アップルがMacに独自CPU搭載、その名も「Apple Silicon」
LIMO / 2020年7月6日 20時0分
![アップルがMacに独自CPU搭載、その名も「Apple Silicon」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushin1/toushin1_18127_0-small.png)
アップルがMacに独自CPU搭載、その名も「Apple Silicon」
iPhoneから始まった内製化の歴史を振り返る
本記事の3つのポイント
アップルがMac向けに独自のCPUを搭載することを表明。年末から出荷予定で今後2年かけてインテル製CPUからの移行を進める
自社製品の差別化のため独自CPUの設計を行うトレンドを作ってきたのがアップル。iPhoneに始まりiPadやApple Watchにもその流れが波及していた
CPUの製造はiPhoneやiPad向け同様に台湾TSMCが担う。先端の7nmプロセスを活用
米アップルは6月22日から年次開発者会議「WWDC 2020」をオンラインイベントとして開催した。例年、カリフォルニア州サンノゼで関係者を集めて大々的に開催していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今回はオンライン形式に切り替えて行った。なかでも今回大きな注目を集めたのが、Macに独自のCPUを搭載する「Apple Silicon」と呼ばれる取り組みだ。
CPU内製化の先駆者
アップルは主要製品のCPUの内製化を推進してきた先駆者的存在だ。今でこそ、中国ファーウェイやサムスン電子なども自社設計によるCPUをスマートフォンなどに搭載しているが、アップルのそれは2010年の「iPhone 4」に搭載された「A4」プロセッサーに遡る。アップルは今回の発表のなかで、「シリコンはハードウエアの核であり、先進的なシリコン設計チームがいることが革新的である」(SVP Hardware TechnologiesのJohny Srouji氏)と、製品開発におけるCPUの重要性を強調している。
アップルは「A 4」以降、10世代にわたってiPhone用プロセッサーの性能を向上させてきて、CPU性能は100倍に向上したという。そして、同社のプロセッサーを語るうえで欠かせないのが、CPUを製造してきたファンドリーの存在だ。A4は45nm世代の製造プロセスが採用されたシングルコア品であり、韓国のサムスン電子が担った。
当時、サムスンのファンドリー事業は今ほどメジャーな存在ではなく、アップルのCPU受託製造が飛躍のきっかけとなった。その後、13年の「A7」までサムスンが製造を請け負っていたが、14年の「A8」でTSMCにスイッチ。世界最大手のファンドリー企業であるTSMCがアップルのCPU受託を狙っているという話は数年前から話題として挙がっていたが、14年の20nm品から現実のものとなった。その後、一部でサムスンファンドリーを活用する世代もあったが、基本的にはTSMCを一貫して使い続けている。
10年間で20億個を出荷
これら取り組みはiPadやApple Watchにも展開されており、アップルは自社製品向けに独自の半導体を搭載する傾向を強めていった。同社は過去10年間で累計20億個のプロセッサーを出荷。さらに、CPUだけでなく、電源管理ICなどの他のデバイスでも内製化を推進しており、最終セットメーカーにおける垂直統合トレンドの旗振り役であったといっても良い。こうした流れのなかで、Mac向けCPUの内製化についても時間の問題と見られていた。
ただ、iPhoneやiPadに搭載しているARM系SoCと異なり、パソコンには高いパフォーマンスが求められるなど、性能要求が若干異なる。そのため、06年からインテル製CPUを採用(それ以前はPower PC)しており、他のモバイル機器に比べて、内製化のハードルは高いと見られていた。アップルもMac向けのCPUは10年以上開発を進めてきたとしており、長い年月を要したことがわかる。
20年末の出荷を予定
今回、WWDCでついに発表された独自のCPU「Apple Silicon」を搭載したMacの出荷は20年末を予定。インテル製CPUからの移行期間はおよそ2年としており、その間はインテル製CPU搭載品のOSサポートなども引き続き行っていく方針。
最初の世代は7nmプロセスを採用する見通し
(/mwimgs/a/c/-/img_ac5dd5e35cfd663cdc722df0a5e719191298030.png)拡大する(/mwimgs/a/c/-/img_ac5dd5e35cfd663cdc722df0a5e719191298030.png)
Apple Siliconの製造は引き続きTSMCが担うものと見られている。スペックなどの詳細は明らかにされていないものの、第1世代の製品はTSMCの7nmプロセスを活用、ダイサイズは150mm2前後が想定される。パッケージはiPhone/iPadのようなファンアウト型(InFO)ではなく、サブストレートを使ったFCBGA(Flip Chip Ball Grid Array)を採用。台湾基板大手のUnimicron Technologyの1社供給になるとみられている。
Macはデスクトップ、ラップトップあわせて年間1600万台程度を出荷しており、この部分がTSMCによるウエハー製造に切り替わることになる。ただインテルにとっては大きな打撃とはならず、年間売上高ベースでみても数%の影響にとどまりそうだ。他のPCブランドがアップルの動きに追従するとは今のところ考えにくく、サプライチェーンに与える影響は限定的といえそうだ。
しかしながら、今回のアップルの動きはインテルが高いシェアを誇っていたパソコン用プロセッサー市場に風穴を開けたことは間違いない。MPU市場で競合するAMDも完全復活を遂げており、以前のような「インテル1強」という状況からは変化が生まれている。
電子デバイス産業新聞 編集部 副編集長 稲葉 雅巳
まとめにかえて
以前から噂に上がっていたMacでの自社設計CPUの採用。ついに現実のものとなりました。パソコン市場はインテルが圧倒的なシェアを有して有利な立場を保持していましたが、アップルがこれに風穴を開けた格好です。MacBookなどのモバイルシリーズにはARM系の独自CPUでも十分対応出来そうですが、タワー型のMacにどこまで対応できるのか。電力性能よりもパフォーマンスが重視されることから、独自CPUへの移行には高いハードルが待っているといえそうです。
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