時間は年間で1313時間。さらに女性の1年間の家事活動の貨幣評価額は193万5千円となっています。これを時給換算すると、約1470円になります。ちなみに男性で同じ計算をすると、男性が家事に費やす時間は年間で275時間。家事活動の貨幣評価額は50万8千円なので、時給に換算すると約1850円ということになります。

代替費用法(スペシャリスト法)(RC-S 法)

様々な家事を、その道の専門家に依頼したと仮定して、その専門家の時給をそれぞれの家事労働に費やした時間を掛け合わせて算出する方法です。こちらの方式で計算をすると、女性の1年間の家事活動の貨幣評価額は154万9千円となっています(2016年)。これを時給換算すると、約1180円になります。ちなみに男性で同じ計算をすると、男性の家事活動の貨幣評価額は33万1千円なので、時給に換算すると約1204円ということになります。

代替費用法(ジェネラリスト法)(RC-G 法)

家事を家事援助サービス(家事代行など)に依頼したと仮定して、その時給を家事労働に費やした時間を掛け合わせて算出する方法。こちらの方式で計算をすると、女性の1年間の家事活動の貨幣評価額は143万1千円となっています。これを時給換算すると、約1090円になります。ちなみに男性で同じ計算をすると、男性の家事活動の貨幣評価額は29万9千円なので、時給に換算すると約1087円ということになります。

“名もなき”家事といえども、日常生活には不可欠なタスク。そして、これだけの価値が認められる労働ということになります。どの方法で計算しても、外で「お給料」としてもらう額と考えると、意外にお高めの時給かも、と感じた人も多いのではないかと思います。

モヤモヤ消えない「家事のお値段」

こうした計算結果を聞いても腑に落ちないなぁ、と感じる人も中にはいらっしゃるでしょう。『名もなき家事』を担う人自身が、「これだけの価値のある労働をしているんだ」と自信を持つことができたとしても、周囲の反応は変わらず…ということも多いからかもしれませんね。そもそも、上記の家事のお値段は、政府が経済的指標として算出したものですから、そのまま家庭に持ち込んでも、なかなかピンとはこない、というのが正直なところなのでしょうか。

お肉を焼く前に切ったまな板。そのまな板がいつも白いのは、誰かがこまめに漂白を行っているから。毎日掃除機の吸い込みがいいのは、誰かがこまめにフィルターの掃除をしているから。家事を円滑にすすめるための様々な「前工程」がなければ、おいしい食事も快適なお部屋も実現しませんよね。

まとめ

冒頭にご紹介した『ミステリと言う勿れ』では、主人公の話を聞いた男性は、家に帰り、ゴミをまとめるところからの「ゴミ捨て」に挑戦します。ネタバレになってしまうので詳しくはご紹介しませんが、男性は妻の喜ぶ様子を見て、自分もなんだか嬉しい気持ちになります。

多くの妻をイライラさせる、『名もなき家事』問題。これらの家事があることすら気づかれず、当たり前のように生活が続いていることに、虚しささえ感じている人も多いかもしれませんね。

たとえ直接的に現金収入には結び付かなくても、家事労働は必要不可欠で、価値のある仕事。そこを認識すると同時に、家事を担う人、その家事の恩恵を受ける人の双方に、「あなたが嬉しいから、私も嬉しい」という気持ちが大切、ということではないでしょうか。新型コロナウイルス感染症の影響で、おうち時間が増えた今、「家事シェア」について、見つめ直すよい機会かもしれません。

※『ミステリと言う勿れ(1巻)(https://www.cmoa.jp/title/140206/)』p24,25田村由美 小学館フラワーコミックス
『第6 回全国家庭動向調査(http://www.ipss.go.jp/ps-katei/j/NSFJ6/Kohyo/NSFJ6_gaiyo.pdf)』国立社会保障・人口問題研究所
『無償労働の貨幣評価(https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/roudou/contents/pdf/190617_kajikatsudoutou.pdf)』内閣府

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