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海外で受けた「差別経験」とそこから学んだ1つのこと

LIMO / 2020年7月2日 20時40分

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海外で受けた「差別経験」とそこから学んだ1つのこと

だれにでも、多少なりとも差別意識や偏見はあるものです。無意識に差別してしまう場合もありますし、あからさまに差別する人もいます。どちらにしても、加害者は覚えていなくても、被害者は忘れません。

今回は筆者が海外で受けた人種差別による嫌がらせと、そこから学んだことについてお話しします。

初めての試練

筆者がアメリカで初めて差別による嫌がらせを受けたのは、随分昔になりますが、大学の臨時講師の白人男性からです。

ある企業を退職後、それなりのポストについていたということで学部の誰かのコネで臨時講師をして小遣い稼ぎをしていたのでしょう。

現役時代、日本企業に恨みでもあったのか、反日の態度をあからさまに出していました。彼は授業中、唯一の留学生である筆者ばかりに質問を投げかけてきたり、クラスの前で説明を求めたり、アクセントを真似したり、筆者が緊張するのを面白がっていました。

週一のクラスでしたが、ストレスでクラスの翌日には必ず腕に湿疹が出ました。

ある時、質問の意味がよく分からず困っていたら、クラスメイトの1人が突然、敢えて珍回答をしてクラス中が大笑いとなりました。それから、筆者が指されても他の学生が答えてくれたり、筆者の緊張も和らぎ、湿疹もでなくなりました。

これは、筆者がアメリカで受けた初めての試練だったように思います。

パリの地下鉄で顔を叩かれる

パリでは文字通り痛い目にあいました。パリに住むフランス人の友人の家に遊びに行った時のことです。友人は仕事だったので、1人で買い物や観光を楽しんでいました。

地下鉄で移動中、若い白人女性がチラチラ睨むような視線を筆者に向けていることに気づきましたが、目を合わせないよう静かに座っていました。

ある駅に停車した時、彼女は座っていた筆者の前をわざわざ遠回りで通り過ぎ、持っていた雑誌で筆者の顔を思いきり叩き、そそくさと降りて行きました。

しばらく何が起ったのかも分からず、固まった状態でしたが、すぐに痛いのと悔しいので涙が出そうになるのを必死にこらえました。周りにいた人は一瞬驚いた様子でしたが、誰一人として心配の声をかけてくれませんでした。

その夜友人宅で、何かマナー違反でもしてしまったのか、と彼女や彼女の家族にその時の状況を話しました。皆、気の毒がって筆者は何一つ悪いことなどしていない、ただアジア人を嫌うフランス人が結構いるから気をつけるように、と言われました。

それ以来しばらくの間、その女性に似た知らない若い白人女性をみると、何故か手が震えました。昔の事ですが、未だに、その事を思い出すと腹が立ちます。

ニューヨークで上着を返してもらえなかった

大学生の時に中国系アメリカ人の友人と、ニューヨークのリンカーンセンターにクラシック音楽を鑑賞しに行った時にも、嫌な思いをしました。

なぜか会場がとても寒くて、預けた上着を休憩の時にクロークに取りに行きました。同じように、数人が筆者たちの前で上着を受け取っていました。

筆者も彼らのように、クロークの20代後半位の白人男性に番号札を渡すと「帰るのか?」と聞かれました。前に並んでいた人達にはそんな事を聞いていませんでした。「帰らないけど寒いから」と答えると、その男は「帰らないなら、渡せない」といいました。

前にいた人達は帰ることもなく、その男性の見えるところで上着を羽織り、飲み物を飲みながら会話をしているのに…とムッとしていたら、友人が「じゃあ帰るから返して」といい、その男はしぶしぶ我々に上着を渡しました。

その場を離れた友人は、「法律じゃあるまいし、帰ろうが席に戻ろうがあの男には分からない」「もし聞かれても、『気が変わった』と言えばいいだけ」と何事もなかったかのように席に戻りました。そして、「アジア人が嫌いなんじゃない?こんな、嫌がらせはよくあることだ」といいました。

実は、大学で講師から嫌がらせを受けた時に助け舟を出してくれたのは、黒人の男子学生でした。彼は「あんな奴(講師)のためにビビるな。分からなければ『分からない』と堂々と言えればいい」と言いました。筆者が緊張するのを見て面白がっているのだから、緊張したような態度をとるな、ということです。

子供のころからアメリカ社会で様々な差別経験を受けてきたマイノリティの友人たちから学んだことは、「差別だ」と怒っても泣いても世間は助けてはくれない、差別主義者よりも一枚上手になればいい、ということだったように思います。

未だに、アメリカ生活では差別を受けることはありますが、あまり気にならないようになりました。慣れてきたのでしょうか。

もちろん、暴力的な命に関わるヘイトクライムに関しては、筆者が経験したような嫌がらせ程度のこととは危険度がまったく違います。「一枚上手」になったくらいで済む問題ではありません。

日本でも性別、年齢、職業、外見、障害、国籍、収入など多くの差別が存在します。暴力的な攻撃を受けることはなくても、日本社会独特の差別システムで人生を狂わせてしまった人も大勢います。

加害者は覚えてなくても、被害者は忘れません。根強い社会的な差別システムを変えるのは時間がかかることですが、個人レベルでは意識して気をつけていきたいものです。

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