会社員の定年退職金はいくら?老後資産を準備する3ステップ
LIMO / 2020年7月9日 18時45分
会社員の定年退職金はいくら?老後資産を準備する3ステップ
老後の生活費を考える上で重要となるのが退職時の退職金だと思います。「退職一時金制度「退職年金制度」がある企業は8割を超えていますが(※1)(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html)、金額的にはどのくらい支給されるのでしょうか。
厚生労働省の資料をもとに学歴・勤続年数との関連で退職金の平均額を見てみましょう。
学歴と勤続年数で全然違う!みんなの退職金
「学歴」と「勤続年数」により大きな差があることが分かります。転職経験のある人、学歴が大学・大学院卒以外の人などは退職金に不安を感じるかもしれません。
加えて、退職金の給付額は低下傾向にある点に注意が必要です。金融審議会市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)によると、退職給付額はピークだった1997年当時(大卒・大学院卒で3,000万円超)と比較して約3~4割も減少しているのです。
また同レポートによると、退職金については、約3割の人が「退職金を受け取るまで知らなかった」、約2割が「定年退職半年以内」と回答しています。約半数の人が事前に自身の退職金のことを把握できていないという結果になりました。退職金は社内規定に準じて支給されますので、退職金制度の条件や勤続年数等の要件、金額について、早めに確認しておくことが大切だといえるでしょう。
2019年に大きな話題となった「老後2,000万円不足問題」の際には、無職の高齢夫婦二人世帯の平均的な毎月の赤字額は約5万円という試算が出されました。つまり老後の20年間で不足する額は約1,300万円、30年間では約2,000万円にのぼります。
この金額を短期間で準備するのは容易ではありません。次の項目では、気が付いたときから取り掛かれる資金の準備についての詳報をご紹介しています。また、各自の年金額については、日本年金機構の「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)で確認できますので、年金の見込額を調べてみてはいかがでしょうか。
退職金が少ない!気づいたときからできる3つの老後対策
退職金でローンを完済する予定、また、調べてみると退職金が少ないことが判明した、という場合、老後のための資金対策に取り掛かりましょう。まずは「固定費を削る」、できれば「収入を増やす」、さいごに「資産運用する」というステップがあります。
[1] 現状を把握して「固定費を削る」
家計支出の「固定費」については、保険契約などの見直しがポイントとなるでしょう。スマートフォンの料金プラン、インターネットプロバイダなど毎月利用しているサービス契約や自動車保険など、見直すことのできる部分はたくさんあります。
仮に見直しをして金額的には変わらなかったとしても、内容を吟味した上での納得できる契約であれば質の良い支出となるはずです。もし支出を削減できた場合は、その金額分だけ給与天引きの貯蓄額を増やしてみてはいかがでしょうか。
[2]収入を増やす
「収入を増やす」点については、現在の仕事でステップアップする方法や、退職後の就労につながるような資格を取得していく方法もあります。2016年のデータですが、65歳から69歳という年代でも日本は就労割合が高く、男性の55%、女性の34%が就労しています。
また、自宅で取り組めるようなジャンルの仕事も増えてきています。定年退職後も収入面を確保することで、老後の生活をより豊かに計画できるようになるでしょう。
[3]運用する
資産の運用方法としては、非課税制度を利用できる「つみたてNISA」や「iDeCo」があります。資産形成のために国が整備した制度で、どちらも非課税枠が利用可能です。
つみたてNISA
つみたてNISAは最長で20年間、年間40万円までの範囲で投資収益が非課税になります。少額からの積立が可能であり、ライフイベントに応じて引出すことも可能です。
個人型確定拠出年金iDeCo
iDeCoは年間上限額の範囲内で原則60歳になるまで掛金を拠出して運用し、60歳以降に「老齢給付金」として受け取る制度です。その積立資金は全額所得控除となり、運用益も非課税になります。2020年4月の段階で加入者数は158.7万人となりました。
iDeCoの「注意点」
税制面での優遇が整備されているiDeCoには以下のような注意点や要件があります。
・加入者の自己責任に基づき運用する
・一定の手数料が必要
・原則60歳まで引き出すことができない
また、年金資産としてiDeCoを受け取るには、一定期間の加入期間(通算加入者等期間:10年)が必要となります。10年に満たない場合は加入期間の年数によって、受け取り開始年齢が最大65歳まで引き上げられます。
【加入期間と受け取り開始可能な年齢】
加入期間:受取可能年齢
10年以上:60歳~
8年以上:61歳~
6年以上:62歳~
4年以上:63歳~
2年以上:64歳~
1カ月以上:65歳~
iDeCoの老齢給付金の受給開始時期は、60歳から70歳まで(2020年4月からは75歳まで:制度改正※2(http://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/seidokaisei202006_1.pdf))の期間内から選択することができます。また、現在、iDeCoに加入できるのは60歳未満の公的年金の被保険者ですが、条件付きで年齢制限が65歳まで緩和されます(※2)(http://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/seidokaisei202006_1.pdf)。iDeCoの税制優遇を長い期間、利用できることで、老後資金の準備にもつなげやすくなるでしょう。
さいごに
個人により退職金も年金額もそれぞれです。まずは退職金について調べる、年金額を確認する、家計支出を見直すなど、早期に現状の把握をしておきましょう。そのうえで老後の資金計画を立てて、iDeCoやつみたてNISAなどの制度を活用しながら、自分のスタイルにあった資金計画を立てていくことが大切になります。
参考
(※1)「平成30年就労条件総合調査 結果の概況」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/index.html)(2018年)厚生労働省
『金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」』(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20190603/01.pdf)金融庁
「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)日本年金機構
iDeCo公式サイト(https://www.ideco-koushiki.jp/)
(※2)「確定拠出年金制度が改正されます」(https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/seidokaisei202006_1.pdf)厚生労働省/日本年金基金連合会
【ご参考】貯蓄とは
総務省の「家計調査報告」[貯蓄・負債編]によると、貯蓄とは、ゆうちょ銀行、郵便貯金・簡易生命保険管理機構(旧郵政公社)、銀行及びその他の金融機関(普通銀行等)への預貯金、生命保険及び積立型損害保険の掛金(加入してからの掛金の払込総額)並びに株式、債券、投資信託、金銭信託などの有価証券(株式及び投資信託については調査時点の時価、債券及び貸付信託・金銭信託については額面)といった金融機関への貯蓄と、社内預金、勤め先の共済組合などの金融機関外への貯蓄の合計をいいます。
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